内なる遺伝子を呼び覚まし、「DX貴族」のスイッチをONにしよう!

内なる遺伝子を呼び覚まし、「DX貴族」のスイッチをONにしよう!

 

わたしはどこから来たのだろう。

それが知りたくて遺伝子検査を受けてみました。検査項目、実に409。

将来かかりやすい病気や体質は当たり前、今回の目玉は「特典」です。

社会性、協調性、倫理観にはじまり、支配欲、行動持続性、報酬依存性、短期的利益を求める傾向、自己超越性、怒りの表情の認識力、恋愛初期におけるコミュニケーション力、外見的な魅力を求める傾向…、モテ度などというものもある。

 

遺伝子は生命の「設計図」。こんなことまで設計されているのか…。ふむふむ…とページを繰っているうちに、あっという間に時が過ぎていきます。そして、最後の最後まで楽しみに残しておいたのは、他ならぬ祖先遺伝子。

さて、わたしのルーツは? 

紙とは長~いお付き合い

筆者のルーツは「東アジア最大集団」。日本人の35%を占め、日本においても最大集団です。出現時期は約3万5,000年前、場所は中国大陸中部。当時はいわゆる氷河期で、それも最寒期ではないかと考えられています。耐寒性に優れ、生存力と忍耐を兼ね備えた集団。

その集団の一部が、朝鮮半島、中国中央から東北、中国南部を移動して日本にやってきた。弥生人ですね。大陸からの渡来人です。

筆者は時々、知り合いの中国人から、「顔が中国人に似ている」と言われるのですが、その謎が解けました。

 

 

大陸からやってきたのは、人間だけではありません。漢字も、紙もやってきました。

今DXで世界中の目の敵にされている紙は、一体どうやって日本にたどり着いたのでしょう。その前に、そもそも紙って一体、何?

「水中でばらばらにした植物などの繊維を、薄く平らにのばして乾かしたもの」

それが紙です。では、紙に字が書けるのは、なぜか。

和紙を思い浮かべるとわかりやすいのですが、紙の表面は一見滑らかなように見えて、細かい凹凸がたくさんあります。それは繊維が絡み合った時にできるもので、この凹凸の隙間に、鉛筆の芯の粒子やペンのインクが乗る、それが書けるということです。

 

発明されたのは、紀元前2世紀頃の中国。その後、さまざまな改良を経て、西暦105年頃に使いやすい実用的な紙がたくさん作られるようになったと考えられています。

この製紙法が西アジアに伝わったのは、発明からなんと約1,000年後の8世紀。その後、エジプトを経て、地中海沿岸に広がっていき、ヨーロッパにまで伝わったのは12世紀以降といわれています。*1-3

 

図1 紙の伝播  出典:日本製紙連合会「紙のあれこれ>紙の歴史>紙の伝播」 *1-3  https://www.jpa.gr.jp/p-world/p_history/p_history_03.html

図1 紙の伝播 ▲出典:日本製紙連合会「紙のあれこれ:紙の歴史-紙の伝播」

 

しかし、日本に伝わったのは早かった。610年、聖徳太子の時代に、高句麗の僧が墨とともに日本に製紙法を伝えたといわれています。ただし、それ以前から日本でも紙が漉(す)かれていたという説もあります。

やがて、原料や紙を抄く方法に独自の改良を加え、日本オリジナルの「和紙」が誕生しました。*1-4

日本人と紙とは、1,400年余りの長~いお付き合いなのです。

貴族は紙をこう使った!

紙は日本に入ってきてからも長い間、貴重なものでした。なにしろ、1枚1枚、手で漉いていたのですから。ユーザーは、国から貴族へ、やがて武士へ、そして庶民へと長い期間を経て拡がっていきました。

ここでは、個人でも紙が使えるようになった、平安時代にフォーカスしましょう。それでも紙は依然、貴重品。その貴重な紙を、貴族たちは「ここぞ」という時に使っていました。

「ここぞ」ってどんな時でしょう。それは、ずばり、恋愛と結婚です。

 

 

彼らにとっての恋愛も結婚も、今とはずいぶん違います。恋愛の基本は忍び逢い。

夜半、男性がこっそり女性のところに行き、「有明」つまり、夜がしらじらと明ける頃に帰っていく。顔を見られてはならないのです。家に帰った男性は「後朝の文(きぬぎぬのふみ)」と呼ばれる手紙を女性に贈る。これが、「ここぞ」です。

紙の色やテクスチャ―に凝り、お香を焚きしめて、きれいに結んだり、風情のある枝に結び付けたり…。

内容はもっと大切。いい女性に認められるためには、知性と教養、センスのよさを示さなければならない。常套手段は、女性への想いを和歌にすること。中にはわざわざトリッキーな歌を作って、気を引く男性もいる。

 

その手紙を使者に持っていかせるのですが、早ければ早いほど誠意を尽くしたことになります。後朝の文を受け取った女性は返事を書きます。ここは女性の勝負どころですね。いかに洗練された手口で男性を唸らせるか。

こうした「大人の事情」が『枕草子』に綴られています。ちょっと覗いてみましょう。

『枕草子』から見る大人の事情

7月頃、暑くてあちこち開け放って寝ていて、満月の頃にふと目が覚めて外を眺めるのはとても素敵だ。闇夜も素敵。(恋人と別れた後の)明け方ときたら、ことばにできないくらい素晴らしい。女のところから家に帰る途中の男がいた。

早く帰って、朝露が降りる前に後朝の文を書こう。歌を口ずさみながら、帰途を急ぐ。そのうち、気になる場所にさしかかった。

簾をちょっとたくし上げてみると、中には男との逢瀬を終えた女がそのまま寝乱れている。男は、この女のもとから帰って行った男も、今の自分と同じ気分だろうかと思ってみたりする。

しばらく覗き見ているうちに、女がその気配に気づいて目を覚ます。見ると、男がほほえんで座っているではないか。遠慮するような男ではないが、打ち解けているというわけでもない。それなのに寝姿を見られてしまった、と女はいまいましく思う。

「特別な名残りの朝寝ですよね」

男はそう軽口を叩きながら、簾の中に身体半分、入ってきてしまうので、

「朝露より早く帰ってしまった人がじれったいわ」

などと女は応酬する。

そのうちに、枕元に広げっぱなしだった夏扇をとろうとして、男が妙に近くに寄ってくるので、女はドキッとして後ずさりする。

男は扇を手に取って、

「よそよそしいですね」

などと思わせぶりに言ったりしているうちに、明るくなって、人の声がしてきた。

そういえば、朝露より早く後朝の文を書かねばと思っていたことも忘れてしまっていた…と、男は急に気がかりになる。

この女のところから帰っていった先の男は既に後朝の文を書いたのだろう。朝露のついた萩の枝につけた手紙を使者が持ってきているのだが、別の男がいるので、差し出せないでいる。その手紙はお香をたきしめてあって、とてもいい香りがするのは素敵だ。

明るくなってきたので、人目につかないように外に出で、

「俺がさっき出てきた女のところもこんなふうになっているのだろうか」

と想像するのも男にとっては面白いことだろう。

(『枕草子』第43段「七月ばかり、いみじく暑ければ」*2:pp.122-125 を筆者、現代語で要約)

 

う~ん、自由ですね。

ちなみに、この時代は男性が3晩続けて通って来て、その度に後朝の文を送ってきたら、それで「夫婦」です。でも、だからといって、そうした関係が固定的というわけでもありません。

決まった女性がいる男性が他の女性のもとに通うこともあるし、決まった男性のいる女性のもとに別の男性が通ってくることもざらでした。それが、1人や2人ではないことも。

現在の一夫一婦制のように、結婚したらもう相手は自分の所有物だという感覚とは無縁。不倫などというコンセプトはないのです。

そういう状況にあっては、1回、1回が勝負。毎回、全力投球しなければならないし、いい男、いい女をオトして繋ぎとめておくためには、常に自分を磨き続けなければなりません。

「DX貴族」を目指す意味

そんな男女のやりとりが繰り広げられていたのは、今を遡ること1,000年あまり前のこと。1世代を30年として33世代前です。しかし、だからといって、今を生きている私たちとは無関係というわけではありません。

今、遺伝子の研究で最もホットな分野の1つに「エピジェネティクス(後成遺伝学)」と呼ばれるものがあります。*3

DNAにはまるで「スイッチ」のような仕組みがあり、その切り替えによって遺伝子の働きががらりと変化し、体質や能力、病気のなりやすさなどが変わるというのです。それはなぜでしょうか。

NASAなどがおこなった最新の研究で、大変興味深いことが明らかになってきました。国際宇宙ステーションに1年近く滞在している間に、ある宇宙飛行士の体内では、9,000以上のDNAスイッチが変化していたというのです。

このことは、これまで一度も経験したことのない宇宙という環境にも、人体はなんとか適応しようとするということを示唆しています。DNAのスイッチは、そんな未知の環境にもすぐに適応して、生き抜くために備わった仕組みではないかというのです。

それによって、私たち人類は環境の変化を乗り越えて生き延びてこられた。そして、その遺伝子を未来へと引き継いでいこうとしている…。

 

「Digital or Die!(デジタルか、さもなくば死か)」 

デジタル化の推進は国の存亡に関わるとさえいわれています。こうした厳しい時代を生き延びていこうとする私たちは、DNAスイッチをヒントにこれからの方向性を探っていくべきではないでしょうか。平安時代の貴族たちから受け継いだ遺伝子を呼び覚まし、遺伝スイッチを「DX貴族」に切り替える。

「ここぞ」という時だけ紙を使う、そんなライフスタイルはクールです。



 

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