SDGsは、2015年9月の国連サミットで150を超える加盟国首脳の参加のもと、全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことです。(農林水産省Webサイト 「SDGsとは」より)
SDGsという言葉はTVなどで耳にすることも増えましたし、社会にかなり浸透した言葉のようであり、「なんとなくいいこと」のように思えます。しかし、それを詳しく説明したり、様々な社会的活動がSDGsの達成に本当に向かっているものかどうかを判断したりできる人は少ないのではないでしょうか。
さくらインターネットでは、「さくらの学校支援プロジェクト」という活動を行っています。本活動では、2020年に小学校でのプログラミング教育が必須となることを受け、教員研修の一環として、北海道内小中学校に社員を派遣し「プログラミング教育出前授業」を実施しました。SDGsの目標「4 質の高い教育をみんなに」を実現するための取り組みの一つです。
ほくでんグループ(北海道電力株式会社とそのグループ企業の総称)でも、2021年10月から小学校第4学年~第6学年を対象にしたSDGs出前授業を推進しています。本記事では、SDGs出前授業とはどのようなものなのか、実際の授業の様子を取材して見えてきた「学び」について考えたいと思います。
「ほくでんさん」が学校にやってきた!
2022年5月19日、石狩市の石狩八幡小学校に、北海道電力ネットワーク株式会社の永井さんが、SDGs出前授業の講師として訪れました。
この日は、5年生16名のクラスで1コマ45分の授業を実施します。
北海道ではほくでんグループ各社を「ほくでんさん」と親しみを込めて呼びます。小学校の先生や児童たちは「ほくでんさんが来た」と少し緊張したような、うれしいような、日常とはちょっと違うであろう表情で教室に招き入れてくれました。
永井さんが出前授業の講師をするのはこれが初めての経験とのことで、こちらも少々緊張気味。永井さんは事前にほくでんグループ内で講習を受け、「SDGsスクールファシリテーター」に認定された方です。
授業を受ける児童には、「北海道SDGsアクションブック」が配られています。北海道電力株式会社がサステナビリティ教育支援事業を行う会社の協力を得て制作した資料です。授業は永井さんが操作して投影するプレゼン資料に沿って進められ、時折児童とのコミュニケーションをはさみながら理解を深めていきます。
授業を受けた児童たちの反応
自己紹介の後、最初に永井さんが児童たちに投げかけた質問は「みんな、SDGsって知ってる?」。
今回はSDGsについて初めて学ぶ児童を想定した授業に申し込んでいただいていたため、当然ここでは薄い反応を想定されていたと思うのですが、次々に手が挙がり「持続可能な社会を作るための17の目標」「世界共通の目標」「『質の高い教育をみんなに』などの目標がある」などとすでに知っていることを積極的に発表してくれました。
この児童の授業に対する食いつき具合には、講師の永井さんも驚きを隠せない様子。これから話そうとしていることを次々と言われてしまいましたが、落ち着いた様子で児童の回答はみんな正しいことを伝え、SDGsに関するクイズに進んでいきます。
クイズの内容は児童たちにとっては(大人の私たちにとっても)難問ですが、知らないからこそ回答を聞いて「へぇ。そうなんだ!」と興味が持てるような仕掛けになっています。クイズを通して世界の問題を知り、SDGsはそれらを解決していくための目標であるということを再認識していきます。
クイズの後には、SDGsについて説明する動画の視聴を行います。ここで17のゴールひとつひとつについての概要説明が入ります。最初の質問で児童がすでに知っていることもあったのですが、ここまでの情報を整理する意味も含め、説明を繰り返すことで知識の定着を図ります。
そして、身近なところで自分にもできるSDGsの例として、永井さんご自身が仕事で行っている街路樹の剪定(電線に木の枝が触れることを防ぐため)の作業を挙げ、切り落とした木の枝や葉を以前は廃棄していたが、円山動物園の動物のえさになるのではないかと考え、提供したという話を紹介しました。
ここでは知識として知っている、何となく世界で問題が起こっているという少し他人事の目線から、自分事への目線の変化を促します。
この後、児童たちにはアクションブックの最後にある「未来のためのアクションワーク」に、SDGs17の目標から興味のある目標を選んでその理由やわかったことを書く個人ワークに取り組みました。
発表ではたくさんの児童の手が挙がり、積極的に自分の意見を述べる姿が印象的でした。永井さんも、児童たちの熱意に応えようと、限られた時間の中で発表したい児童全員の意見を聞いてコメントを返していらっしゃいました。大人、それも電気の専門家である永井さんから意見に同意してもらったり、ほめてもらったりすることは、児童の心に残る学習経験となることでしょう。
海のある石狩市ならではということなのか、「14 海の豊かさを守ろう」を選んだ児童が多かったのも印象的でした。
SDGs出前授業を通しての「学び」とは
今回授業を受けた学級の担任の先生からもお話を伺ったのですが、児童が思ったよりもSDGsについて「知っている」ということがわかった、こんなに知っているとは思わなかったという感想を持たれたそうです。
また、普段から発表などは活発に行えているクラスではあるが、いつも以上に活発に意見を発表できていたのではないかとのこと。
先生も、出前授業を「見る」側に立つことで、客観的に児童たちの様子を観察でき、今後の授業の中で今回得た知識をどのように関連付けていくかについての構想をめぐらせることができるのではないかと感じました。出前授業が普段の授業だけではなかなかできない先生にとっての「学び」に通じる時間でもあるということです。
講師を務めた永井さんは、SDGsスクールファシリテーターの講習を受けた際、「一方的に教える、知識を伝えるのではなく、考えることを手助けする、あくまでも授業の推進役に徹すること」を求められたと言います。永井さんにとって出前授業は、このようなコミュニケーションの手法を実践を通して学ぶ良い機会となっているのではないでしょうか。
授業が終わってから、もっとこうすればよかったなどの反省点もあるが、次に生かしていきたいとお話しされていました。
SDGsそのものに対する学びはどうでしょうか?
45分間の授業だけでは、深い学び(SDGsに対する建設的な意見やアクションプラン、個々の事例に対する詳細な観察による新たな気付き、SDGsの抱える矛盾や批判的な見方など)に到達するのは難しく、まずは「SDGsとの出会い」という位置付けになると思います。新しい学習課題との出会い方としては、出前授業は児童の興味を引く仕掛けがたくさんあって効果的だと思います。
この先これをきっかけにさらに深い学びに導くのは小学校の先生が主体ですが、学びの過程で専門家の意見が必要になった時に、永井さんのような方が講師として登場し、ご自身の専門分野について直接児童とやり取りするというのが理想的な姿だと筆者は考えます。
その時、児童からの鋭く本質を突く質問に大人たちがどう答えるのかが重要なポイントになるでしょう。大人がこれまで解決することのできなかった課題について児童と共に解決の糸口を見出すことは、お互いにとっての重要な学びにつながると思うのです。
SDGs出前授業のお申し込み・お問い合わせ
ほくでんグループのSDGs出前授業のお申し込み・お問い合わせについては、こちらのサイトをご参照ください。
※2022年度のSDGs出前授業は12月中旬頃まで開催を予定しており、北海道内小学校からの申込を随時受け付けています。
さくらインターネットとSDGs
筆者が所属するさくらインターネットの石狩データセンターは、2022年6月1日より電力を再生可能エネルギー由来へ変更し、実質CO2排出量ゼロを実現することで、SDGsの実現に向けて一歩前進することができました。
さくらインターネット、6月1日より石狩データセンターの電力を再生可能エネルギー由来へ変更し、実質CO2排出量ゼロを実現 | さくらインターネット
この取り組みは、SDGsの目標の中でも「13 気候変動に具体的な対策を」に対応するものです。さくらインターネットグループでは他にもSDGsの実現に向けた取り組みとして、次世代育成支援やDX人材育成支援などの教育分野、働き方やコーポレート・ガバナンス強化、情報セキュリティマネジメントなどにも力を入れています。
さくらインターネットの脱炭素化に向けた取り組みは、「13 気候変動に具体的な対策を」へのより本質的な解決を目指して、これからも地域自治体や電力会社と協力しながら進めてまいります。
執筆
朝倉 恵
2012年さくらインターネット入社。幼稚園教諭からITの世界に足を踏み入れて早1X年。教育とITとの狭間で人のお役に立てる仕事を模索しています。
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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