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もし働いている会社が買収されたら? それでも悲観しなくていい理由

イーロン・マスク氏によるTwitter買収のインパクト

ここ数日(11月中旬)、イーロン・マスク氏のTwitter買収関連のニュースがヘッドラインをにぎわせている。もっとも大きなニュースはメール1本で(たとえ話かもしれないけれども)、何千人もの従業員を解雇したことだ。イーロン・マスク氏はTwitterの買収直後に経営陣を解雇していたので、その流れで余剰人員を整理したのは噂通りの動きであった。時を同じくして、FacebookあらためMeta社も大規模な人員整理を発表していた。超メジャーテック企業も転換点を迎えているのだろう。

 

どんな会社であっても、経営者が変わる可能性はある。そのときどう対応するのか、僕らも普段から少し考えておいた方が良い。Twitter社やメタ社に勤めていても安泰ではないのだ。日本の会社の9割は脆弱な中小企業という話を聞いたことがあるが、そんな中小企業で働く僕らなどは、安泰ではないどころか風前の灯、夏の終わりの線香花火のように儚いものである。覚悟を決めておいたほうがいい。決めておけば、量産型イーロン・マスク氏が会社のオーナーになっても慌てずに済む。

イーロン・マスク氏のような人に会社が買収される可能性はゼロではない

もし、働いている会社が、イーロン・マスク氏のようなバリバリの経営者に買われたら僕らはどうすれば良いだろう? 悲観的になりすぎる必要はない。有力な経営者に買われる会社は優良企業であり、選ばれし会社であることの証明なのだから。僕が勤めている会社もかなり怪しいが大半の会社は買われずに消滅するだけである。倒産・消滅した中小企業の、中途半端な能力と経験しか持たない従業員の末路は悲惨である。それに比べれば、買収されるような立派な会社に勤めている時点で優位に立っている。

 

量産型イーロン・マスク氏に勤務先が買収されたとき、僕らが取るべき選択肢は大きくわけて3つだ。➀「働き続ける」②「クビになる=整理対象になる」③「自分から辞める」。この中で③「自分から辞める」を選択する場合、自分の意志で次の場所を見つけているので、まったく問題はない。円滑に引継ぎを終えてから新天地で活躍すればよい。

 

問題になるのは、新経営陣と付き合っていくことを決意した➀「働き続ける」と、今後も働きたいという意志を持ちながら解雇される②「クビになる」ということになる。

 

会社で働いていれば、経営者が変わるなど社内体制に変化があるときに、自分の立場が危うくなるかどうか、うっすらと気付いている。なぜなら自分の能力や、成果を出しているか否かは、自分自身がいちばん知っているからだ。能力があっても、新経営陣と意見・ポリシーが合わない場合や、不幸が重なって結果・成果が出せない場合もある。そういったケースでも「自分は危ない」という予感はする。新しい経営者は我々の努力や人格など知らない。経営者になった時点での成果とその後の可能性で判断を下す。その判断が正しいこと、判断に能力の有無や実績が正確に反映されるのを祈るばかりである。

新しい経営陣に受け入れられるために必要なこと

➀「働き続ける」を選択した場合、新しい経営者に必要だと判断されたうえで、新しい経営方針に自分を合わせていくことが求められる。計画の前倒しや目標数値のアップが求められる可能性はきわめて高い。それも買収直後に光の速さで計画の更新が求められる。新しい経営者は内外から結果とインパクトが求められるからである。実際、Twitterがイーロン・マスク氏のものになってからわずかな期間で、広告依存からの脱却のために、有力プランの刷新や認証制度の有料化を矢継ぎ早に出しているのがいい例だ。Twitterで働き続ける人たちは、おそらく有能なのでこういう無茶に(ある程度)対応できる。これはすごいことなのである。

 

一方、ごくごく平凡な日本の中小企業で経営者が変わったとき、経営方針の急速転換についていける人材はどれだけいるだろう? ほとんどいない。そのため、変化についていけるという要素だけで生き残れる。どうすればいいか。25年会社員をやってきた僕には僕なりの、この問題の解決策がある。簡単である。それは、計画やノルマに向かって進めているときに、その計画を前倒しする可能性や目標数値を上げる施策についてあらかじめ考えておくことである。

 

会社という組織は無慈悲で、経営者というのはわがままである。買収からの経営者変更というムーブにかぎらず、経営者は変わらなくても、経営者というのはジキルとハイドのように、昨日と今日では言っていたことが変わるのは珍しくはない。先日の会議で「今期はこのペースを維持することに注力してほしい」と穏やかな顔で語っていた経営陣が、翌日「半期の目標数値を2か月で達成しろ」と鬼の形相で言ってきて、頭がくらくらしたときもあった。経営者の脳内や経営者自体が変わることによって、求められるものは一変する。日頃から、その変化に対応できるようにしておけば、ある日突然イーロン・マスク氏がテスラでやってきて、オーナーになったときに役に立つだろう。もちろん、それでも新経営者を満足させられずにクビになる可能性はあるが、そのときは、縁がなかったといさぎよく諦めよう。いま働いている会社がすべてではないのだ。

解雇されても悲観的になりすぎる必要はない

②「クビになる」の選択はひとことでいえば悲劇である。自分の意志に反して解雇されるのだから、未練と後悔と怨念で引き裂かれる思いになる。だが、部外者からみれば、解雇されたTwitter社員の恨み節ツイートなど酒のつまみである。Twitter社員のように、能力があって好待遇の人間が、問答無用、容赦なくクビになるのだ。ごく平凡な中小企業で働く僕らがクビになってもしょうがない、という諦めがつくともいえる。

 

「クビ」「解雇」はイメージは悪いが、それほど悪いことではない。コストに見合わないとみなされただけである。存在を否定されているわけではないのだ。「能力と給与が高すぎたかなー」と気楽に受け止めるくらいでよい。それに、クビにされた会社の上司など辞めてしまえばただのオッサンなのだ。ハゲ!バカ!と心の中で呪詛を吐きながら堂々と荷物をまとめて退出していこう。

 

もちろん、明日からの生活を考えたら、頭が痛くなる。家族から「仕事に行かないの?」「ご近所に気づかれないようにハロワに行け」と詰められるのが現実。席は限られている。能力があるからといって新しい仕事がこれまでと同程度以上の待遇で見つかるとはかぎらない。クビになるのは恥ずかしいことではないが、クビにはなりたくないと考えるのが普通だろう。

自己アピールははしたないことなのか?

クビになるのは、コストに見合わない、能力を活かしていない(能力がないのではない)と新経営者に判断されたからである。アピール不足なのだ。会社に残っている人間を観察しているとよくわかる。良いポジションにいる人間は能力がある者、成果を上げている者ばかりではない。アピールがうまいというだけで実力以上の評価を得ている人種はどの組織でも必ずいる。これまで僕は3社で働いてきたが、どこにでもその種の人間はいた。外部からみれば同じ能力と実績の2人の社員がいて、どちらかを切らなければならないという判断をするとき、アピールがうまい方が選ばれる公算が高い。というか間違いなくそうなる。

我々、日本人は自己アピールが下手である。それどころか自己アピールを「はしたない」「みっともない」と感じる人が多い。皆さんはどうだろう? 外国人の同僚の過剰な自己アピールを目撃したとき、「私にはできない…」と引きつつ、「はしたない」「日本でそういうのは受け入れられない」と感じた経験はないだろうか。

 

真面目に働いていれば、上は見てくれている。そういう性善説に立って仕事をしている人は多いようだ。僕のような営業職の場合、目標数値に達しているかどうかは上に立つ者から見れば一目瞭然である。だが、見ているのは結果だけである。プロセスは見ていない。結果的に実績が同程度であるなら仕事をしているアピールがうまい人間が重用されるようになる。

スプラトゥーンでペンキ塗りをしてくれる人はありがたいけれども

スプラトゥーン3(以下、スプラ3)が大人気である。僕も睡眠時間を削って遊んでいる。スプラ3は海外よりも日本での人気が高いというネット記事を目にしたことがある。それは海外のFPSのように撃って勝てるプレイヤーだけが活躍できるゲームではなく、相手に撃ち勝てなくても、自陣のペンキを塗ることに専念するなどして、チームに貢献できるルールが日本人の特性に合っているからではないだろうか。

 

《目立たないけれど仕事をしている》《チームに貢献している》スプラ3には「上は僕らの働きぶりを正当に評価してくれている」という僕たちジャパニーズサラリーマンが歓喜する要素で満たされている。はっきりいって幻想である。幻想を満たしたからウケたのだ。

 

スプラ3の要領で、誰もみていないポジションでチームのために自陣でペンキ塗りをするかのごとく、会社で地道に仕事をしていても、替えの効く人材だと思われるのが現実社会では関の山である。会社を買収する量産型イーロン・マスクが選ぶのは、派手に相手を撃ち倒して、敵陣を自陣に塗り替える、代えのきかないスタープレイヤーである。自陣でペンキを塗って支えているプレイヤーの存在には気づかない。

 

だから、常日頃よりときどき、「仕事しています」アピールを敢えておこない、やっている感を周囲に植え付けていくことが大事になる。みっともない、はしたない、という感情を押し殺すことも必要だ。経営陣が変わってリストラが実施される際、隣の席に座っている能力と実績に大差ない同僚ではなく、自分が選ばれ生き残るためには、少々の我慢は仕方ない。僕は、そんなことをTwitter社買収劇から考えて、夜な夜な遊んでいるスプラ3において、自分を主張する練習のつもりで地味なペンキ塗りをやめて最前線に出ているけれども、いいカモになっている。アピールというのは非常に難しいものであることは覚悟してほしい。

 

余談だが、イーロン・マスク氏という存在を最近知った僕が勤めている会社の上層部が、マスク氏のテレワーク原則廃止に便乗して「世界一の経営者のマスク氏も出社を奨励している」と騒いでいたので、「Twitterが何か知っていますか」と確認したら「イーメールサービスだろう。もちろん知っている」という回答をいただいて絶望した。こんな世間の常識知らずの経営陣がいる会社が買収される可能性はゼロである。つまり、危機感をあおる文章を執筆していながら、僕自身は買収劇に対して不用心でも安心していられるのである。

 

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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