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マッチングアプリのトレンドから見る「人に会いたい」DXの最前線

「マッチングアプリを始めてみたけれど、会うのが面倒でデートをドタキャンした」

と、語る女性は多い。

 

そう、マッチングアプリの出会いは面倒なものだ。価値観が合うかわからない相手と、いきなりマッチングしてメッセージを送り、まあまあ盛り上がったらデートに誘う。どのお店にする? 何日に、どこで、何時? 事前にヘアサロンとネイルに行くべきか? 予算は?

 

仕事だったら「調整」「秘書役」とでも言うべき仕事が、出会いには次々と訪れる。しかも、マッチングアプリは同時進行が基本。こんなやり取りを、10名以上と並列でやっていると、何もかも投げ出したくなるのは、当然のことだろう。

「出会いたい」でも「会うのがダルい」恋愛におけるDX

とはいえ、時代はコロナ禍。2020年から、世界は突如「頑張らないと恋人候補に出会えない」場所に変わってしまった。これまでは偶然飲みに行ったり、遊びに行ったりした先での出会いがあった。けれど人類は、コロナの感染を恐れて引きこもる道を選んだ。

 

そうなると、人恋しくもなる。だから、マッチングアプリに手を伸ばす。けれども、リモートワークでは「仕事のついでにデート」というわけにもいかない。だから、実際に会うのが面倒くさい。

 

こうして、マッチングアプリをダウンロードしては、次々と現れる候補をスワイプ(削除)し、疲れてアンインストールするのが、2020年代の男女における「あるある」だった。マッチングアプリの登録者がもっとも増えるのは、実家に帰って暇になる1月2日と言われている。しかし、この記事が掲載されるまで恋活・婚活を継続できている男女はほとんどいないはずだ。

コロナ禍のマッチングアプリは「中途半端DX」だった

もちろん、マッチングアプリや婚活サービスの提供者も手をこまねいて見ていたわけではない。各社はこぞって「出会いのDX」を進めた。具体的にはオンライン通話機能の導入や、オンライン婚活パーティの導入だ。

 

ただ、これらのツールは「面倒くさい」を乗り越えることができなかった。オンラインデートで家のようすが背景に映ってしまうなら、背景に変なものが入り込まないよう、家を掃除しなくてはならない。メイクもしっかり終えて、ちょっとオシャレな服を着て。

 

「あれ? これって普通のデートと同じくらい面倒じゃない?」

と、気づいた層はオンラインデートから離脱してしまう。

 

マッチングアプリや婚活サービスの提供者は、全力を尽くしていた。ただ、それでもどこか「中途半端なDX」がなされていた部分は、否定できない。オンラインデートは、「面倒くさい」に勝てなかった。

心理的負担なく出会える、恋愛DXの実現

出会いの氷河期をようやく超えつつあるのが、2023年である。実際の感染者数とは関係なく、コロナ禍は「落ち着いた」「やっと人と会える」と感じている人が増えつつある。5月からはマスクの着用も任意になっていく。

 

だが、一度楽になった出会いのコストは、もう払いたくない。何十人も「いいね」やメッセージをやりとりしたくない。恋愛で面倒なのは、もうこりごりだ……という体験は、しっかり浸透したように思う。

グローバルな恋愛DXトレンドも日本と類似

この「出会いたい、でも面倒」トレンドは世界に共通している。2022年末のTikTokでは#DatingWrapped(出会いのまとめ)というキーワードで、1年の恋愛を振り返るユーザーが相次いだ。そこではオンラインの出会い疲れを語る海外ユーザーが続出している。

 

別途おこなわれた海外の調査では、37%が「デートする気のない相手と、メッセージのやりとりが続いた」と話し、さらに3割超が性的なやりとりにうんざりしている(Pew Research Center, 2020)。マッチングアプリによる婚活疲れは、世界的な現象なのだ。

出会いまでのプロセスを最短にするDX

対面で出会うのはいい、だが、それまでのやりとりが面倒だ。そんな声に答えて、デートまでの時間を最短にするサービスが増えた。

 

最近登場した「Teee」は、デートのセッティングを自動化したマッチングサービスだ。会員登録すると、メッセージのやりとりなしで自動的にデートが決まる。自分たちは調整仕事をせず、ただその場へ赴けばいい。これらの「自動デートセッティングによるマッチングサービス」は、都心部を中心にサービス提供エリアが増えており、いずれも好調である。

 

また、リアルの出会いでも「できるだけ手続きを減らす」ほうにサービスは進んでいる。おでんの相席居酒屋「東京おでんラブストーリー」、1対1の相席バー「THE SINGLE」、独身証明書を提出した者だけが入れる「婚活BAR○婚」は、事前の会員登録なしにふらりと出会いを探せることから、いずれも繁盛している。

恋愛DXによりノウハウはオンラインで習得する時代に

また、恋愛のノウハウもオンラインで手軽に習得したい! というニーズが高まっている。これまで対面イベントやセミナーが主流だった恋愛コーチングのコンテンツも、YouTube / TikTokに主戦場を移した。

 

現在、恋愛ノウハウを提供するトップインフルエンサーは、「しゅくろーから夜ふかし」「シコい社長」「モテ期プロデューサー荒野」といずれも YouTuber だ。とくに10~20代の認知度が高く、YouTuber が増えた現在も、新規ファンを獲得し続けている。

ますますレッドオーシャン化する「恋愛DX」

さて、トレンドに適応した新サービスが増えるということは、すなわち、恋愛マーケットのレッドオーシャン化を意味する。もともと、日本では人口が減少しつつある。すなわち、恋愛をする絶対数が減っていっている。

 

さらに、恋愛をしている割合はもっと少ない。未婚20代で「今まで一度も付き合った相手がいない割合」は男性の3割にのぼる。50代の20.5%と比べて、6.8ポイントも上昇しているのだ(荒川 和久,  2020年)。

 

それなのに、主たるマッチングアプリは20種以上ある。マーケターの視点から申し上げると、正直に申し上げてなぜこの縮小傾向にあり、かつ過熱するマーケットでアプリを提供する会社が増え続けているのか、さっぱりわからない。

 

今後、さらに新規サービスが増えれば、消費者にとっては「何がなんだかわからない」状態はしばらく続くだろう。また、マッチングサービス提供側としても、生き残り戦略は厳しくなっていくはずだ。

DXを通じて「出会いのコスト」を最小限に抑える

これまでは「婚活への本気度」「ユーザーの年齢層」が、おもなマッチングアプリの切り分けだった。たとえば、「30代で本気の婚活をしたいなら○○」といったように、本気度と年齢層の2軸でマッチングアプリを提案できる時代だった。

 

だが、これからは「どれだけ楽に出会えるか」も指標になっていくはずだ。

 

  • 相手を検索しなくていい
  • いいね!を送らなくていい
  • メッセージを送らなくていい
  • デートする場所を選定しなくていい
  • 日時調整をしなくていい

 

と、デートへの負担がDXを通じて最小限に抑えられたサービスが、今後も支持を得ていくはずである。マッチングアプリ業界のDXを乗りこなせ

マッチングアプリ業界のDXを乗りこなせ

もしあなたが、マッチングアプリを利用する側なら、「出会うのが面倒くさい」は大きなハードルになるはずだ。そして、心理的ハードルをやすやすと超えさせてくれるサービスを探したほうがよいだろう。

 

サービスの提供側であれば、今後のサバイバルは「いかに付き合うまでのプロセスをDXで手軽にするか」にかかっている。ここまでサービスが増えている反面、メタバース/オンラインで完結する出会いを提供するサービスはまだ少ない。

 

恋愛市場が少しずつ息を吹き返す中で、勝者になれるのはせいぜいマッチングアプリなら5つ程度だろう。その中に、あなたのサービスが残れることを願っている。

 

執筆

トイアンナ

ライター。外資系企業に勤めてのち、独立。恋愛とキャリアを中心に執筆しており、書籍に『モテたいわけではないのだが』『確実内定』『やっぱり結婚しなきゃ!と思ったら読む本』など。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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