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42%がサクラ? ネット通販でサクラ投稿に騙されない方法はある?

DXを最大限活用している業態のひとつにネット通販があります。ネット通販はスマートフォン1つで利用できて大変便利ですが、手に取って商品を吟味できないのが欠点といえます。

 

そこで役に立つのが購入者による「口コミ投稿」です。しかしこれらは販売業者による「サクラ投稿」によって、販売業者に都合がいいように操作されたり、競合他社により評価が不当に下げられたりしている可能性があります。

 

この記事では、実際に業者がどのように評判を操作しているか解説した上で、サクラ投稿に騙されないための対策を解説します。

ネット通販における購入者評価の重要性

Google、Amazon、楽天など、世の中にはさまざまなIT企業がありますが、このような企業の技術的な核心は「マッチング」にあります。

 

たとえばGoogleは検索者とWebサイトをマッチングさせ、その過程で広告料などを徴収しています。旅行サイト、フードデリバリー、グルメレビューサイト、婚活サイト、フリマサイト、ネットオークション……。これらは業種は違えど、おこなっていることはほとんど同じで「マッチング」がサービスの軸になっています。

 

多くの人が利用しているネット通販も、その最たる例です。

たとえば価値の高い骨董品や絶版本が街の片隅に置かれていても、その価値がわかる人がその商品を偶然見つけ出すことはきわめて困難です。しかしネット通販では検索によって、そのような掘り出し物を容易に見つけ出すことができます。商品を探している購入者と販売者をマッチングさせ、双方に利益を生み出すのです。

DX成功例の代表格「ネット通販」

このように「検索によるマッチング」はネット通販サービスの要になっています。こういったマッチングシステムは単に従来の購買情報をデジタルに改善しただけでなく、新しいビジネスを生み出したという点で、DXの中でもとくに優れた成果を上げているものの1つといえるでしょう。

 

ネット通販のメリットは多岐にわたります。購入情報や在庫情報をすべてデジタルで管理できるため、どのような商品がどのようなタイミングで購入されるかを常時把握できます。

 

購入が予想される商品をあらかじめ発注し、購入者の近くの倉庫に移動させておくなどすれば、配送時の輸送時間の削減につながります。これは購入者にとっても商品が手元にすぐ届くというメリットとなり、売り切れによる不利益を避けることにもつながるでしょう。

購入者による口コミの重要性

ネット通販にはさまざまなメリットがありますが、一方で、商品を実際に手に取り吟味できません。このデメリットを解決する手段として、購入者による口コミ投稿があります。

 

商品情報の1つとして、このような商品レビューの口コミに目を通したことがある方も多いのではないでしょうか。購入者が商品を選択するとき、口コミ投稿は大きな助けになります。

 

商品の口コミ投稿についてAmazonを例に説明すると、星の数は最大5つで、同時に文章による口コミも投稿可能です。星の数がひとつ増えるだけで、売り上げが26%増加すると言われています。*1

 

このように口コミ投稿は、購入者にとっても販売業者にとっても大変重要です。

 

私たちはインターネットにより多くの情報に触れることが可能になりましたが、一方で情報過多の状況にあります。過去のような、商品も情報も限られた時代とは大きく異なっているのです。

 

たとえば家電を購入する際に、商品のさまざまな性能の情報を集め、商品間で比較することは可能です。しかし、インターネット上には類似商品があふれているためすべての商品を比較することは困難です。

 

情報を調べる方法を知っていても、すべての性能を調べたり、調べ上げたあとで吟味したりする時間がない人が大半。それにかかる労力と利益を比較して、利益が見合うとは限りません。その結果、商品によってはあえて調べない方も多いのではないでしょうか。

 

たとえパーフェクトな選択ではなくとも、限られた時間でほどほどの商品を選択できれば十分な場合もあります。実際に手に取れない場面だけでなく、たとえ手に取れる状況であっても、口コミを参考にすることは理にかなっていると言えるでしょう。

 

このように口コミの活用は、商品も情報も十分すぎる現在の状況に対する消費者の適切な対応とも考えられます。冒頭でふれた「サクラ投稿」をする業者は、そのような消費者の心理を巧みに利用しているといえるでしょう。

商品の評判を操作する方法

評価によって売り上げに大きな差がつく以上、販売業者がその評価を操作しようとするのは、残念ながら当然の発想といえるかもしれません。

 

たとえば2020年に投稿された7億2,000万件のAmazonレビューのうち、42%ほどにサクラ投稿が見られました。*2

この数字を見る限り、私たちがネット通販を利用するうえで、サクラ投稿を避けるのは難しいでしょう。

サクラ投稿による被害

サクラ投稿によって、購入者が期待と異なる商品を手にしたり、嫌がらせによってよい商品の評判が下げられたりするなどの被害があります。そのため実際にさまざまな訴訟も起きています。*3

 

2020年だけで、Amazonは2億件以上のサクラ投稿を削除したとの報告がありますが、それらは氷山の一角でしょう。

 

サクラ投稿がおこなわれる商品は、ブランド名にこだわらないような、2,000円から6,000円程度の商品に偏っているという報告があります。*4

 

なかでもモバイルバッテリー、充電器、Bluetoothヘッドホン、懐中電灯など実際に使用してもメーカーによる違いがわかりにくい商品において顕著です。

 

たとえば懐中電灯では、その明るさがルーメンなどの単位で標記されていますが、それがどの程度の明るさなのか想像することは困難です。レビューに「十分明るい」などの口コミがあればそれを判断材料にする人も多いでしょう。また実際に商品の明るさを計測して検証できる人も極めて少ないと考えられます。

 

そのため購入後に暗いと感じても、評価の低い口コミを投稿するまでには至らず、評価に反映されないまま次の被害につながるケースも多いのではないかと推測します。

サクラ投稿の方法

サクラ投稿の方法には、サクラ投稿者をSNSなどで募集する方法や、一般の購入者にサクラ投稿を依頼する方法があります。

 

投稿者を募集する場合は、SNSやクラウドソーシングで「簡単なお仕事」「無在庫転売」などの名目で投稿者を募集するケースが多いです。いったん自社製品を購入してもらい、販売業者が高評価の投稿を確認したあとに商品代金を返金することで、サクラ投稿者にお金が支払われます。こうした方法で質の低い商品に高評価が付与されます。

 

Facebook上のサクラ投稿グループには、そのひとつのグループだけで、43,000人以上のメンバーが登録されていました。*5

 

一方、商品に手紙を同封して「よい評価をしてくれたら返金する」として、サクラ投稿を促す場合や、低い評価やネガティブな投稿をした購入者に、投稿の削除を求め「削除が確認されたら報酬を支払う」と依頼する方法もあります。少なくとも購入時まではサクラ投稿をする気なんてなかった人が、購入後に販売業者の依頼に応えサクラ投稿に加担するケースもあるのです。

サクラ投稿の見分け方

私たち購入者や、販売事業者が他社によるサクラ投稿を見抜くにはどのような方法があるのでしょうか。気をつけるポイントと、サクラ投稿の評価サイトの活用方法を紹介します。

購入時に気をつけるポイント

サクラ投稿を自身で見抜くには、おもに以下の項目を見ることがポイントです。最近の研究によって、サクラ投稿の見抜き方をマスターするだけで、その悪影響を44%減らせることがわかっています。*6

 

ここでは比較的容易な方法から順に以下に列記します。

 

  • 不自然な点数分布
  • 投稿文章
  • 投稿日時・評価者
  • 海外サイトとの比較

 

ほかにもさまざまな方法がありますが、ここでは主なものだけを取り上げ、以下でもう少しくわしく解説します。

不自然な点数分布

点数の不自然な偏りが多くの場合で見られます。星5の次に星1が多いなど点数分布がいびつなパターンです。この場合は星1つが本当の評価の可能性が高いでしょう。*7 *8

 

通常の製品であれば点数分布はどこかにピークを持ち、そこを中心に分布します。これは価値観の違いにより、たとえよい商品でもその価格には見合わないなどと考える人がいるためです。星5だけが圧倒的に多い場合はサクラ投稿を疑ったほうがよいでしょう。2019年3月に投稿された180万件の疑わしい投稿のうち、99.6%が5つ星だったそうです。*9 *10

投稿文章

投稿文章が購入しなくても書けるような抽象的な内容か、逆に細かなスペックについて記述が多い場合があります。また限られた時間で投稿するためか雑な文章になりがちで、似たような内容の投稿が多くなる傾向があります。*11 *12

投稿日時・評価者

発売後の期間の割に投稿数が不自然に多かったり、同じような製品を短期間に何度もレビューしている評価者がいる場合などは要注意です。さらにその人が評価する製品が上記のようなサクラ投稿の多いカテゴリーに偏る場合には、サクラ投稿の可能性が高いでしょう。*13 *14

海外サイトとの比較

海外でも販売されている商品の場合は、英語サイトと比較するのも効果的です。英語サイトは日本語サイトより利用者が多く、投稿全体に対してサクラ投稿の占める割合が低下することがあります。

 

上記のようなポイントに留意すれば、サクラ投稿が多い商品をおおよそ見抜くことは可能です。しかしその方法は日々巧妙化しており、見分けるのが難しくなってきています。

サクラ投稿評価サイトの利用

「情報の発信元はどこか?」「いつごろ書かれたものなのか?」「ほかの情報と比較してどうか?」など、総務省のサイトでも口コミ投稿について確認すべき事柄が具体的に示されています。*15

 

しかし日々多くの買い物をする中で、くまなく情報を収集して、その結果を比較することが時間的に難しい人も多いでしょう。そういった方におすすめなのが、サクラ投稿を判定するサイトです。

 

たとえば、「サクラチェッカー」は日本人のエンジニアがほぼボランティアで開発しているWebサイトです。

 

こちらのサイト上部の検索窓に、Amazonや楽天などのサイトのリンクや製品の製造会社名などを貼り付けると、サクラ投稿の度合いや、本来の点数の推定値が示されます。

図1.サクラチェッカーの利用画面 https://sakura-checker.jp

[Go]ボタンを押すと、サイトの右上に全体評価、サイトの下部に項目ごとの評価が表示されます。

図2.サクラチェッカーによる評価の例 https://sakura-checker.jp/

Fakespot」は、海外のサイトですが、日本語サイトにも対応しています。Chromeブラウザのアドインのため、一度Chromeブラウザにインストールすれば、以降は自動で評価が表示されるので便利です。

図3.Fakespotによる評価の例(右上に分析結果が自動で表示される)  https://www.fakespot.com/

どちらの評価サイトも一度利用して、どのような項目を根拠にサクラ投稿となるのかを知れば、最近のサクラ投稿の傾向もわかり、ほかの商品を選ぶ際の参考にもなります。

ネット通販をよりよく利用するために

DX成功例の代表格ともいえるネット通販ですが、サクラ投稿によってその利便性が脅かされています。

 

販売業者と消費者ではネット通販に割ける時間が大きく異なるため、消費者のほうが不利な状況になりやすいでしょう。

 

サクラ投稿によって不利益を被らないよう、まずはサクラ投稿が往々にしてあることを知っておくことが大切です。

 

サクラ投稿への対策として、この記事で紹介したような判定サイトに頼るのも一手ではないでしょうか。

 

また消費者のひとりとして、購入後に客観的な評価を投稿することは、消費者とよい商品の出会いを健全化すると同時に、サクラ投稿をおこなう業者を排除するのに役立ちます。

 

サイトによっては優良な評価者に特典を与えて、評価を奨励しているケースもありますので、そのような仕組みを積極的に利用するのもおすすめです。

 

サイト選びにあたっては、事前に返品条件を確認し、サクラ投稿の被害にあったら躊躇せず返品することも、社会全体の被害を減らすことにつながるでしょう。

 

サクラ投稿はフェイクニュースの一部と言うこともでき、ネット通販業者と悪質な販売業者、消費者間のイタチごっこは終わることはなく、逆に日々巧妙化していくと考えられます。

 

悪質な販売業者をなくすために、利用するネット通販サイト選びも含めて、私たちもできる範囲で協力していくことも大切です。

執筆

鯉渕幸生

Ph.D。米国標準技術研究所研究員、中央大学研究開発機構教授、Recora LLC 代表取締役CEOを兼務。米国を拠点に科学者として研究開発に従事している。ライターとしては、科学技術、環境問題、Webマーケティング、英語学習などのテーマで執筆している。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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