サードパーティークッキーとは、アクセスしたサイトとは異なるドメインが発行したクッキーを指します。
Googleが、Webブラウザ「Chrome」での「サードパーティークッキー廃止」を発表し話題になっています。ネット上でのプライバシー保護の重要性が高まっていることが背景にはありますが、「サードパーティークッキー」とプライバシー保護にはどのような関係があるのでしょうか。わかりやすく紹介していきます。
サードパーティークッキー(3rd party Cookie)とは?
インターネットでいろいろなサイトを見ていると、ブラウザに「続行するにはCookieの利用に同意してください」といったポップアップが表示されることはないでしょうか。
ポップアップに安易にOKして良いものかどうか、悩むと思います。しかしOKしなければポップアップ画面がなかなか消えないため、仕方なく「OK」を押してしまう人は多いことでしょう。
クッキー(Cookie)とは、Webサイトのサーバーが、アクセスしてきた人のPCやスマホのブラウザに残していく情報のことです。一度その人のブラウザにCookieを残していけば、サイト側は以降、同じ人(厳密に言えば同じブラウザ)がアクセスしてきたことを認識できます。
アクセスしてきた相手を判別し、その人(のブラウザ)に応じたリアクションを返すことができるのが、Cookieの便利なところです(図1)。
ファーストパーティークッキーとサードパーティークッキー
例えばSNSやショッピングサイトの場合、ログイン情報が維持されているため何度もログインしなおさなくても良いのは、Cookieのおかげとも言えます。
Webサイト自らが発行するCookieは「ファーストパーティークッキー」と呼ばれます。
そして、Cookieにはもうひとつの種類があります。今回問題になっているのはこちらです。「サードパーティークッキー」と呼ばれるものです。
Webサイトの中に、多くの広告が埋め込まれているのは現在では珍しくありません。広告は、Webサイト本体と別のサーバーで運営されていますが、表示されている広告を運営しているサーバーも知らぬ間にクッキーをブラウザに残していっています(図2)。
Webサイト運営者ではない「第三者」が送っていることから「サードパーティークッキー」という名前がついています。
サードパーティークッキーはいくつかの方法で、広告を出した中でどのサイトが良く見られているかを知ることができます。また、広告サーバーがサイトAだけでなく、サイトBやサイトCなどにも同じような仕組みを埋め込んで、閲覧ユーザーにアクセスを要求すると、広告主はユーザーがAだけでなくBやCも閲覧したことも把握できてしまいます。
このように、多くのWebサイトに「広告の網」を張り巡らせることで、ネットユーザーは自分がネット上でどんなところを行き来しているか、つまり興味のあることを把握されてしまうのです(図3)。
どんなサイトを見ても同じような広告が出てくる…そのようなことはないでしょうか。これはサードパーティークッキーの働きによるものです。
サードパーティークッキーと個人情報
筆者の場合、サードパーティークッキーが面白い動きをすることがあります。筆者は職業柄、ネットを使っていろんな調べものをします。自分があまり興味を持っているわけではない分野についても、多くのサイトを訪問します。
すると、
- 賃貸に住んでいるのに、戸建て用の太陽光パネルの広告
- まだ必要のない介護用品の広告
- すでにフリーランスなのに、フリーランスになりませんか?と勧めてくる広告
などが続々と出てきます。
(筆者の場合、楽器店の広告であればすぐにクリックしてしまいそうですが…)
なぜこのようなことが起こるのか。「ここ数日、関連の情報リサーチをした」からです。調べ物の場合、ネットの使い方が特定分野に偏ります。すると、筆者のブラウザがどこを訪問したかをサードパーティークッキーによって広告主は把握しているため、「この人はこんなことに関心があるに違いない」と広告サーバーが判断していろいろと送りつけてくるのです。
こうした追跡(トラッキング)は、氏名や住所までを把握していないとしても、ある意味では人の行動様式という個人情報を勝手に利用しているのではないか? ネット上のプライバシー保護を強める機運と相まって、このような追跡を排除しようという動きが始まっているのです。そのひとつがサードパーティークッキーの廃止です。
サードパーティークッキーがなくなると…?
では、サードパーティークッキーがなくなると、どのようになるのでしょうか。
ネットユーザーは、追跡されているという嫌な気分から解放され、安心して快適にネットを使えるようになります。どこに行っても同じ広告が出てくる、その煩わしさからも解放されます。
一方で深刻なのは企業です。
サードパーティークッキーは、ある意味ではインターネットで自動的な広告をしてくれる、しかもその人のサイト閲覧の傾向も把握できるので、マーケティングにも役立つとても便利な道具でした。しかし、こうした追跡ができなくなります。
すると、利用者の傾向といった情報は自力で収集しなければなりません。また、広告の効率も悪くなってしまいます。今まで「楽に」広告を出し、利用者が自社サイトに簡単に入ってきてくれましたが、そのような手段が取れなくなってしまうのです。
広告のしかたを根本的に考えなければなりません。
サードパーティークッキー廃止までに何をすべきか
Googleはいまのところ、Chromeでのサードパーティークッキー完全廃止を2023年後半としています。あと2年ほど先のことです。さて、企業はどうすれば良いでしょうか。
ひとつは「リピーターを大切にする」ことです。
サードパーティークッキーは楽な広告手段である一方、筆者のもとに送られてくるトンチンカンなものもあるわけで、「下手な鉄砲…」となっている可能性があります。そして、的を射ない広告が毎日表示されると、筆者の中ではその企業についてイメージダウンしてしまいます。そのような人は多いのではないでしょうか。
とくに筆者が「なんで?」と思うのは、クレジットカードの入会案内です。「新規入会で○○円分還元!」とあるのですが、いやいや、ずっと使っている筆者にこそサービスしてよ、と思ってしまいます。みなさんはいかがでしょうか? 無差別にばらまかれる広告の弊害はすでに存在しているのです。
じつは、マーケティングの世界には「1:5の法則」というのがあります。新規顧客を獲得するには、既存顧客に商品を販売するよりも5倍のコストがかかるというものです。
いま、料理の宅配が流行っています。先日筆者の自宅のポストに、「はじめてご利用のお客様には○○円分割引!」とあったので、申し訳ないのですが無料分だけ利用して、あとはそのままです。筆者に対するアプローチは、ムダに終わったというわけです。
サードパーティークッキーに頼らない方法を
ビジネスの方向性はすで変化していると筆者は考えています。
もうひとつ企業にできることがあるならば、「ネットユーザーが自ら情報を提供したくなる」サービスの構築です。容易なことではありませんが、今はSNSのほうがより拡散性を持っています。そこから始めてみてもよいのではないでしょうか。
いずれにせよ、他力本願の時代はもう終わってしまうと考えなければ、生き残りは難しいのではないでしょうか。
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