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出社病にかかった会社上層部に効率化や生産性向上の話をしても無駄なので粛々と結果を出し続けよう

出社病にかかった会社上層部に効率化や生産性向上の話をしても無駄なので粛々と結果を出し続けよう

私が働いている会社では、在宅勤務体制から元の定刻出社体制に戻すことになった

 

先日つぶやいた僕のこのツイートが予想をこえて拡散され、ABEMAでも取り上げられた。おそらく、現在、僕が直面している問題と似たような問題と悩みを抱えている人が多いからだろう。この文章は当該ツイートをきっかけに、これからの僕らの働き方をどう変えていけばいいのかについて考えたものである。

新型コロナ感染拡大が落ち着いて緊急宣言が解除された今、在宅勤務体制から従来の勤務体制に戻す企業が増えている。そして、元の働き方に戻そうとする現状はおおむね歓迎されているようだ。実際、往来や観光地は人であふれ、イベントの観客制限を撤廃されつつある。

世の中が元の姿に戻そうとする動きに伴って、働き方まで元に戻すような方向性は良いものだろうか。時間と場所にとらわれずに働ける環境(テレワーク)を整え、社会全体でそういう働き方が許容されるようになってきたのに、元に戻してしまったら意味がないのではないか。ただでさえ日本企業は海外企業と比較すると、効率化や生産性において問題をかかえていたのだ。これを機に一気に風土を変えてしまうべきだろう。

昨年(2020年)、SNSでよく見かけた「オンライン会議オモシロネタ」や「贅沢勤務あるあるネタ」も、「今はこんな変なことをしているけれど、落ち着いたら元に戻る」という期間限定の自虐意識からだったように思えてならない。

新たな働き方を推進すべきものと、外食や旅行といったテレワークとは相容れない業界や職種のような、変えないほうがいいものを分けて考えることが必要だろう。新型コロナ感染拡大にともなって、何の検討もなく一緒くたに新しい働き方に舵を切ったのと同様に、一緒くたに戻す必要はないのである。

「出社病」という厄介な病がある。

「出社病」という厄介な病がある。

僕も、自分の勤務先の会社について、在宅勤務体制を続けるべきか、出社して働く従来の勤務体制に戻すべきか、どちらがより良い方向性なのか、どちらがより良い選択なのか、かなり真剣に考えた。

というのも昨年から今年の夏まで続いた新型コロナ感染拡大にともなう在宅勤務体制を敷いてから、コロナ前と比較して業績が向上していたからだ。うまくいっているものを変える必要はない。その方向性を、問題を解決しながら加速させていくべきである。一方で、その方向性を阻もうとするものもあった。

みなさんの会社にも出社病に取りつかれている人はいないだろうか。「出社病」とは僕が開発した言葉である。効率化や生産性という面から出社の是非を検証せず、盲目的に出社することを目的とする人たちである。

「在宅勤務では仕事をしている気にならない」といって出社しては、内容のない長時間の会議を開催したり、会社のパソコンでヤフーニュースを閲覧したりする人である。ハンコを押すことに対して価値を見出したり、社内文書のペーパーレス化に反対したりする人たちである。

僕は出社病に罹患した上層部に対して「客先に電話をかけたりメールを送ったりするのは、自宅からでもできますよ」と意見具申したことがある。しかし、それに対する彼らの返事は「自宅からでもできることを会社からすることに意味がある」というスピリチュアルなものに終始したので、追求するのは止めてしまった。

誰にでも思想信教の自由は認められているし、それを侵害してはいけないと思ったのだ。上層部の彼らはもともと善良で真面目な労働者であった。出社病がぜんぶ悪いのである。

「テレワークで業績が伸びたなら…」からの仰天発想

上層部はテレワークで業績がアップしている状況を見て、「テレワークで業績がアップするのなら、元の勤務体制に戻すことでさらにアップする」と主張してきた。ここ数か月、そのクレイジーな主張を続けてきた。

「出社しなくても業績が伸ばせるなら、出社した途端に爆発的に伸ばせる」「おそらく競合他社は即座に出社体制に戻せない。光の速さで元の体制に戻すことによってロケットスタートを決められる」。想像してみてほしい。一年弱、このような主張を聞かされる職場を。令和の地獄である。

だが、どのような複雑怪奇な思考をしていても、現状を突き付けられたら、考えを改めるだろう。出社病にかかっている彼らは、もともと優秀な判断能力が備わっているのだ。正しい選択をしてくれると僕らは信じていた。出社病を甘くみていた。

9月から段階的に在宅勤務体制から従来の勤務体制に戻していき、10月からはほぼ元の勤務体制になった(在宅勤務を希望すれば認められた)。10月中旬に衝撃的な結果が出た。在宅勤務体制を敷いていたときよりも業績が若干落ちたのである。

予想は出来ていた。なぜなら在宅勤務体制のときは、効率化をはかったことによって、生産性がアップしていたのだ。それを元に戻せば数字は元の通りに戻ることは容易に想像できた。

在宅勤務で社員の能力が落ちる??

「出社病」という厄介な病がある。

正直、安堵していた。出社病に罹患しているとはいえ、上層部の方々は、元は善良で真面目な労働者から上層部に昇りつめた人たちである。数字に対しては敏感な人たちである。

だから業績が落ちたという現実を目の当たりにすれば、在宅勤務体制によって効率化と生産性の向上を渋々ながらでも認めるのではないか。社員全員が定刻に出社する従来の働き方に戻すことに疑問を持つのでないか。そういう希望と楽観を持っていた。

甘かった。彼ら会社上層部は「この業績の低下を1年にわたった在宅勤務体制やテレワークによって、社員の能力が落ちたからだ」と受け止めたのだ。従来の体制に戻すことにより社員たちの能力は回復すると彼らは言い始めたのである。メンタル強すぎ。僕は今、出社病にとりつかれた上層部の前で絶望している。

営業における移動は、パチンコで負けたときと同じである。

在宅勤務やテレワークで生産性がアップしたことを、どう出社病の人たちに理解させればいいのだろうか。モンキーでも分かるレベルにかみ砕いてわかりやすく説明しなければならないだろう。

無駄の排除(効率化)による生産性の向上は、営業職がもっともわかりやすい。たとえば、見込み先への移動時間をカットするだけで生産性はアップする。

そのカットされた時間をオンライン面談に充てれば多くの見込み客と接触できる。また、お互いの短い時間を利用しての面談もできる。あまった時間があればオンラインで打ち合わせ。時間の有効利用と場所の制限がなくなることで、効率的に新規開発営業ができるようになった。はっきりいってしまえば、楽になった。

何時間もかけて移動して商談が数分。こういうことは25年の営業マン経験で何度もあった。確かにいくつかの商談は成約までいった。その成功体験が苦痛でしかないはずの長時間の移動を美談に変えていた。

パチンコで負け続けても、一回大勝ちすることでオッケーになってしまうのとよく似ている。移動はただの移動である。無駄である。それがゼロになるだけ、生産性はアップするのだ。

営業部門以外でも現場にタブレットを配布して本部とダイレクトにつなげただけで、伝達事項は漏れなく通知され、売上数値はリアルタイムに観測できるようになり、問題への対処は迅速になされるようになった。本部の人間がいちいち現場に出向いたり、電話をかけたりして確認するのとどちらにスピード感があるのか、比べるまでもなかった。

従来の働き方に戻すこと、実際に対面して仕事をすることへの回帰は、絆とか繋がりへの過剰評価でしかない。それが一時的な業績の低迷で明らかになったのに、上層部は認めようとしないのである。出社病、恐るべしである。

出社病とどう付き合えばいいのか?

「在宅勤務やテレワークを見下しているわけでない」と上層部は言う。価値と可能性を認めているのだと彼らは言う。だが、彼らはそこに従来の日本型経営の良さをプラスすればより大きな成功をおさめられると考えているらしい。

そして彼らの生み出した折衷案が「9時出社で朝礼をして、顔を見合わせて気合をいれたあとは各自自由に自宅へ帰って仕事をしてもいい」という絶望的なアイデアであった。

僕が監督する営業部は、原則在宅勤務である。おかげで業績は維持できている。大きな問題がなければ、このままの体制でいきたいと考えている。残念ながら僕は上層部から呼び出されて、週2~3回ほど出社して会議や打ち合わせに参加している。管理職の仕事と割り切っているが、その時間にオンラインで面談できる見込み客数は減っている。機会損失である。

営業以外の部門だと、本社に呼び出されることによって現場とのコンタクト数が減ることは事業にとってマイナスでしかないはずだ。10月頭、上層部はアフターコロナを控えて決起するために現場責任者を本社に集合させて全体店長会議を開催した。

現場責任者のなかには遠方から来る者もいる。責任者が会議に来るために営業時間を短縮して、そのぶん売上が下がった現場もあった。売上を伸ばすために売上を下げる。本末転倒である。

出社病に罹患した上層部に、出社することによって社員の能力がアップする根拠を尋ねたとき、絶望はより深くなった。実際、上司や先輩の働く姿を間近で見ることで憧憬の念が増し、「ああいうパイセンになりたい」という気持ちが成長をうながす、というのがその根拠であった。そんなアホなことを真顔で言える出社病のみなさんに憧れる人間がいるはずがない現実に目を向けていただきたいものである。

僕にできることは、自分に任された営業部門が出社病に毒されないよう、在宅勤務体制を継続することだけである。それが会社上層部の意に反するものであっても、結果を出し続けて認めさせればいい。結果が明確に数字にあらわれる営業という職種でよかったと思う。

理屈ではない出社病の人たちを、理屈で納得させることは無理である。在宅勤務やテレワークといった、効率化と生産性を向上させる新しい働き方を推し進めて後戻りできない結果をつくることしかない。現状の従来の働き方に戻そうとする動きに対してテレワークのレコンギスタをすすめよう。それしかない。

 

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執筆

フミコ・フミオ

大学卒業後、営業職として働き続けるサラリーマン。 食品会社の営業部長サンという表の顔とは別に、20世紀末よりネット上に「日記」を公開して以来約20年間ウェブに文章を吐き続けている裏の顔を持つ。 現在は、はてなブログEverything you’ve ever Dreamedを主戦場に行き恥をさらす
Everything you've ever Dreamed : https://delete-all.hatenablog.com/
2021年12月にKADOKAWAより『神・文章術』を発売。

編集

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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