『トップガン マーヴェリック』とトム・クルーズに学ぶ現役営業マンであり続ける方法

『トップガン マーヴェリック』とトム・クルーズに学ぶ現役営業マンであり続ける方法

『トップガン マーヴェリック』は「俺たちの映画」

トップガン マーヴェリック』が大人気である。映画自体が世界的大ヒットかつトム・クルーズ主演作として最高レベルのヒット作であるが、僕の周辺でもここ最近会った友人たちが「トップガン、ヤバすぎ」「劇場で見ないともったいない」「俺たちの映画」と口をそろえて言うヤバすぎる映画である。こんな映画は記憶にない。絶対に観たほうがいいという気迫に押されて劇場で鑑賞した。確かに「俺たちの映画」だった。

前作『トップガン』は1986年の作品である。観ていない人や忘れていた人も多いはずだ。にもかかわらず『トップガン マーヴェリック』が36年前の作品の続編であるのにもかかわらず、老若男女から支持を受けているのは、それぞれが「俺たちの、俺の映画」と受け取れる普遍的なメッセージが込められているからだ。

エンタメ映画の続編として圧倒的に正しい作品なので、「トム・クルーズかっこいい!」「戦闘機ヤバい!」「バイクに乗りたい!」と楽しめば良い。ただ、僕のようなアラフィフの営業マン、体力の限界や衰えを感じて今後のことを考えざるをえない人間からみると、実に参考になるところや学びの多い映画であった。

マーヴェリック(トム・クルーズ)はなぜ飛んでいられるのか

▲出典:『トップガン』公式 Twitter

▲出典:『トップガン』公式 Twitter

 

トム・クルーズは40年近くハリウッドのトップに君臨する大スターだ。『トップガン』『ハスラー2』『カクテル』といった出世作から、今も続く『ミッション・インポッシブル・シリーズ』までヒット作連発の空前絶後のスターである(個人的には主演ではなかった『マグノリア』のトム・クルーズが現時点のベスト)。

そんなトムも60歳、還暦である。今でこそ、60歳は現役世代にカテゴライズされるが、一昔前ならおじいさんあつかいされる年齢だ。だが『トップガン マーヴェリック』のトム・クルーズは劇中でもリアルでも完璧に現役だ。最前線で戦い続ける男だ。つまり『トップガン マーヴェリック』と俳優トム・クルーズの生き様を学ぶことで、営業マンとしていつまでも最前線で戦い続けるヒントを得られるのはまちがいない。

営業マンは最前線でバリバリやっていないと鈍る

みなさんの会社には、かつては営業のエースだったけれど営業部長になった途端に凡庸になってしまった人がいないだろうか。あるいは、出世コースを断たれて不貞腐れて最前線に取り残されて腐っている人を見かけないだろうか。

営業職は最前線で営業の仕事をしていないと感覚が鈍ってしまう。なぜなら最前線で人と現場と触れ合っていないと市場の動きやニーズを正確に把握するのが至難だからだ。提案することも企画を思いつくこともできなくなる。管理職になって営業の仕事から距離を置いてしまったり、不貞腐れて営業の仕事に真剣に向き合わなくなれば、あっという間に現場では使い物にならなくなる。退役させられる。

マーヴェリックのトム・クルーズが現役でいるのは、まず「最前線にいる」という強烈な意志があるからだ。「現役」であるから最前線や現場にいられるのではなく、最前線にいるから現役でいられるのだ。

マーヴェリックが最前線にいられる理由

とはいえ『トップガン マーヴェリック』のように、一匹狼としてふるまっていれば営業の最前線に留まっていられるだろうか。答えはノーだ。実力と経験があってこその一匹狼。一匹狼になれば実力と経験がついてくるのではない。

一方、一般的に実力があって結果と自責がある人間は一匹狼であることは許されない。意見や考えを求められるし、リーダーとしての役割が求められるものだ。では、営業マンはどうすれば最前線で現役としていられるだろう? たまたま営業の能力があったり、運がよかったりするなどして結果を残して管理職になってしまったら最前線にいるのは難しくなる(立場的に)。

方法はある。ただ、デスクに座っているのではなく、管理職になっても、部下と同じ業務を受け持つ、部下を通じて最前線に触れる、などやりかたはいくらでもある。できるかぎり最前線の空気に触れにいくことが大事なのではないか。

でも実際問題、管理職になり、涼しいデスクで冷たい飲み物を飲みながらときどきツイッターを眺めつつ仕事をする環境に置かれたら、心と体を削られる最前線に戻りたい/居続けたいと思わないのが普通の人間の思考である。それに抗って、「最前線において現役でいつづけてやる!」という意志を持ち続けることがポイントなのだ。

トップガンのトム・クルーズはそのいい見本だ。僕らも『マーヴェリック』鑑賞後は「今日から俺はやるぞ! 現役でいくぞ!」という気概にあふれている。ただ一日二日と時間が経つにつれ、やっぱトムにはなれない…という現実に打ちのめされてしまう。そのときは『マーヴェリック』を接種して気合を入れ直してみてはどうか。

最前線でいるためには地道な努力が必要である

最前線でいるためには地道な努力が必要である

▲出典:『トップガン』公式 Twitter

 

むろん、最前線で営業マンとして居つづけるためには、努力が必要である。営業のスキルや経験や実績は積み重ねてきたものがある。それに加えて年齢を重ねても最前線にいるためのプラスアルファの努力が求められるのだ。トム・クルーズはトップガンで最前線にいるためにパイロットとしてのスキルと不屈の魂を武器にしている。

劇中ではあまり語られていないが最高のパイロットで在り続けるために、ランニングや筋トレ、アンチエイジング、マッサージ、針灸、フライトシミュレーターなど若い世代と同等かそれ以上のトレーニングを続けているはずである。

僕らには、トム・クルーズのような超人的な努力はできない。だが、若い頃と同様の密度をもって日々の仕事に当たることが、若い世代と戦えるベースになる。トップガンでもあったように、「そろそろ前線を退いたらどうだ? 管理職のポスト空けるぞ」的な誘惑に耐えることも必要になる。同僚からも指摘されるだろうし、心身の衰えから自分の心の声が言ってくることもある。

そこに打ち克つのは難しいけれども、それらをシャットアウトして日々の仕事に向き合うことはできる。『マーヴェリック』でもあったように、周りの声にはとりあえず反骨してみてはどうだろう。反骨した手前、やらなければならなくなるし、意志は強固になる。そうやって自分を追い込むことが現役でい続ける秘訣なのである。

若い世代との付き合い方を考える

現役であり続けるためには自分より若い世代との付き合い方も考える必要がある。現役でいられない…と考え始めるきっかけは能力や体力の衰えとともに、若い世代とのギャップもあるからだ。といっても無理にヤング感を出して若者に近づいても拒否されるだけである。因縁のあるイキってる若手がいたらなおさらだ。

自分たちが若い頃そうだったように、一般的に若者は年寄りが好きではない。いちいちうるさい。説教くさい。昔話ばかり。とはいえ長年営業として働いてきて得られるものは、スキルと実績と経験だけだ。それを武器として戦うしかない。ところがそれらを若者に伝えようとすると若者たちからは、ウザがられてしまう。

なんというジレンマだろう。そして、残念ながら居場所を失ってしまう。管理職として一線引いたポジションで生きていくか、不貞腐れて孤立するかである。だが、先述のとおり営業という仕事は最前線にいてこその仕事である。ではどうすればいいのか。

『マーヴェリック』はこの問題について明確な解決策を示している。トム・クルーズは劇中において最前線で居場所を保ち続けている。神話クラスの実績と経験とスキルを持ちつつだ。トム・クルーズはあえて一匹狼というスタイルをつらぬいている。不貞腐れてドトールでお茶をしているクソサラリーマンとは違う。あえて最前線にいながら周りとつるもうとしない生き方である。

説教もしない。経験も積極的に伝えようとしない。そのためウザがられない。プラス現役では撃墜経験のある唯一のパイロット、という神話があるため一目置かれる。「なんか近づきにくいけれどスゴい人」的なポジションをゲットして最前線/現場に居場所を得ていたのがトップガンのトム・クルーズである。

我々もあえて経験や実績を語らないようにしよう。語りたい気持ちを抑えよう。古来、先輩たちは語りすぎであった。本物の実績と経験があれば、勝手に誰かが語って伝説や神話になっている。他人から語られるような本物の実績と経験を積むように常日頃から努力を重ねる、といった地道な話になってしまうけれども。

実力を語らないことで神話にする

実績や技術は口で語らないようにする。劇中においてトム・クルーズは常に超絶プレイを実際に見せつけることで若者に実力を見せている。語らずに見せる。効果は抜群である。「これが伝説の…」という驚きをもたらしてくれる。

営業マンは技術を語りすぎる傾向がある。書店などで著名伝説の営業マンが執筆したビジネス本がたくさんあるように、語りたがりの目立ちたがりの人種なのだ。トムにならって、《あえて》語らないようにしてみる。最近の若者は賢い。よく世の中や周辺を見ている。SNS世代はサプライズを求めている。スゴイ先輩でもダメ上司でもSNSのネタにしている。

普段は無口で何を考えているのかわからない先輩が、ここぞ、のタイミングで経験と実績に裏打ちされた営業スキルを見せつけたら、若者のぐっと心を掴むだろう。一目置かれて最前線で居場所を確保できるようになる。ピンチのときに反目していた若手とお互いをかばい合って墜落するような激熱展開もあるかもしれない…(ネタバレしそうなのでこのへんでやめておきます)。

不安はある。現場で何も語らない一匹狼スタイルを貫いていて、実力をわかってもらえるか? 伝わっているだろうか? 実力を発揮する機会は訪れるだろうか? という不安だ。それは過度に心配する必要はない。現場にいれば実力を発揮する機会は必ずある。

本当にまじめに仕事に取り組んでいれば、積み重ねてきた経験でピンチにも対応できるし、長年培っていたスキルは裏切らない。大丈夫かな…と不安を覚えるなら今から取り組みかたを変えれば良い。不器用な人はピンチのときにどう対応するか予めまとめておくのも良い。とにかく日頃からあらゆる努力をしておくことだ。努力をしたくないのなら不貞腐れていればよい。普段からサボっていて無駄に時間を浪費してきている人間がトム・クルーズになれるわけがない。憧れる権利もない。

技術で自分を活かそう

技術で自分を活かそう

▲出典:『トップガン』公式 Twitter

 

『トップガン』と『トップガン マーヴェリック』のあいだには30年以上の月日が流れている。その間の技術の進歩はすさまじいものがあった。インターネットやスマートフォンは30年前には浸透していない

。最新テクノロジーを使っている戦闘機は技術の発達の恩恵をもっとも受けているジャンルだろう。第二次大戦の頃の日本軍の戦闘機はレーダーなどの機器がないため、太平洋上で会敵することも、基地へ帰投することも至難の業だったと聞いたことがある。技術の発達した今では考えられない。

トップガンのトム・クルーズは60歳である。おじさんだ。彼が現役でやってこられたのは戦闘機のハイテク化が進んだ時代であったことも大きい。トム・クルーズがいかに超人的な能力をもっていても、ゼロ戦が飛んでいた1940年代に60歳まで戦闘機のパイロットでいるのは不可能である。技術の革新と発達があってこそのトップガンなのだ。

もちろん、劇中では伝説のパイロットとされているので、「自動操縦楽でいいわー」「離着陸も30年前より簡単だわ―」「弾も良く当たるわ―」という描写はない。でもスクリーンの外では、自動化に頼っているトム、効率化したトップガンはまちがいなく存在している。

このように、実績や経験に頼ることなく、最新のテクノロジーを仕事に取り入れていくことが現役でいられる最大の秘訣だろう。営業ならば足で稼ぐ営業時代は終わっている。そもそも、足で稼ぐような体力まかせの仕事のやり方では若手には勝てるはずがない。足で稼ぐどころか足手まといになる。体力任せの現場にベテランの居場所はないのである。

だったら? 積極的にテクノロジーをつかってみよう。体力では勝てないベテランこそテクノロジーにすがるべきなのだ。営業マンだったら、営業支援システムや顧客管理ソフトを導入したり、アポ取りをアウトソースしたり、体力を使わない仕事のやり方はいくらでもできるようになっている。

DXを活用すれば、潜在的なニーズをもった見込み客を見つけて効率的にアプローチもできる。戦闘機のトップガンになれなくても、営業のトップガンにならなれるのだ

トップガンにはなれなくても…

僕らはトップガンのトム・クルーズにはなれない。新鋭戦闘機には乗れない。でも彼のように年齢を重ねたオッサンになっても新鋭戦闘機に乗り続けてやるマインドを持つことはできる。

最前線で働き続けるためには何が大切かといえば、愚直に自分の仕事を追究すること、そしていつまでも現場にいるという信念をもつこと、積極的に新しい技術を活用することだ。それがあれば加齢にともなう体力の衰えを超えられると新旧トップガンを通じてトム・クルーズは教えてくれている。

もちろん、技術と経験は無駄にはならない。撃墜されてピンチに陥っても、たまたまあったかつて乗りこなした旧型の戦闘機を乗りこなして任務を達成する姿を見せることでトムは身をもって僕らに教えてくれている(ネタバレ気味)。以上。