設立5周年 法務部の過去・現在・未来 ~バーチャル株主総会を実現する法務組織~

法務部メンバー

 

さくらインターネット 法務部の石崎です。

私が所属している法務部は、先日設立5周年を迎えました。この5年の間に、社会の状況も大きく変わりましたが、法務部も大きく変化したと感じています。今回は、今年の株主総会を一例に、さくらインターネットの法務部のこれまでと、そしてこれからについてご紹介させていただきたいと思います。

さくらインターネット 法務部の歴史と今

さくらインターネットの法務部は、今年の8月1日で設立5周年を迎えました。その前は、総務部やリスクマネジメント室といった部門の中に、法務担当者が在籍しているという形でした。より専門性を高めて業務に取り組むべく、2017年に法務グループと情報セキュリティ・内部統制グループからなる部門として法務部が設立されました。その後2022年4月に、情報セキュリティ・内部統制グループが別部署に移ったことで、旧法務グループが単独で法務部となっています。

現在は私を含め4名の部員が在籍しており、契約書審査・作成、約款作成、法務相談、訴訟、業法対応(電気通信事業法、古物営業法)、知的財産、登記、株主総会、取締役会などの業務を全員で分担して対応しています。各業務に専任の担当者を決めるのではなく、全員が幅広い法務業務の経験を積むようにしているのが、さくらインターネットの法務部の特徴です。

 

さくらインターネットの法務部では、2019年から「法務のビジョン」として「志を共に、視点は独自に~One mind with legal perspective~」を掲げて業務に取り組んでいます。

法務のビジョン

これは、ビジネスと距離を取って客観的なアドバイスに終始するのではなく、その志に寄り添い、熱意をもってビジネスを自分事としてとらえたうえで、法務だからこそ持ち得る冷静な客観的視点を併せ持つことで、ビジネスを推進するチームの一員たる法務としての価値提供をしよう、という考え方を表したものです。

法務部が設立されて5年、「法務のビジョン」を制定して3年が経ち、以前に比べると法務部員の業務への取組み方は大きく変化してきました。今年の株主総会は、とくにその変化を象徴するものだったように思います。

法務のスキルとマインド

さくらインターネットの株主総会

さくらインターネットの株主総会は、コーポレート本部を中心として、部門横断で実施する一大イベントとなっています。毎年、コーポレート本部の本部長・副本部長を筆頭に「株主総会事務局」が組織され、各部門からメンバーが参画。各々の専門性や経験を活かして業務を分担し、また相互に協力し合って株主総会の準備から当日運営までをおこないます。

法務部では、PM(プロジェクトマネージャー)を担当する法務部長をはじめ、毎年部員全員が株主総会事務局に参加しており、株主総会は法務部にとっても年に一度の大仕事です。

株主総会

新たな挑戦 ~ハイブリッド「出席型」バーチャル株主総会

以前、さくらインターネットの株主総会は、毎年200~300名ほどの株主さまにご来場いただいていました。ところが、2020年から新型コロナウイルス感染拡大防止のため、会場は大幅に座席を減らし、株主さまにはご来場をお控えいただかざるを得なくなりました。そこで、2020年・2021年には株主総会のライブ配信を実施しました。

今年はコロナ禍で3回目の株主総会。ライブ配信であれば問題なく実施できることは分かっています。しかし、さくらインターネットの株主総会事務局はそこから一歩進むことを選択しました。ハイブリッド「出席型」株主総会への挑戦です。

 

株主総会の写真

 

ハイブリッド「出席型」株主総会の実施に踏み切るかどうか、株主総会事務局で議論すると、乗り越えるべき課題がいくつも出てきました。例えば、ライブ配信とは異なり、「出席型」では株主さまお一人おひとりがログインして、議決権を行使し、行使結果を集計しなければなりません。それを実現するための新たなシステムを導入すれば、新たなシステムと接続するために映像配信も昨年と同じというわけにはいかなくなります。また、会場とオンラインとでは行使の方法もタイミングも変わってきますが、総会自体はひとつの同じものにご参加いただいていますので、進行にも工夫が必要です。

とくに法的なハードルの検討は、「出席型」の実施の可否の判断に不可欠です。法務部員が中心となって検討したのは、次の2点です。

 

1. 当社の株主構成では過半数の確定票が確保できていないため、株主さまをお待たせせずにバーチャルと会場の票を集計し、可決要件を満たしているか確認しなければならないこと

2. バーチャルと会場の両方について適法かつ無理のない進行とすること

 

事例・情報収集、集計シミュレーションや弁護士への相談を積み重ね、この2点を乗り越えられると判断、最終的には株主総会事務局全員で「出席型」の実施を目指そう、という結論に至ります。株主総会事務局における法務のスタンスとして、リスクがあるから止めようとするのではなく、新しいことに挑戦しようという志を実現するために、リスクをどう乗り越えられるか主体的に考える、まさに「法務のビジョン」が体現された出来事でした。

 

東京証券取引所が上場企業向けにおこなったアンケートでは、2022年3月期決算会社の定時株主総会で、ハイブリッド「出席型」バーチャル株主総会を実施予定の企業は、回答者のうち1.2%でした(※)。自分たちにとって初めての挑戦というだけでなく、先例も少ない中で、主体的に検討し、議論し、ハイブリッド「出席型」バーチャル株主総会を実現できたことは、法務部員を含め株主総会事務局員にとって大きな自信となりました。

 

※ 出典:2022年3月期決算会社の定時株主総会の動向について | 日本取引所グループ

 

議事進行

 

なぜ、リスクを乗り越えようと決断できたのか

さくらインターネットの法務部は今でこそ、「法務のビジョン」として「志を共に、視点は独自に~One mind with legal perspective~」を掲げて業務に取り組んでいますが、じつは、法務部ができる前やできたばかりの頃はもっと保守的な雰囲気でした。その頃、ハイブリッド出席型株主総会をやろうとしていたら、法務的な視点のみで、リスクがあるといって止めようとしたのではないかという気がします。法務部・法務部員のマインドが変化してきた今だから、ハイブリッド出席型株主総会を実現できたと思うのです。

ではなぜ法務部が変化したのかというと、さまざまな要因がありますが、以下の3つに整理できるかと思います。

  • 環境要因として、変化が多く、変化すること自体に慣れてきたこと。たとえばメールからSlackへ、出社からフルリモートへといった業務環境の変化や、IoT・Tellusなど次々に創出される新サービスの法務対応をこなしてきたことで、新しいことを受け入れる土壌ができてきたように思います。
  • 法務部の組織的な要因として、部員が加入・成長したこと。メンバーが自律的に働くことができるようになり、また法務プロパー人材のマネジメントメンバーも増加したことで、部署としての組織運営体制が整ってきました。
  • 法務部の意識的な要因として、「法務のビジョン」を作成し、それが浸透してきたこと。単に業務をこなすだけではなく、業務に臨む方針・心構えを共有し、積極的な姿勢が身についてきました。

これらの出来事や経験が積み重なって今の「法務部」となり、その1つの集大成が今年のハイブリッド「出席型」バーチャル株主総会だったように思います。

さらなる挑戦~オンライン登記申請

法務部員の挑戦は、バーチャル株主総会に留まりませんでした。

コロナ禍においては対面で会う機会が少なくなり、役員から押印の必要な書面を収集することが非常に難しくなりました。そこで、法務部では「総会をバーチャルでやるのだから、登記も完全オンラインを目指そう」と目標を定めたのです。

まだまだ体系的な情報が乏しい中、書籍・インターネットで情報を集め、法務局や電子署名システム事業者に問い合わせるなど入念な準備をおこない、完全オンラインで申請できました。

例年と比べ、登記担当の業務がコンパクトになったうえ、役員側の負担も減らせましたし、登記申請から完了までの期間を従来の2週間から2日間へと大幅に短縮できました。

初のバーチャル株主総会を開催する裏での挑戦ということもあり、時間的・精神的に余裕がない中でしたが、ここで一歩踏み出してよかったと感じています。

法務部のこれから

さくらインターネットの企業理念は、「『やりたいこと』を『できる』に変える」です。さくらインターネットの法務部は、今後も変化・成長を止めず、共に働くメンバーを増やしながら、お客さまやさくらインターネット社内の「やりたいこと」に寄り添い、新しいチャレンジも恐れることなく積極的に、「やりたいこと」を実現していきます。

 

法務部メンバーの写真

 

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(2022年10月26日時点の情報です)