飲食店でロボットが料理を運んでくるというのは、いまではそうめずらしい光景ではないことでしょう。
近年のロボットは、公共施設やオフィスでも多くの役割を担うようになっています。
ロボットに入館の許可をもらい、案内され、目的の場所にたどり着く。部屋を出たら、施錠もしてくれる。
まさに公共施設やオフィスビルで、人間とロボットが当たり前のように行き交う姿が実現しはじめているのです。
羽田空港に楽しそうな男性の姿
筆者は先日、久々に羽田空港から飛行機に乗りました。
搭乗ゲートはターミナルの端、途中に動く歩道が何か所か設置されているようなところにありましたが、歩きながらふと振り返ると、電動車いすに乗った男性がいたのです。
目的のゲートの前で電動車いすを降りた男性は、その車いすの写真をパシャリ。
筆者はちょっと羨ましく思いました。
というのも、その電動車いすの存在は以前から気になっていたからです。
そして、車いすは自ら向きを変えてゆっくりと帰っていきました。保安検査場近くにロボットのステーションらしき場所があったのを筆者は覚えており、そのステーションに向かっていったのです。
あとで調べてみると、羽田空港では、随所でロボットが活躍していることがわかりました。
案内、翻訳、清掃、搬送、とさまざまな機能を持ったロボットが羽田空港では働いているのです。
ロボットの社会実装が「構想」ではなく「現実」の段階に来たのだなあ、と感心したものです。
筆者が電動車いすを見たその日は、早朝で空港は空いていましたから、少なくとも車いすは筆者も経験してみればよかったな、と後悔したものです。写真も撮りたかったな、とも思いました。
オフィスビルではたらくロボットの進化
公共施設やビルでのロボットは、IoT、ICT の技術とともに活躍の場を広げています。
三菱電機のビルソリューションでは、自分でエレベーターを呼んでエレベーターに乗り、モノの搬送や案内をするロボットが誕生しています。
ロボットが自分でエレベーターに乗ることができる。
一見すると「ありそうなこと」と感じるかもしれませんが、必要なときに必要な場所にロボットが階をまたぎ自動的に移動できることで、省人化だけでなくロボットの台数を減らすこともできます。
また、IoT 環境の中で、複数のロボットを一括制御することで、ロボットどうしの作業の重複を避けることもできます。
そして、ビルの入退室管理なども同じクラウド上で制御できれば、顔認証技術などを通じてロボットに警備の役割を持たせることも可能になっていくでしょう。
ロボットがゲートを開けてくれて、荷物を持って目的地まで案内してくれる。
そんなこともできるようになっていくのです。
要件が済んで部屋を出たとき、施錠を忘れていても、巡回ロボットがきちんと鍵をかけてくれる。可能性は無限大です。
多芸なロボットも登場
そして、ついに「清掃・警備・案内」の1人(1台?)3役をこなすロボットも登場しています。
オムロンが開発した「Toritoss」は、
・【清掃】 施設内の巡回清掃=障害物を⾃動回避しながら清掃を実施。床⾯のゴミを吸引する
・【警備】 施設内の巡視=内蔵カメラで周囲の映像を遠隔で確認可能、本体に搭載したスピーカーとマイクを通じ、倒れている⼈や不審者に対して遠隔で声掛けが可能
・【案内】 コンテンツの案内=前⾯に搭載したディスプレイ、スピーカーを活⽤することで、動画などのコンテンツを再⽣可能
という、3つの機能を備えています。
こうしたロボットの多機能化を見ると、いずれは「清掃をこなしながら警備もしている」といった複数作業を同時進行できるロボットが登場する日も遠くないだろうな、と筆者は感じます。
清掃員に扮した警備員。なんだかドラマや映画のような話です。
また、掃除をしている最中に、倒れている人をみかけたら声をかける。
こうした行為は、人間ならではの「機転」と思われるかもしれません。
しかし、それに近い行動をロボットが取れるようになることでしょう。
また、コロナの流行で清掃ロボットは大きく注目されました。
米疾病対策センター(CDC)の研究では、床に広がったウイルスがほこりなどに付着して飛び回り、感染の原因になることが判明しています。
よって床掃除は感染拡大対策の効果があるのですが、人間が清掃すると、どうしても汚れている部分を中心に掃除をしてしまうため、ムラができてしまうのです。
しかしロボットはムラなく掃除してくれます。
人の手による清掃時の空間浮遊菌量(1平方メートル当たりの数)は2万~3万であるのに対して、HEPAフィルターと呼ばれるフィルターを搭載したロボットで2~3日清掃した後は4,000~6,000にまで減ったというのです。*1
まさに、人間の欠陥を補ってくれるロボットが誕生しているのです。
人間とロボット、補い合う関係に
かつて「24時間働けますか?」と歌う曲がブームになったことがあります。
いまの時代でそれを言ってしまうと「とんでもない!」という言葉が従業員から返ってくることでしょう。
しかし、ロボットは24時間働くことができます。あっさり人間を超えているのです。
また、人間には「うっかり」がありますが、ロボットは、与えられた指示を絶対に守り、「うっかり」がないというのも特徴です。
一方で、ロボットはエラーを起こすこともあります。そこは人間の出番です。補い合う関係で共に働く仲間といえます。
そして、ロボットと通信を合わせた「ロボットの働き方」は、今後どんどん多様化していくでしょう。
時刻や外の天気を教えてくれるといった簡単な受け答えに始まり、たとえば社員証に社員の残業時間をインプットしておき、それを読み取ったロボットが「働きすぎていませんか?」とケアをしてくれる。顔認証でその社員と以前どんな会話をしたかを記憶し、その話の続きをしてくれる。
ロボットと人が当たり前のように行き交うオフィスの未来を想像すると、筆者の妄想は止まりません。