目次から飛べない電子書籍…DXチャンスは足元に転がっている

目次から飛べない電子書籍…DXチャンスは足元に転がっている

 

進歩は、すさまじい。

変化は、目まぐるしい。

わたしが小学生だったころ、家には大きなパソコンがあって、それが当時の最先端でした。中学生で自分の携帯を持ったかと思えば、大学生になるころにはもうスマホが当たり前。

いやぁ、日々の進歩ってすさまじいですね、目まぐるしい変化です。

でも前を見て突き進むがゆえに、足元がお留守になっているようなサービスも、結構多い気がします。

図書館大好きなわたしがついにkindleを購入

わたしは小さいころから本が大好きで、夏休みは毎日開館と同時に図書館へ行き、ひたすら本を読みふけるような子どもでした。だから、電子書籍に対して、最初は強い嫌悪感を抱いていたのです。

新刊から漂う、ちょっときつめのインクのにおい。

ページをめくるとき、「次はなにが待ち受けているんだろう」と、息をのむあの感覚。

読み終わって本を閉じたときに訪れる、充足感とちょっとした寂寥感。

それらは「紙」だから味わえるものであり、「本」は紙であるべきもの。

ずっと、そう思っていました。

でも海外暮らしが長くなってくると、そうも言っていられません。物理的に、日本の本を手に入れることができませんから。

読みたい本がどんどん増えていき、最終的に、しかたなくkindleを購入しました。ほかに手段がないから、苦渋の選択です。

でも使い始めてみると……

 

なんでもっと早く買わなかったんだろう!? 過去に戻って「お前、いますぐにkindleを買え!」と胸ぐらをつかんで説得したいレベルで、便利でしょうがない!

買いたい本はいつでも買えるし、品切れになることもないし、旅行で重い本を何冊も持ち運ばなくて済む。こんな画期的なもの、もう絶対に手放せません。

電子書籍の市場は拡大を続け、大手出版社も、ブラウザで作品を読めるようにしたり、無料配信で新規顧客を開拓したりと、「本を売る」かたちも日々変わっています。

こんなに便利なのですから、電子書籍が広まるのも納得です。出版社も、電子書籍に力を入れているでしょう。

でもkindleのハードユーザーになってから、「電子書籍ユーザーの心理をわかってないなぁ」とも思うことが、何度かありました。

目次リンク機能が使えない不便さにイライラ

目次リンク機能が使えない不便さにイライラ

 

一番の不満は、「目次から該当ページに飛べない電子書籍」です。

紙の本であれば、目次を見て、「〇〇章『~~』35ページ」と確認し、読みたい部分だけを読むことができますよね。

多くの電子書籍にも同じ機能がついていて、目次の部分をタップやクリックすると、そのページに飛ぶようになっています。

電子書籍は紙の本のようにパラパラめくって読むことができないので、ピンポイントで読みたい部分にたどり着くには、この「目次リンク機能」がものすごく大切なのです。

 

……なのに!

この目次リンク機能がついていない電子書籍って、意外と多いんですよ。

いやね、古い小説の電子書籍版などであれば、その機能がないのもわかります。でも、最新のビジネス書や実用書でも、目次からページに飛べない本が結構あるのです。

たとえば、『社会人1年目の新卒が知っておくべき仕事ノウハウ』なんて本があったとしましょう。

第一章が言葉遣いのマナーで、そのなかに「先輩に対する言葉遣い」「上司に対する言葉遣い」「お客様に対する言葉遣い」「取引相手に対する言葉遣い」「やりがちな二重敬語」「使ってはいけない言葉」など、多くの節がある構成だとします。

一度読んだあと、「うん、いい本だった。気に入った部分をもう一度読みなおそう」と「二重敬語」のくだりを読もうと思っても、目次から飛べないのです。

目次で飛べるのは、「第一章 言葉遣い」や「第二章 メールの書き方」といった章ごとで、章のなかの部分には個別で飛べない。

第一章のページからひたすらスワイプしてページをめくってたどり着くか、適当なページ番号を入れて当たりをつけて見つけ出すかしかありません。

これがもう、ものすごく不便でして。

目次から指定ページに飛べるようにするのって、技術的にはそんなにむずかしいことじゃないはずなんですけどね……。

とくにビジネス書や自己啓発、ノウハウ系の本であれば必須機能だと思うのですが、出版社側は、なぜ目次リンク機能を確認しないんだろう?と不思議に思います。

ユーザー視点が欠けたサービスはとにかく不便!

ユーザー視点が欠けたサービスはとにかく不便!

 

紙の本だったら、完成品ができた時点で出版社チェックが一度入るはずですよね。そこで不備が見つかれば、発売前に修正されます。

電子書籍にも同じようなチェックがあれば、目次リンク機能がついていないことくらい、すぐに気づけると思うのです。

臨機応変にできる対人サービスとはちがい、ネットを使うデジタル系のサービスは、あらかじめシステムとしてすべて組み込んでおかなくてはいけません。

「システムが完成したからそれでヨシ」ではダメで、「客にとっていいモノか」を確認し、適宜最適化していかないと意味がないのです。

 

そうそう、最近見たYouTubeのドキュメンタリー動画がおもしろくて、「前編」を見終わったあと「後編」を見ようとしたのですが、全然見つからないことがありまして。

ふつう、概要欄に「後編はこちら」とURLが載っていたり、動画を見終わった後に「次の動画」として、おすすめに後編が出てくるじゃないですか。

もしくは、チャンネル名から再生リストに飛んで、「〇〇ドキュメンタリー」から見つけられますよね。

それがどれもできなくて、結局タイトルをコピーして検索欄に貼って、やっと後半を見つけられました。後編動画をアップしたあと、前編からの動線を確認しなかったのかなぁ……?

そういえばこの前、ふだん見ているニュースサイトをタブレットから見たら、デザインがぐちゃぐちゃで「見られたものじゃない!」と閉じたこともありましたね。

個人ブログを運営していたからわかるのですが、アクセスの大半はパソコンかスマホで、タブレットユーザーはかなり少数です。だから、タブレット用デザインを確認しなかったのかもしれません。

少しデザインを修正するだけで、タブレットユーザーにも快適になるのに、残念です。

DX最適化チャンスは足元にたくさん転がっている

こういう不便はきっと、企業側の怠慢というより、単純に「気が付いていない」のだと思います。企業だって本来は、ユーザーにとってよりよいものを提供したいはずなのですから。

もったいないですよね。ちょっと確認するだけでぐっと便利になるポイントが、たくさんあるのに。

たとえば、電子書籍は読み手がストレスなく読めるようになっているか? 本ではできて電子書籍ではできないことはないか? それを機能追加でカバーできないか?

YouTubeは視聴者がほかの動画を見やすいように、動線ができているか? 視聴者から字幕ミスの指摘はないか? 再生リストで動画をリスト化しているか?

ウェブサイトはスマホ、パソコンだけでなく、タブレットでも見やすいか? SNSで拡散する際、うまくリンクできるか? ウェブサイトをフォローしやすいようになっているか?

 

「使う側」の視点で考えて、抜けがないかを確認すれば、もっともっと最適化できるポイントがたくさんあると思うんですよね。最新技術や話題のシステムを取り入れなくとも。

デジタル化やネットの活用は、あくまで手段であって、目的ではないはず。

でも「技術活用」が目的になってしまうと、こういう「ちょっと不便なサービス」になってしまうのかもしれません。「電子版を配信したからそれでいいや」というように。

オンライン化、SNS運用など、デジタル技術の活用を進めている企業はたくさんありますが、DXチャンスは結構足元にたくさん転がっているのだと思います。

「先ず隗より始めよ」という言葉のように、改革はまずは身近なこと、足元のチャンスから、ですね。