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SDGs導入の最大の障害「会社上層部」パターン別対処法

SDGs導入の最大の障害「会社上層部」パターン別対処法

 

SDGs(持続可能な開発目標)は、ブームにとどまらない勢いである。ブームではなくもはやスタンダードになりつつある。

正直にいわせてもらうと、僕は一過性のブームで終わると考えていた。少々、見方が甘かったようで恥ずかしい。SDGsは社会全体の取組みとして認知され、今や、ビジネスを持続するうえで必要不可欠なものになっている。実際、SDGsに取組んでいないとビジネスの相手として認められないケースも出始めている。機会損失だ。

そのため、僕の勤めている会社の、古臭い社風を頑なにまもっている上層部でも「そろそろ取り組まないと手遅れになりますよ」という若手と現場の意見を反映して、ようやく昨年からSDGs導入について理解を示し、現在、急ピッチですすめている。

会社上層部は昭和から平成初期の日本経済全体が横一線イケイケの時代を知っているせいか、率先して新しいことに挑戦する能力には欠けているが、世の中に取り残されて損をすることに対しては敏感に反応してくれる。わかりやすく、操縦しやすい人たちで、感謝している。

SDGsに対するスタンスはさまざま

とはいえ会社上層部は一枚岩ではない。彼らには、未来を見通すビジョンや圧倒的管理能力、といったビジネス上で役に立つ個性はない。だが、会社組織の中で目立ちすぎない程度に個性を主張しようとする姿勢だけは立派である。

会議中に「ある意味ではそれだな」「進めても構わないが全面的に賛成したわけじゃない」という、意味はないけど存在を主張する言葉を発するのが彼らの特徴だ。そのため彼らの中においてもSDGsに対するスタンスはさまざまで、それが導入の弊害となってきた。

この文章では恥を忍んでこのような我が上層部の痴態を公開する。なぜか。それは、ウチの会社上層部のSDGsに対するスタンスを反面教師にすることによって、皆さまの会社におけるSDGs導入の一助としていただき、世の中が一ミリでも良い方向へ向かう手伝いができたらという義の気持ちからである。

会社上層部に蔓延る厄介な3つのタイプの人間

会社上層部に蔓延る厄介な3つのタイプの人間

 

僕の会社における上層部のSDGsに対するスタンスを分類すると、3つのタイプに分類できる。➀積極的に導入しようと考える乗り気タイプ ②導入に否定的・効果に懐疑的なタイプ ③何を考えているのかわからないがとにかく何かしらの主張があるワンダータイプ、である。

この中で、厄介度で順序をつけると、③ワンダータイプ>➀積極的乗り気タイプ>②否定的・懐疑的タイプとなる。

この順位付けをみて、「どうして②否定的・懐疑的タイプがくみしやすいのか?」と疑問を持たれるかたも多いだろう。だが、SDGsの導入に限らず、会社で何か新しい取り組みをする際には、このタイプを敵視することはもっともやってはいけないことである。

なぜなら、否定的・懐疑的であるということは、クエスチョンがあるということである。クエスチョンがあるということは、それを消化して納得させることによって、理解に変質して、逆に新たな取り組みへの大きな力になってくれる可能性を秘めている存在であるからだ。めんどうくさいけれど、めんどうくささの向こうにある本質を観るようにしよう。まあ、めんどうくさいことには変わらないが。

「SDGsは最高!」と最初から言う人間は警戒しよう

SDGsは新しい取り組みである。そもそも、昭和からのハラスメントすれすれの働き方、環境への配慮に欠けた事業展開をしてきた、意識もそれほど高くない社風をもつイチ地方中小企業の高齢上層部が初っ端から「SDGsサイコー」つってもろ手をあげて積極的に導入するほうが不自然である。気味が悪い。何か良からぬ謀略の存在を疑ってしまう。なので「SDGsは怪しい」「いかがわしい」「裏に詐欺行為を働く黒幕がいるのではないか」という疑念をもっていただいたほうが自然でやりやすいのである。

皆さんがSDGsをすすめるにあたって、このタイプを味方にするのなら、彼らはなぜ否定的なのか、懐疑的なのかを分析して、懇切丁寧に必要性と意義を説明すると同時に、世の中に置いていかれるという危機感をあおろう。

「SDGsは社業に関係あるのか?」「コストに見合う効果があるのか?」「取り組む意味はあるのか?」という没個性的なあるあるな疑問に対して、「メンドクサイ」と思わずに、老人ホームへボランティアにいくような、労りの気持ちで対応しよう。彼らは良くも悪くも日本のサラリーマンであり、目先の結果に追われて生きてきた悲しい生物なのだ。新しい概念についていけるはずがないのだ。

逆にいえば、社業との関係性、費用対効果、意義や意味について丁寧に説明して、やらないとおいていかれるという危機感に火をつけると、導入に協力的になってくれる頼もしい存在になりうるので、取り扱いに注意して対応してもらいたい。

軽いノリで賛同する人は役に立たない

次に、➀のSDGs導入に積極的乗り気タイプの上層部だ。このタイプは要注意である。僕の勤める会社においては、上層部内において比較的若いバブル世代にこのタイプが多かった。ひとことでいってしまえば、あまり考えない、ノリを重視するタイプだ。乱暴にいってしまえば「おバカさん」になる。

このタイプは流行りものに流される傾向があり、SDGsがどういうものかまったく消化せずに「流行っているし、なんか良くない?」みたいなノリで、導入に積極的になっている。残念ながらカッコたる信念や覚悟を持ち合わせていない。

そのため、短期的あるいは分かりやすい成果があらわれないときには、「もうこれ無理でしょ。ヤメましょう」などと、そのときのイケてないノリで撤退を決めがちなのもこのタイプである。バブル期に「いーよね」「なんか楽しいよね」とアホでもノリに乗るだけで結果を出していた記憶が彼らをそうさせるのだろう。

このタイプをSDGs導入の味方にするときは、まず釘を刺しておくこと。「SDGsを導入してもすぐには会社の利益に直結するとは限りません、ですが、少し長い目でみていただければ必ずや会社にとってプラスになる」と。ここでも危機感を煽るのは忘れないようにする。SDGs導入に乗っからないと結果的に社内的に損をしますよ、と。

➀の積極的な乗り気タイプは良くも悪くも損得でしか物事をみないので、「SDGsをやらないほうが良くね?」という風に流されないように注意しておくだけでよい。基本的には、プラスにもならないがマイナスにもならないタイプである。「SDGs良くね?」という空気感を醸し出すことを重視して味方にしていこう。

理解不能なタイプは安全距離をとって放置しておくが吉である

最後は、③何を考えているのかわからないがとにかく何かしらの主張があるワンダータイプの上層部への対応である。彼らがもっとも厄介である。彼らは、アイデンティティであるこれまで積み上げてきた実績らしきものを守るために、SDGsにかぎらず、新たな取り組みは外敵とみなす。否定する。

そのうえプライドが高いため、SDGsがどういうものなのかわかっている感をアピールする。理解したうえでこれまでのビジネス経験をもとに否定してくる。なぜかというと彼ら自身の立場をまもるためである。そこに会社のため、社会のため、という考えはない。生き残るため。わずかに残っている野性動物の血が彼らをそういう自己防衛行動へ突き進めているのだろうか。

彼らが実際にどういう対応をしてくるのか、これも3パターンに分けられる。「当てはめ」「ごまかし」「現実逃避」の3つである。どれも同様に厄介なので各位対処を間違わないようにしてもらいたい。

「当てはめ」と「ごまかし」

「当てはめ」と「ごまかし」

 

「当てはめ」は「SDGsにすでに取り組んでいる」という妄想から、現時点で会社でおこなわれていることを無理やりに当てはめ、「SDGsなんて既存のものを言い換えているだけだ」と主張するパターンである。たとえば「持続可能な社会のために」というSDGsの概念についても、「これまで人類は何万年も持続してきている。今こうして社会があるというだけですでにSDGsなのだ」というよくわからない理屈を口にする。こうやって既存のもの、実績を守るために新しい取り組み=SDGsを排除するのである。

「ごまかし」は「社会が求めるものなら、やっている感を出しておけばいい」といういい加減な方法である。SDGsならば課題を決定して、そこから目標を決定して、事業や経営に落とし込み、その結果を検証するという流れになる。

目標決定と事業への落とし込みのポーズだけは取るが、その結果が残念ながら出なくても仕方ないという体裁をとって、本気で取り組まずに、やってる感を出すというものである。取り組んだけれどダメでした、という落としどころをあらかじめ定めておいて、社会的に許されようという卑怯な方法である。

ワンダータイプにおける「当てはめ」派と「ごまかし」派には、その行動原理に、先に申し上げた自己防衛がある。それにくわえて、残り少ない職業人生を穏便に過ごしたいだけなのに、なぜSDGsなどという新しいものに社をあげて取り組まなければならないんだ、という怒りとめんどうくささがある。さらにSDGsへの過小評価がそこに加わっている。

「一過性のものである」「これまでにもこういう流れはあったが滅びた」という言葉を会議で聞かされた。彼らはお上が旗を振って普及につとめた(?)「省エネルック」「E電」「プレミアムフライデー」といった過去の遺物とSDGsとを重ねていて驚いた。

まとめ

ワンダータイプの残り一派「現実逃避」派は、少数派である。僕の会社でもたった1人の少数派閥であるが、常務という重職にあるため、厄介度が高かった。彼はSDGsを大国(自主規制)の陰謀であると断じていた。

曰く、「SDGsで日本社会を疲弊させて、経済戦争において打ち負かそうという某国の陰謀である」と。トンデモである。だが、常務からこの意見を否定できるか? と訊かれて、誰も明確に否定できなかったのもまた事実である。残念ながら、「ないことの証明」は難しいのである。常務は「SDGsとSDI(スターウォーズ計画)は似ている」と言っていたが、会議室の面々は完全にスルーしていた。ただしい対応だったと言わざるを得ない。

上層部において③ワンダータイプは総じて厄介であるが、無視、スルー、カラ返事等々のサラリーマンスキルをつかって適当に受け流して➀②タイプで意見をかため、SDGs導入を粛々とすすめていくのが実際的であると考えられる。SDGs導入のためには会社上層部のバックアップが必要不可欠である。この文章を参考に皆さまの会社上層部をうまく誘導してスムーズなSDGs導入がなせることを願ってやまない。以上。

執筆

フミコ・フミオ

大学卒業後、営業職として働き続けるサラリーマン。 食品会社の営業部長サンという表の顔とは別に、20世紀末よりネット上に「日記」を公開して以来約20年間ウェブに文章を吐き続けている裏の顔を持つ。 現在は、はてなブログEverything you’ve ever Dreamedを主戦場に行き恥をさらす
Everything you've ever Dreamed : https://delete-all.hatenablog.com/
2021年12月にKADOKAWAより『神・文章術』を発売。

編集

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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