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元・兼業書評家の「会社に勤めてよかったこと3選」

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前回は「会社を辞めました!」エントリを書いた。書きましたが。

記事が公開されてから気づいたのだ。

会社兼業生活のつらかったところだけ書いて、よかったところを書いてない……! と。

会社をやめたくなったのは、たしかに兼業生活がつらかったからだった。が、しかし裏を返せば、会社兼業生活を3年間続けられたのは、それだけ良かったことがあって、兼業生活が楽しかったからである。

というわけで、今回はおよそ3年を振り返って思う、「会社に勤めてよかったこと」3選。

3選としたのは、ハイ、語呂がよかったからです。

1.いざとなれば再就職できると思える

初っ端から「そこ!?」と驚かれそうなところですが。

いや、ここだよ!! 私は主張したい。

というのも、今回「専業になりまーす!」と専業書き物業に移行したのだが。この先の未来はやっぱり未定なのだ。

人生で同じ働き方をずっとし続けるのはむしろ難しいことなんじゃないか、と今の私は考えているから。

もちろん世の中にはずっと同じ仕事をしている人もたくさんいる。けれどそれは若い頃に獲った専門職がずっと活かされる仕事だったり、あるいはプライベートの変化が少なかったりする場合だからこそできることなんじゃないか。

仕事以外の外部環境は、どんどん変わる。

自分自身の仕事に求めるものや、仕事そのもののステージも変わる。すると働き方というのは、はっきり固定するよりも、人生で都度都度模索すべきなのかも。私は会社に勤めるうちに、そう考えるようになった。

会社では、意外といろんな人が働いている。業務委託で働いている人、派遣で働いている人、時短で働いている人、仕事に邁進している人、仕事はお金のためと割り切っている人。

いろんな人を見ていると「仕事っていろんなスタンスがあるのが普通なんだな……」と私は思うようになった。

なんだか、学生のときは「会社が超楽しい」と「会社が超つらい」の二つの選択肢しかないもんだと考えていたような気がする。しかし実際は、突然生活のほうががらりと変わらざるを得なかったり、自分の体調や性格との兼ね合いの部分が意外と大きかったり。仕事以外の要素で、仕事との付き合い方を決定することは多い。

自分の人生のなかにある仕事、のうまい手繰り寄せ方を知ってゆくのが大切なんじゃないか。

社会人になってはじめて、そう思うようになった。

そう考えると、日本はもっと転職がしやすい環境になるといいな、これだけ女性も男性も年齢関わらず働く世の中になってるわけだし、とよく思ってしまう。

もちろん仕事というのは基本的に生活するお金を稼ぐためにあるものだし、全員が仕事したぶんの対価をきちんと払ってもらえる世の中になることが、まずは大前提の目標ではあるけれど。対価を得たうえで、その向き合い方が、人それぞれ自分に合ったものになるといいな、と私は心底願っている。

……と、脱線が長くなったけれど、「働き方は人それぞれだな」と理解できた社会人生活。とりあえず自分のやりたいことは会社に所属していては無理そうだ、個人でやるしかなさそうだ。そう理解したので、いったん個人で仕事をしてみることにする。

しかしまた自分の体調や生活スタイルが変わったら、会社で働きたい。そう思えるようになったのは、やっぱり一度会社で働いたからだ。

就職してはじめて、会社就職という概念に対して恐怖心がなくなった。

何かを怖がらなくなるのは良いことだ。会社で働いてみて本当に良かった(……と書いておいて、再就職、まあ経歴で難しいと判断されるかもしれないけれど……その時はその時です)。

2.社会のルールがわかる

会社の風景写真

これも会社で働いてみてよかったな、と感じることだ。

社会のルールとは何か。それを書いてくれている本はこの世にたくさんあるだろう。メールのマナーも、社会人の読むべき空気も、上司との丁寧なやりとりも。書店のビジネス本の棚を覗けば、きっと教えてくれるだろう。しかしやっぱり、実際に働いてみないと、社会の暗黙のルールはわからない。その暗黙のルールって何よ! と問われると、はっきりと言葉にすることが難しいんだけど。

単純に社会人のルールが分かるから、個人事業主として働くときに使えてよい、という話ではないのだ。

というのも学生時代、私は自分が社会のルールを分かってないと、思っていなかった。

たとえば学生時代、就職活動のためにインターンシップも行ったし、院生時代は本も出して出版社とやり取りもしたし、所属していたフリーペーパーを出すサークルでは広告を出してもらう営業もしていた。が、普通にそれは学生としてやっていることであって、社会人のあり方とはまったく異なるものである。ということを当時はよく分かっていなかった。

いちばん「会社に勤めて、なんとなく社会のルールに触れられてよかった」と感じるのは、こう思う時だ。

「もし自分が会社で働いてなかったら、世の中のことをもっと机上の空論で批判していたんじゃないか」……。

書き手として社会やら他人やらのことを考える時、「いやーそうはいってもそんな綺麗に社会って動かないよね……」と、学生時代よりも切実に思えるようになった。

個人として活動するうえで、物事へのバランス感覚がなにより大切だ、と私はすごく感じているのだけど。そのバランス感覚を養うのに、会社勤めは必要だったんじゃないか。そう今は思っている。

会社にあれこれ通すときの大変さとか、ブラックと言われてない会社でもやっぱり働くのは大変だとか、そもそも社会は建前で動いているとか。

なんだかそういうことが、肌で分かるようになってよかった。

いや、普通にエクセルの使い方とか、いろんな数字の読みかたとか、パワポの作り方とか、そういうスキルも教えてもらったのも良かったけれど。でもいちばんは、社会に対して「そうだよね、社会のルールってけっこう複雑だよね!」と切実に思えるようになったことが、会社に勤めるメリットそのものだった。私にとっては。

3.いろんな人と出会える

パズルのピースを持つ大勢の手の写真

最後は月並みな話ではありますが。やっぱり、大学までやら出版関係やらでは出会えなかった人に出会えたことが一番良かった。

同期で仲良しの子ができたとか、同じ部内で趣味の話をできる人と仲良くなれたとか、そういう「仲良い人と出会えた」という点も良かったけれど。

単純に、個人的に付き合うほど仲良くなったわけじゃなくても、「あーこういう人って世の中にいるんだな」と、初めて出会うタイプの人とたくさん知り合いになれたのが、面白かった。

……なんていうと、人間をサンプルみたいに扱うな、と怒られそうだが。でも、やっぱり会社に勤めて、私のなかでの他人への解像度が上がった。頭の中にいる人間の種類が増えた。それが良かったなと思う。

「こういう人って世の中にいるんだな」という感想は、決して批判や嫌悪ではなく。新鮮な驚きのことだ。やっぱり、どうしたって集団の中にいると、出会う人は偏る。偏りが悪いわけじゃないし、会社だってひとつの偏りなんだけど。でも、いろんな集団に出会うと、そのぶん、いろんな人と出会える気がする。

なんだか出会い大好き、チャラい人みたいな発言になってしまった。

でも本当だ。重ねて言うが、私は何をするにしてもバランスってすごく大切な要素だと思っているのだ。

そもそもものすごく偏った人間だからこそ、バランスを重視してないと、すぐにおかしなことになってしまうと恐れているのかもしれない。

というわけで、会社に勤めてよかったこと、三宅選、でした。

人によってそのメリットは異なるとも思うけど。会社への就職が嫌だあと嘆いている学生さんや、会社に勤める意味ってなんだっけ……と震える同じような兼業ワーカーの参考になればいいなと思う。参考になる人の方が少ないかもしれないけれど。

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執筆

三宅 香帆

書評家・文筆家。1994年生まれ。 『人生を狂わす名著50』『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』などの著作がある。

編集

武田 伸子

2014年に中途でさくらインターネットに入社。「さくらのユーザ通信」(メルマガ)やさくマガの編集を担当している。1児の母。おいしいごはんとお酒が好き。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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