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海外からは見られないサブスク…DXは国境を越えられるのか

海外からは見られないサブスク…DXは国境を越えられるのか

 

だれがどんなことを思って、なにを書いているんだろうーー。

実はわたし、リアルタイムのニュースや人気VTuberのライブ配信よりも、そのニュースや動画のコメントをチェックするほうが好きなんですよね。

とくにYahoo!ニュースのコメントは活発なうえおもしろいものが多く、コメント数上位の記事に目を通すのが日課です。

が、しかし……

出典:https://www.yahoo.co.jp/

出典:ヤフージャパン 重要なお知らせ

 

残念ながら、ドイツからはアクセスができなくなりました。

いったいなにが……!

アマゾンプライムビデオもネトフリも、ドイツからはアクセスできない

ドイツからアクセスできなくなるという知らせを受けたわたしは、「ヤフー、お前もか……」とがっくり膝をつきました。さながら、腹心に裏切られたカエサルの気持ちです。

海外在住者にとって、アクセス規制はめずらしいものではありません。むしろかなり身近なものです。

 

たとえば、アマゾンプライムビデオ。たくさんの人が加入しているアレです。

2年半前に日本に一時帰国した際、日中暇なのでなにか動画を流そうと加入し、『沈まぬ太陽』『美しい隣人』『Nのために』なんかを見て楽しんでいました。

しかしドイツに戻ってみると、それらの作品がすべて見られない状態に!ツイッターを遡ったら、「やっちまったー!」というつぶやきが残っていました(公式からのリプライの案内に従って無事解約、返金していただきましたが)。

 

 

そうそう、ネトフリでも同じようなことがありました。

たとえ日本語設定をしても、ドイツからアクセスすると自動的にドイツのネトフリに接続されるため、日本のネトフリにある日本の作品を見ることはできません。

ほかにも、バラエティ番組の見逃し配信も基本アクセス規制で見られませんし、東京オリンピックの際に民法がネット配信していたgorin.jpでも、ライブ配信は視聴できませんでした。

いたるところで、海外からのアクセスは規制されているのです。

海外からだと問い合わせすら困難なことも……

この記事で挙げたヤフー、アマゾンプライム、ネトフリに、海外のアクセス規制について問い合わせようと、問い合わせ窓口にアクセスしてみました。

結果、ヤフーでは問い合わせの窓口ですら「ご利用いただけなくなりました」とアクセス規制。さすがに問い合わせ自体ができないってことはない気がするので、わたしの探し方が悪かっただけかもしれませんが……。

ネトフリはというと、「日本語の対応者がいないので英語で問い合わせてください」と表示されました。

出典:https://help.netflix.com/ja

出典:NETFLIX ヘルプセンター

 

日本からネトフリにアクセスすると日本語で案内してもらえるらしいので、やはりドイツのネトフリに問答無用で接続されるようですね。わたし英語は苦手なので、問い合わせる自信がなく、あえなく断念。

そんななか、日本のアマゾンには問い合わせることができました。ネトフリもそうですが、最近の問い合わせって担当者とのリアルタイムチャットなんですね……。めっちゃ便利……。

問い合わせでいくつか確認したところ、海外から視聴できるのは「海外視聴可」であるアマゾンオリジナル作品のみだそうです。

うーん、やっぱり日本の作品をドイツで見るのは無理なのか……。

権利問題や犯罪のリスク、放送倫理などのむずかしさ

DXの先駆けとして、また「持たない消費傾向」の代名詞として、サブスクは現在多くの注目を集めるビジネス手法です。

また、見逃し配信やスポーツの公式ライブ配信など、いままで「どうしたらテレビを見てもらえるか」にこだわっていたテレビ業界でも、「ネットにオープンにしていこう」という動きが強まっています。

……海外からのアクセスを除いて。

いやね、規制する理由はわかりますよ。

海外サーバーを経由するとアクセスが追いにくいので、海外で犯罪に利用されると厄介です。

少し調べてみたところ、「現在、国際的な著作権侵害訴訟を扱う世界共通の裁判所はなく、また、それを直接的に解決することのできる世界的に統一された法もありません」とのこと。*1

国をまたいだ著作権問題は複雑で、解決するハードルが高いことが察せられますね。また、すべての作品を「その国で放送して問題ないか」とチェックをするのはなかなかむずかしいでしょう。

グロシーンの年齢制限、キャラクターの露出の許容範囲、放送可能な政治思想などは各国ちがうので、作品内の服装や発言などを修正しなくてはいけないこともあります。

これらのリスクを踏まえると、「海外からのアクセスを一律禁止する」というのは、トラブル防止のためのひとつの正解ともいえます。だからわたしは、「海外で見れないのはおかしい! アクセスできるようにしろ!」と主張するつもりはありません(可能になればもちろんうれしいですが)。

しかし「海外からのアクセス規制は今後どうなるんだろう?」と気にはなります。

DXの進歩に国際協力は不可欠

以前『漫画村』という海賊版漫画サイトが摘発され有罪になったように、違法な手段で利益を得ようとしたり、法的に整備されていないことを利用して抜け道を探す人は、残念ながら存在します。

たとえ海外からのアクセスを規制したとしても、そういった人たちがすぐにいなくなることはないでしょう。

また、そういった悪用をする気がなくとも、ヒトやモノの移動がさかんになった現在、わたしのように海外に住んでいる人や一時的に海外に滞在する人、海外の作品を愛する人はたくさんいます。

それならば、それぞれの国がルールをすり合わせて指針をつくったうえで、海外からのアクセスを許可し、お互いの利益になるようにしっかりと取り締まっていく……なんていうのもひとつの選択肢だと思うのです。

イメージでいうと、国境検査なしで行き来ができるようにした、シェンゲン協定のような感じですね。

2011年におこなわれたG8のドーヴィルサミットではすでに、知的財産やプライバシー保護のために協力することが盛り込まれていますし、2012年のブダペスト国際サイバー会議でも、国際協力の必要性が議論されています。*2*3

今後サブスクや公式配信などがさらに増えるであろうことも踏まえると、「国際協力によって権利を守りつつオープンにしていこう」という動きが、ますます活発になるのではないでしょうか。

国同士で協定を結び具体的なルールをつくっていけば、もっと多くの人に作品を届けられますし、協力体制を強めることで著作権が守りやすくなりますからね。

そうすれば、海外在住のわたしのような人間が日本の作品を楽しめるだけでなく、いま日本にいるみなさんが、海外のサブスクに登録して最新の作品を楽しめるようになるかもしれません。

 

余談ですが、ドイツで見られるアニメはドイツ語吹き替えが多く、「字幕で見たい」という人がたくさんいます(キャラクターと声は結びつきが強いので、「生の声」への憧れがあるのです)。

そういった需要に応えることで、日本にとってのビジネスチャンスになる可能性もあります。国境を越えて多くの人に作品が愛され、作品に携わった人たちに還元されていったらいいですね。

 

執筆

雨宮 紫苑

ドイツ在住フリーライター。 Yahoo!ニュースや東洋経済オンライン、現代ビジネス、ハフィントンポストなどに寄稿。著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。 最近飼い始めた犬にメロメロ。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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