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スタバの注文難易度が高すぎる!隠れたニーズ「事前のメニュー確認」

わたしは、ちょっとだけ高所恐怖症だ。

そして高所のほかに、行くと心臓がドキドキして緊張する場所がもうひとつある。

 

それは、スターバックス。

そう、わたしはスタバ恐怖症(?)なのだ。

 

だって、なにを注文すればいいのかわからないんだもの!

ラテとフラペチーノのちがいがわからず、スタバに入れない

スタバにはいろいろメニューがあるが、ふだんカフェに行かずコーヒーも飲まないわたしは、なにがなんだかさっぱりわからない。数年前まで、ラテとフラペチーノのちがいすら知らなかったレベルだ。

 

「レジで聞いてみよう」と思っても、スタバにはたいてい列ができているから、店員さんと相談してメニューを決められる空気ではない。

 

レジで「これはどういう味ですか? コーヒーが苦手でも飲めますか?」と聞けば、もちろん、店員さんは優しく教えてくれると思う。

 

でもまわりの人たちが手慣れた様子で流れるように注文してるのに、そんなの聞いていいのかな?とためらっちゃって。

 

「まだ電車が来るまで時間があるな。喉も乾いたし……。あ、スタバがある」と店の前まで行くも、なにを注文していいかわからず。

 

ガラス戸越しに店内の様子をうかがい、ドアの前をうろうろして「看板にある季節限定メニューの注文ならラクか? いやでも、いまはキャラメルよりチョコレートの気分だしなぁ」と考え込み、もう一度中の様子を見てレジ前に列ができていることを確認し、「まぁ自動販売機でいいか……」と引き返す。

 

わたしはいままで30年生きてきた中で、たぶん、この動きを10回以上している。

 

結局、スタバでバイトしていた友だちに連れて行ってもらい、ようやくひとりで飲み物を買えるようになった。しかも友だちのアドバイスで、カスタマイズにも挑戦。

 

でもカスタマイズなんて、知らなきゃ絶対ムリだよね。メニューには小さく書いてあるけど、スタバのレジでゆっくりメニューなんて見ないし……。

サブウェイも一蘭も、初心者には注文のハードルが高すぎる

じつはこの「カウンターでの注文が怖い」というのは、スタバにかぎったことではない。

 

たとえばサブウェイは、好きなサンドウィッチを注文したあと、好みに合わせてパンやチーズなどを選んでいく。

 

でもどんな種類があるのかは、スタバのトッピングと同じで大きくは書いていないので、自分の番が来てガラスケース前に立って初めて、なにがあるかを見ることができる。

 

で、そのときはもう「パンはどれにしますか?」「チーズは?」とどんどん聞かれるわけだ。

 

もうパニックだよ、わからないよ! 事前に心の準備させて! メニュー見せて!

 

結局サブウェイも、サブウェイでバイトしている友だちにおすすめを聞き、そのまま注文することでやっと「乗り切る」ことができた。

 

そうそう、わたしは、食券方式のラーメン屋も大の苦手だ。

 

ひとりで福岡旅行に行き、ふらりと一蘭に入ったときのこと。人生で初めての「ひとりラーメン」である。

 

が、ふだんラーメンを食べないので、「小ってどれくらい少ないんだろう? あっメンマ増やしたりもできるんだ、どうしようかな~」と食券機の前でウダウダ。

 

そうこうしているうちにサラリーマンがやってきて後ろに並びはじめたので、ビビって思わず店から飛び出してしまった。

 

トロくてすみません! 消えます! 許してください!

 

ラーメン好きの友だちにこの話をすると、「好きなもの適当に選べばいいじゃん。なんで緊張するの? 前の人が注文するまでふつうに待ってるし」と言われたが、選ぶのが苦手で、他人が待っているとプレッシャーを感じる人もいるんだよ……!

多言語・ヴィーガン対応にもできる革新的なマクドナルド

一方、小心者のわたしが「助かった……!」と胸をなでおろしたのが、ドイツのフランクフルト空港にある、マクドナルドの注文システム。

 

マックに行くのなんて5年以上ぶり?で、どんなメニューがあるかさっぱりわからない。

セットメニューも見当がつかないし、ポテトとナゲット以外になにがあるのかも知らない。

 

カウンター注文は怖いし、無難にポテトでも頼めばいいかな……と思ったところで、店の入口に大きなタッチパネルがいくつか並んでいることに気がついた。

 

どうやらそこで注文を選んで印刷、それをレジに持っていくシステムらしい。

 

これなら、列ができていても空いている端末に行けばいいから焦らずに済むし、タッチパネルで操作しながらだから、多少時間がかかっても食券機前でぼーっと立ち尽くすときほどの罪悪感はない。

 

とりあえず気になるメニューを全部選んでおいて、最後に食べたいもの以外の注文を消して確定することもできる。

 

バーガーを選べば選択可能なセットや飲み物が表示されるから、マクドナルドビギナーにも親切だ。なにより、レジ前でまごまごしないで済むのがありがたい。

 

しかも、さすが国際空港と言うべきか、ほかの言語を選ぶこともできる。

サブメニューにヴィーガン向けのメニューもあり、たしかアレルギー物質なんかも確認できたはず。

 

列に並んでレジでパパっと注文するのが一般的なマックでは、内容物をいちいち確認するのはハードルが高いが、これならふらりと行っても安心だ。

 

このように、メニューをじっくり見ることを前提としていないお店でも、ゆっくり注文を選べるようなデジタル注文がもっと流行ってくれないかなぁ。

 

タッチパネルにかぎらず、ふつうに、オンラインとかで。

公式サイトやアプリで事前にメニューを「完璧に」把握したい

もしかしてわたしが知らないだけで、スタバやサブウェイもやっているのでは?

そう思って、調べてみた。

 

まずはスタバ。

公式サイトを見てみると、タンブラーやコーヒー豆といったオンラインショップに誘導され、「店舗で注文するメニューの内容」をなかなか確認できない。

 

あ、「ビバレッジメニュー」がふつうの飲み物か! ビバレッジってなんだ!?

うーん、メニューはわかったけど、カスタマイズとかは見つからないぞ……。

 

アプリならどうか、とさっそくダウンロード。

あるじゃないか、「Mobile Order & Pay」!

 

しかしこれは、決済情報などをすべて入力し、事前に注文と支払いを済ませるサービスだ。

「ちょっとスタバでなにか飲みたいけどメニューがよくわからない……」という人にとっては、敷居が高すぎる。

 

サブウェイはといえば、日本の公式アプリらしきものが見つからなかった(ロシア版が一番上に表示される)。

 

公式サイトを見てみると、鮮やかな写真とともにメニューがわかりやすく並んでおり、アレルゲン情報も、原産地情報もバッチリ。

 

が、肝心の「注文の仕方」がわからない。

アメリカンBBQクラブがおいしそうなのはわかった! でもソースはなにが選べるんですか! そこが重要なんです!

 

調べてみると、Q&Aページに「メニューについて」があり、そこをクリックするとさらに「パンの種類について教えて?」があり、4種類のパンの特徴が書いてあった。

 

同じように

Q&A→メニューについて→チーズの種類について教えて?

を見ると、選べるチーズの説明が書いてある。

 

……これ、メニューを紹介してるページとリンクしてればいいのに。

 

たとえばメニューから「アメリカンBBQクラブ」をクリックしたら、商品説明の下に「注文シミュレーター」みたいなのがあって、パンやチーズ、具、ソースを選ぶ。で、それぞれ選ぶ際に、Q&Aに書いてある説明を確認できる。

 

さらに、「この画面をレジでお見せください」なんて感じで最後にまとめてくれれば、そのページをスクショしておくだけで、どの店舗でもほしいものが注文できる。

 

そういうの、つくってほしいなぁ(切実)。

 

ちなみにいま調べたら、一蘭の公式サイトには「初めてご来店のお客様へ」という多言語対応の動画があった。あのときそれを見ておけば、福岡で一蘭を食べられたのに……ッ!

「事前に注文を決めたい」という隠れたニーズに応えるシステム

わたしと同じように、「その場注文」が苦手な人って、じつは結構いるんじゃないかなぁ。というか、そうであってほしい。仲間がほしい。

 

カウンター注文や食券注文に慣れていて、困った経験がない人からすれば、「いったいなにをそんなに騒いでいるんだ」という気持ちになるかもしれない。

 

でも、できないものはできないのだからしょうがない。

 

事前にメニューを把握し、じっくりゆっくり考えて、ああでもないこうでもないと迷って、ようやく注文を決められる。そういう人だっているのだ。

 

それに、事前にメニューをきっちり確認したい人は、わたしのような小心者だけじゃないと思う。

 

たとえば、ダイエット中の人や食事制限、アレルギーがある人。

日本語が堪能ではなく、レジで説明されてもいまいちわからない外国人。

ヴィーガンやムスリムで、内容物を事前確認したい人。

 

そういう人たちにとって、事前にゆっくりメニューを見て、決めて、そのとおりに注文できるのはとても便利だ。

 

注文内容のスクショを家族に送って、「帰りにこれ買ってきてー」なんてお願いもできるしね(ちゃっかり)。

 

技術的に、「公式サイトでメニューをわかりやすく表示し注文シミュレーターと紐づける」というのは、そんなにむずかしくないはず。

 

それでもあまり流行っていないのは、自社製品に詳しい開発陣がそういったニーズを把握していないのと、そもそも「顧客になる手前の人の存在」に気づいていないからじゃないかと思う。

 

「ゆっくり考えて注文できないから店の前で引き返してしまう人をどう呼び込むか」なんて、なかなか議題に上がらないだろうからね……。

 

いやもしかしたら、「決済必須の事前注文」で、そのニーズをカバーしていると思っているのかもしれない。

 

でもちがうんだ! 事前に注文して時間通りに取りに行きたいんじゃなくて、事前にメニューを確認したいだけなんだ!

 

っていうか、公式サイトのメニュー一覧から「事前に注文をシミュレートする」と「決済情報を入力し事前注文を確定する」が枝分かれすればみんなハッピーなのでは……!?

 

というわけで、わたしとしては、マイペースにメニューを眺めてゆっくりと事前に注文を決められるシステムが、もっと広まってくれるとうれしいのである。

執筆

雨宮 紫苑

ドイツ在住フリーライター。 Yahoo!ニュースや東洋経済オンライン、現代ビジネス、ハフィントンポストなどに寄稿。著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。 最近飼い始めた犬にメロメロ。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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