連載『ポーチでオッケー!BOUSAI!』では、常日頃からできて“持ち歩ける防災”をテーマに、ゲストさんにオリジナル防災ポーチを作っていただきます。
作るにあたって、重要なルールがあります。それは“重さを 500gまでに収めること”。
9月のゲストは、宮城県出身の声優 杜野まこさん。
いつも元気で明るい彼女からどんな防災の話が聞けるのか楽しみにしてました。
自然災害について
東京に上京してまもない頃に東日本大震災がおきました。たまたまその前日に嫌なことがあって、激しく揺れてるな〜と思いつつ、どうにでもなってしまえ! と傷心していたんです。
でも、あまりにも長く大きく続くので、TVをつけたら地元が大変なことになっていてハッとしました。
すぐに両親に連絡しても連絡はつかず、今どういう状況なんだろう…みんな大丈夫かな…とTVを見て祈ることしかできませんでした。
大切な家族も友達も思い出もぐちゃぐちゃになってるのに、自分だけ暖かい家の中にいることもすごく苦しくなって…。
両親とは 5日後くらいには連絡がとれたと思うのですが、何か月も連絡がとれてないような感覚に陥っていました。
ようやく電話が繋がったときに「充電なくなるから電話かけてこないでよ! こっちはみんな大丈夫だから!」と。私は私で「凄く心配してたのにそんな言い方ないじゃん!」と、口喧嘩になりました。 現地の状況を考えたら母の言っている事も分かるのですが…あまりにも置かれている状況が違いすぎました。
連絡がとれても会うまで安心出来ず、状況が落ち着いたら仕事も辞めて宮城に戻り、家族の近くでずっと生活していこうと思いました。
ーー祈ることしかできない…それは辛かったですね。状況がわからないのも落ち着かないですよね。その時の宮城県の状況は?
震災当時の宮城県の状況
学校の先生をしている同級生や警察官をやっている友達も、勤務中に津波にのまれてしまいました。自分だけ安全で守られた環境の中で生きているような感覚があって、すごく残酷に思えてしまい、ただ祈るだけはきつかったです。
もともとデビューが仙台の情報番組だったので、中継でお世話になったスタッフさんたちの見たことないような切迫した表情が画面からも伝わってきて、より怖さが伝わりました。
家族に会いに行けたのは、半年くらい経ってからです。町は変わっていて、泥やヘドロ臭くなっていました。地元は山側だったので津波の被害はなかったのですが、家が傾いていて、こんなに地形が歪むんだと私はショックだったのですが、お母さんは「見て〜自動ドアになったのー!」と喜んでいました。その言葉には救われましたね。命があって万々歳だなと。
ーーいろいろ乗り越えたお母さんの明るさには救われますね。生きていることのありがたさも感じます。その後、地震対策などはしましたか?
もともと宮城県は地震が頻繁にあるので、震度5弱くらいまでは慣れてしまっていたんですよ。その感覚はよくないな、とあらためて思いました。
缶詰などの食料やお水は、常に置いておくようにしてます。お母さんから大人用のオムツやペットシートが大活躍だったと聞いたので、備えておいたほうがいいなと思いますし、事務所から支給された防災グッズも置いています。
東京の土地勘がないので、ハザードマップも確認しました。どこに川があるとか、氾濫したらどうなるのかとか、避難所確認もしています。自分の身は自分で守る。何があってからじゃ遅いから情報を得ることが大事。一人だと、なおさら思いました。
ーー防災ポーチには何を入れましたか?
杜野まこさんが防災ポーチに入れたもの
メモ帳は家族の電話番号を書いています。もしスマホの充電が切れて、簡易充電器も無くなったら、覚えていないと公衆電話でもかけられないので。
ボールペンも入れておけば、家をあけるときにメッセージを伝えられるし、避難所とかで子どもたちが飽きたときにお絵描きもできます。
避難生活が長く続いたら同じ下着は気持ち悪いかなと思い、紙ショーツを入れました。自分だけじゃなく、周りの方々にもあげられて便利かなと思います。バイ菌とかも怖いので。
ビニール袋はロールタイプで収納がスマートです。リフレッシュシートは顔メインのものなのですが、体も拭けるし、貴重なお水を使いにくいので入れました。
寒がりなので、冬に備えてホッカイロを入れています。熱が出たとき用に冷感シートも。靴下は被災時にヒールのサンダルを履いていたら、ずっとは疲れるし、足を守ってくれるように入れました。
アロンアルファも入れています。知らなかったのですが、アロンアルファはもともと軍事医療用品で傷の応急処置に使われていたらしいんです。絆創膏だと何枚入れていいかわからないので。マスクは洗って使える物を。
殺菌作用もあるプロポリスやマヌカハニーのアメも入れています。普段、声優のお仕事で喉が乾燥してると体調が悪くなる印象があるので、喉は常に潤しておきたいです。
ロウソクは香りつきで癒し効果と炎の揺らぎにもリラックス効果があります。あえて和ロウソクにしたのは煙が非常に少ないので、周りに不快感を与えずに使えるからです。
スマホライトも使えるけど、万が一長期戦になったときのために LEDライトも入れています。
防災ポーチ作ってみていかがでしたか?
ポーチの大きさやルールの 500gという重さが心配だったけど、意外と入るんだなと思いました。準備するときに100円均一ショップに行ってみたら、こんなに揃うんだということに感動しました。
だから、そんなに予算をかけなくても自分を守るための備蓄はできます。必要・不必要、他の人にも相談してみての新しいアイディアも出て、すごく勉強になりました。考えるきっかけをいただけてありがたかった。なので、この記事を読んでくれた方も作ってみてほしいなと思いました。
ーー周りの方々にもアドバイスをもらって作るところが素晴らしいですね。医療用アロンアルファや和ロウソクは知らなかったので、私もかなり勉強になりました。
最後にお仕事のこと聞かせてください
東日本大震災のとき、どのチャンネルをつけても地震のニュースの中、Eテレだけがいち早く通常放送に戻ったんです。その時にアニメ『はなかっぱ』という作品のアゲルちゃんの声優をしていて、東北の知り合いやファンの方が「アニメを見てるときが唯一地震 のこと忘れて休憩ができて、パワーもらっています」と手紙をいただいたんです。
東京からでも作品を通して私の声でパワーを届けることができるんだと思い、辞めちゃいけないと思って声の仕事をもっともっと広げていきたいと思いました。そして今年でデビューから干支を一周して12周年になりました。
第三弾になるのですが、地元の牛タン焼き専門店「虎仙」さんとコラボをしています。9/25〜10/10予約販売です。外食とかできないので、これを食べて旅行気分も味わってほしいです。
あとは、いつか「まこフェス」もやりたいんです。
今まで出会った素晴らしい方達、美味しいモノ、作品などを集めてエンタメ祭をしたいんです。 こんな面白くてすごい人、モノ、音楽、食、発想があるんだよ!と知ってもらう「きっかけパーソン」になりたい。自然災害で突然人生絶たれた方がいる中、私は生きている分ありがたく自分を大切にして生きたい。そして、共に生きる皆さんに楽しいひと時を、皆さんの心の休憩になるひと時を届けていきたいです。
ーー地元を大切に、仕事でも地元に恩返しをしている姿が輝いていました。東日本大震災のリアルなお話、苦しくもあり、勉強にもなりました。いつ起こるかわからないからこそ、過去の災害を教訓としましょうね。
杜野まこさんプロフィール
サンミュージックプロダクション所属。宮城県出身。タレント・声優として活躍。Eテレ「はなかっぱ」アゲルちゃん役 モバゲー「アイドルマスターシンデレラガールズ」姫川友紀役 ラジオ日本「Happy Voice‼️ from YOKOHAMA」パーソナリティなど、多くの作品に出演。
Twitter: @makomorino
Instagram:makomorino
ブログ:杜野まこオフィシャルブログ
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