AI(人工知能)の活用範囲は日々広がっており、企業などが締結する契約書のチェックにも、幅広く AI が活用されるようになっています。
今回は、AIツールを活用した契約書チェックについて、おもな機能・メリット・注意点などをまとめました。
AI を活用した契約サービスのおもな機能
AI を活用した契約サービスに搭載されている機能としては、以下の例が挙げられます。
(1)自動レビュー機能
(2)バージョン管理機能
(3)ひな形の登録・比較機能
(4)過去の契約書の登録・比較機能
(1)自動レビュー機能
自動レビュー機能は、AI を活用した契約サービスのもっとも基本的な機能です。
AI は、契約書内に存在する重要な条項を自動的に検出し、利用者にとってリスクとなる記載を指摘します。
また、法令上規定が必要な条項の抜け漏れや、誤字・脱字・条ズレなどの形式面のチェックにも対応しているものがあります。
インターネット上の情報や登録された情報、さらにこれらの情報を基に自動学習して得た情報などを参照し、利用者に対して条文の追記・修正などを提案します。
(2)バージョン管理機能
AI を活用した契約サービスには、契約書のバージョン管理を効率化する機能が搭載されているケースが多くなっています。
契約書の修正履歴を見やすい形で管理することで、別の担当者がファイルを確認した際に、交渉や修正などの過程をスムーズに把握できます。また、システム上で最新バージョンをつねに確認できるため、バージョンの取り違えなどのリスクを防げます。
(3)ひな形の登録・比較機能
AI を活用した契約サービスには、典型的な契約書のひな形が当初から登録されているほか、利用者が用いているひな形を登録することもできるのが一般的です。
よく締結する契約については、ひな形をシステムに登録しておくことで、実際のドラフトとひな形の相違点を瞬時に検出することができます。
(4)過去の契約書の登録・比較機能
利用者が過去に締結した契約書についても、ひな形同様にシステムに登録できる場合があります。
契約書をチェックする際には、過去に締結した契約書との整合性を確認することも重要です。過去の契約書をシステムに登録しておけば、これから締結しようとする契約書のドラフトとの相違点が自動的に検出されます。
契約書チェックに AIツールを活用するメリット
契約書チェックに AIツールを活用することには、おもに以下のメリットがあります。
(2)契約リスクの見落とし防止
(3)契約管理の効率化
(4)セキュリティの向上
(1)チェック負担の軽減
契約書チェックは法務部員などが担当しますが、分量の多い契約書をチェックする際には、多大な労力と時間を要します。
契約締結の頻度が高くなると、長時間労働の原因になりかねません。
契約書チェックに AIツールを活用すれば、自動レビュー機能の効果により、労力は大幅に削減されるでしょう。その結果、担当者の労働時間が適正化され、多くの人員を確保する必要もなくなります。
契約書のチェック負担が軽減されると、労働時間の適正化により従業員の健康維持や離職率の低下が期待できるでしょう。さらに残業代や人員削減によるコストの面でもメリットがあります。
(2)契約リスクの見落とし防止
法務部員などがチェックするだけでは、契約書に潜むリスクを見落としてしまう可能性があります。担当者が経験豊富でも、人為的ミスのリスクを完全に取り除くことはできません。
AIツールには、ダブルチェックの役割を担ってもらうこともできます。機械の強みを活かして幅広くチェックをおこなうため、人の目では見落としやすいリスクを検出できる可能性があります。
(3)契約管理の効率化
AI を活用した契約サービスに搭載された、バージョン管理やひな形・過去の契約書との整合性チェックなどの機能は、契約管理業務の効率化に役立ちます。
中規模以上の会社では、将来的に担当者の入れ替えが発生することも想定されます。その際、契約交渉の経緯や自社の実務基準を、システム上でワンストップで確認できると非常に便利でしょう。
(4)セキュリティの向上
契約書はそれ自体が機密情報であるため、第三者への流出などを防ぐ必要があります。
AI を活用した契約サービスのうち、すでに幅広く普及しているものには、機密情報の管理に堪え得るセキュリティ機能が搭載されているのが一般的です。たとえば、アクセス権の設定などをシステムでおこない、契約書ファイルにアクセスできる役員・従業員などの範囲を最小限に絞ることができます。
AI を活用した契約サービスは契約管理に特化しているため、必要なセキュリティ設定をよりスムーズにおこなうことができる点がメリットといえます。
契約書チェックに AIツールを活用する際の注意点
契約書チェックに AIツールを活用する際には、とくに以下の2点にご注意ください。
(2)サービスの機能を比較して検討が必要
(1)AIツールは発展途上のため、目視チェックが不可欠
契約書チェックに AIツールを活用すると多くのメリットがありますが、AIツールは万能ではありません。専門的な視点から見ると抜け漏れが多く、頼り切ってしまうのは危険です。
AI はあくまでも補助的なツールとして位置づけ、法務部員などによる目視のチェックもあわせておこなうことをおすすめします。
(2)サービスの機能を比較して検討が必要
AI を活用した契約サービスは多くの事業者からリリースされていますが、その機能はサービスによってさまざまです。
自社のニーズに合った機能を備えたサービスを選択しなければ、期待していた業務効率化などの効果は得られません。トライアル(体験版)を利用できる場合もありますので、複数のサービスを比較検討するのがよいでしょう。
まとめ
AIツールは、さまざまな業務のやり方に劇的な変化をもたらしています。
契約書のチェックも例外ではなく、今後 AIツールが担う役割はますます大きくなっていくでしょう。法務部員などが目視でチェックし、顧問弁護士にアドバイスを求めながら契約書を完成させていくという仕事の進め方も、近い将来には大幅に変わる可能性があります。
契約書のチェックにかかわる担当者は、AIツールの進化状況や活用方法などについて、最新の情報・知見をつねに仕入れ続ける必要があります。
また、契約書のチェックに限らず、仕事の方法を見直し続け、より良い方法を積極的に取り入れる姿勢が、業務の効率化、さらには企業の発展に繋がるでしょう。