さくらインターネットの中の人を知ってもらうため、さくマガではさまざまな社員にインタビューをしています。
今回は、法務部 法務グループに所属し、契約書審査・作成やさくらインターネットの従業員からのさまざまな法務相談を担当する石崎 めぐみに、法務のお仕事や、今後やりたいことについて語ってもらいました。
石崎 めぐみ(いしざき めぐみ)
法務部 法務グループ所属。2017年4月、さくらインターネットに中途で入社。アートやエンターテインメントの著作権に関心がある。
法務のお仕事
ーー現在、石崎さんがおこなっている業務について教えてください。
私がおこなっている業務は、大きくわけて7つあります。
- 契約書審査・作成
- 約款作成
- 法務相談
- 知的財産の出願・管理
- 啓蒙活動
- 開示書類作成
- 株主総会
私にとっても、法務グループ全体でも、業務の大半を占めているのが、契約書審査・作成、約款作成、法務相談です。法務グループのメンバー全員で分担しながら業務をおこなっています。
ーー社員からの法務相談というと、どういった内容でしょうか。
多いのは、新しいことを始めようとするときに、「こういうことをしても法的に問題ないでしょうか」といったご相談ですね。契約書の作成依頼をいただく前に、「そもそも契約書は必要ですか」といったご相談もあります。
ーー「知的財産の出願・管理」について教えてください。
当社の場合、知的財産というとほとんどが商標です。サービスなどを新しくつくったとき、ロゴマークなどを新しくしたときなどに、その商標の調査や出願をします。
出願後、登録されたらそれで終わりではなく、10年間しか権利を保有できず、登録から10年後に更新をする必要があるので、その管理業務もあります。商標を使っている担当部署に「更新しますか?」と確認して、必要であれば更新の手続きをとっています。
新しいサービスをつくるときは絶対に必要になるので、商標に関するご相談は多いですね。なかには出願しないものもありますが、使用前にはすべてチェックをしています。
ーー「啓蒙活動」は具体的にどういったものでしょうか。
「法務かわら版」と称して、”さくっと読めて、ちょっと役に立つ(かもしれない)”をコンセプトにした、法的なトピックを紹介するコラムを社内向けに公開しています。
あと、リモート前提になってからは開催できていないのですが、以前は「法務出張デスク」といって、従業員のみなさんが働いている場所で相談会をしたり、法務的な知識を共有するセミナーをしていました。
法務相談のきっかけになれば
ーー「法務かわら版」はよく拝見しています。はじめたきっかけを教えてください。
リモート前提になったことがきっかけとしては大きいです。従業員のみなさんと会う機会がすごく減ってしまったので、法務のことを忘れられてしまわないだろうかという心配がありました。
席の近くを通って、偶然会話することもなくなってしまったので、なんらかのかたちで社内の方々とつながりたいなと思っていました。「法務かわら版」は、なにか法務に相談するきっかけになったらいいなという想いもあって、はじめたものです。気軽に読めるように、「短くまとめる、長く書かない」ことを意識しています。
ーー「開示書類作成」はどういった業務でしょうか。
「有価証券報告書」や「四半期報告書」を作成しています。経理財務部がメインで担当されているのですが、法務が担当しているパートも少しありまして、ここ3年ぐらいは私がその作成を担当しています。
オンライン株主総会に取り組む
ーー「株主総会」も重要な業務ですよね。
だいたい毎年4月~6月の間、ひとつのプロジェクトとして取り組んでいますが、法務と経理財務、あとは総務の方にも入っていただくコーポレート本部総出の大掛かりなイベントですね。
コロナの影響で形が変わって、リモートで視聴いただけるようネット配信をはじめたり、近年変化の多い業務かなと思います。
以前は会場で株主さまをお迎えしていましたが、ここ2年は、直接会場に来られる株主さまはとても少ないです。配信を見ていただいている方もいると思いますが、かなり性質が変わってきているなと感じますね。
ーー株主総会をリモートにするにあたって大変だったことはありますか。
おそらく、大変だったのは配信を担当した情報システム(総務部)の方々だと思います。これまでに無かったものをゼロから対応されたので。
今後は完全リモートでも株主総会ができるように制度が変わっています。今までは必ず会場を設定する必要があったのですが、どのように対応していくか、当社でも検討していますね。
完全リモートができるとはいえ、会場もほしいという意見もあるかなとも思うのですが、さまざまな分野でデジタル化が進む今、株主さまも配信で見よう、という方が増えていくのかもしれませんね。
「知財だけではダメだ」と気付いたのが転機
ーー前職では知財(知的財産)のお仕事をされていたんですよね。
はい。法務ではなく、知財を扱う会社に新卒で入社しました。商標の調査や、商標法・著作権法などの法制度に関する調査研究をおこなっていました。
というのがメインなのですが、そのほかにもデータ入力やヘルプデスクのような、知財とはあまり関係ない業務もありましたね。小さい会社でしたので、ときには部署を超えてなんでもみんなで頑張るというところでした(笑)。
ーー知財の会社に入られたのは、やはり法律関連のことを学んでいたからなのでしょうか。
はい、大学は法学部でした。私、じつは法律全般をきちんと勉強したかというとそうでもなく、知財にしか興味がなかったんです(笑)。
大卒文系の就職は、総合職としての採用が多いと思いますが、私は知財しかやりたくなかったので、知財を扱う会社に入りました。大学時代からその会社でアルバイトをしていて、そのまま正社員として採用していただいたんです。
ーーその後、なぜさくらインターネットに入社したのでしょうか。
知財にしか興味がなく、知財だけをやりたくて前職に就いていたのですが、「知財が好きだからってそれだけをやっていてもダメなんだ」と気付いたのが、転職のきっかけです。
大学時代はちゃんと勉強しなかったけど、もう少し広く法律を見てみたいなと思い、法務で仕事を探すことにしました。
法務の業務経験はありませんが、法務をやってみたい。業界としては、興味があるのはITやエンターテインメント系だったので、そのあたりに絞って転職活動をしていました。
そのなかのひとつがさくらインターネットだったのですが、面接をいくつか受けた中で一番、なんでしょう……良かったんですよ(笑)。
一番、いろいろお話ができたなと思いました。自分の話もできましたし、さくらインターネットのこともいろいろ知ることができました。「いい面接だったなぁ、いい会社なんだろうなぁ」と感じましたし、縁あってそのまま内定をいただけたので、さくらインターネットに決めました。
ーーなるほど。きちんと話ができることは大事ですよね。ちなみに、法務の方は資格を持っている方が多いんでしょうか。
さくらインターネットでは、法曹資格を持っている人もいますが、少ないです。他社で法務をやっている知り合いには、資格を持っている人も結構いますね。
法務の仕事をしようと思ったら、当然、法律は読まなければならないので、大学で法律の勉強をしてきた人や、大学ではなくても法律系の資格試験の勉強をしてきた人など、どこかのタイミングで法律に触れている人は多いとは思います。でも、必ずしも資格を持っている人ばかりではないです。
ーー石崎さんは知的財産管理技能士1級(コンテンツ)をもっていますよね。すごく難しいと聞いたことがあります。
難しかったですね(笑)。
私が受けたのは結構前なので、いまは変わっているかもしれませんが、知的財産管理技能検定は、2級も結構難しかったです。2級と3級は問題の難易度はそう変わらないのですが、正答率を求められました。じつは、私も2級は1度落ちています(笑)。ボーダーが厳しかったんですよね。
イベントに参加しやすくなった
ーー上司やチームメンバーとのコミュニケーションはいかがですか。
毎朝、全員で予定を共有したり、みんなで話したいトピックなど、情報共有をしています。
以前は週に1回、情報共有をしていたんです。ただ、週に1回だと、その日まで話さずに待ってしまうこともありますよね。それなら、毎朝、短時間でもやったほうがいいのではないか、ということになり、毎朝の朝礼をするようになりました。リモート前提となってからも、メンバー全員と毎朝Zoomで顔を合わせています。
1on1も、マネージャーと1~2週間に1回、部長とは月1回していますね。
それ以外にも、わりと話す機会が多い部署なのではないかと思います。コミュニケーションは活発な気がしますね。
ーーリモート前提の働き方となってからのお話が出ましたが、リモートとなったことで感じているメリットはありますか。
リモートとなったことで私が感じているメリットは、天候に左右されないことです。
単純ですが、暑かったり寒かったりすると通勤するだけでも大変なので、それはすごくいいですよね。たとえば、台風や雪のシーズンでも「電車動くかな」という心配をせずに済むようになりました。
会議室の調整が不要になったのもメリットだと思います。メンバーの予定が空いてさえいれば、いつでもどこでも話せるというのは、すごく便利ですよね。
私は家族もリモートワークなので、会議の時間がかぶると家の中の会議室問題が発生してしまうこともありますが(笑)、協力し合って対応しています。
あと、私にとってはいちばんうれしいと感じているのは、イベントやセミナーなどに気軽に参加できるようになったことです。
平日の夕方などにオンラインのイベント・セミナーがあったら、その開催時間さえ休みをとれれば参加できるんですよね。なので、時間有休はよく利用しています。
コロナ禍の前なら、イベント会場まで足を運ぶ必要があって、出社もしていましたから、会社から会場までの移動時間を含めて参加を考えないといけませんでした。
でもいまは、イベントもオンラインが多いですし、私は家にいるので、イベントが開催されている時間さえ確保できれば参加できます。参加するハードルも下がったなと感じますね。
ーーなるほど。たしかに、以前より気軽に参加しやすくなったかもしれませんね。逆に、リモート前提となったことでデメリットと感じていることはありますか。
困っているのは、気軽に相談していただける機会がなくなってしまったことです。
以前なら、私の席に立ち寄って話をしてくれていた人がいましたが、全然そういったことができなくなってしまいました。
そういった人が、これまでのように、気軽にSlack(チャットツール)で連絡をくれるかというと、別にそうでもないんですよね。わざわざ相談、というほどでもないけれど……みたいな、ゆるめの相談がなくなってしまいました。リモート前提だからといって、とくに心配ごとなどが消滅するわけではないと思うので、それを抱えたまま仕事をしているのかもしれません。
少しでもこういった状況を改善するために、リモート前提となってから、何でも気軽に相談してもらえるよう、専用のSlackチャンネル(グループ)を開設しました。
ただ、それで完全に代替できているかというと、おそらくそうでもないんだろうな、と思います。以前のようなコミュニケーションをとるにはどうしたらいいんだろう、とずっと考えていますね。
気軽に相談できる、頼れる仲間として
ーーさくマガのコンセプトは「やりたいことをできるに変える」ですが、石崎さんがやりたいことと、そのために取り組んでいることがあれば教えてください。
先ほどもお話した「法務かわら版」は、自分から上司にやりたいと言ってはじめたことなんです。
法務は、「ちょっと怖い」「めんどくさい」と思われがちな気がするんです。従業員のみなさんは、仕事をするうえでスピーディーに進めたいと思うのですが、「法務審査を受けなければならない、時間を取られてしまう」とか、「法務に説明しないといけなくて難しい」、「法務がよくわからないことを言ってきた」とか(笑)、いろいろあると思うんですよね。
あと、法務のやっていることは、予防的な側面が大きいので、あまり効果を実感することがないんですよね。「訴訟にならなかった」のがいいことなのですが、訴訟にならなかったらそれがわかりにくいじゃないですか。
そういった側面があって、効果を感じにくいわりに、手間だし難しい……と感じられている方が多いのではないかと思います。これは、さくらインターネットに限らず、さまざまな会社でもあることではないでしょうか。そういう風に感じられてしまうと、なかなかご相談も気軽にしてもらえるようにならないのではないかな、と思います。
なので、「もっとみなさんに近いところにいて、いつでもウェルカムなんですよ」というメッセージを見せていきたい。もっと積極的に頼られたいですし、怖いとか難しいとか思わないで欲しいな、という想いがあります。
それが、「法務かわら版」に取り組むきっかけになりました。従業員のみなさんが困ったときに、気軽に相談できる、頼れる法務だと思ってもらえたらいいな、と思いますね。
ーーたしかに、法務に確認するとき、ちょっと緊張感はあるかもしれないですね。法務の方の立場だと、「これはダメですよ」ときちんと言わなければいけないという側面もありますし。
そうですね。法務に相談するために、「きちんと説明しなきゃ」と思ってくださって、がんばって準備してきてくれる人もいます。それはそれでとてもありがたいのですが、もう少し気楽に相談してくれて大丈夫です。
それから、法務は「ダメです」と言わなければならないこともあるのですが、ただ「ダメです」と言って終わりではなく、こうすればできそうだとか、こんな形ではどうだろうとか、最大限の提案ができるようにいつも考えています。
相談を躊躇(ちゅうちょ)されてしまうのはちょっと寂しいですね。面倒な相手や怖い相手ではなく、協力してよりよくしていける仲間だと感じてもらえるようになりたいです。
ーー石崎さんのように言っていただけると相談しやすくなりますね。そのほかに、熱量をもって取り組んでいることはありますか。
知財にしか興味がなかったとお話しましたが、知財の中でも、著作権には今もずっと強く関心を持っています。
普段の業務で著作権を扱うことは多くはないのですが、勉強は続けたいと思っていて、先ほど時間有休をとって参加するというお話をしたイベントもだいたいが著作権のセミナーだったりします。もう10年ぐらいは学び続けていますし、変化の多い分野ですので、これからも続けていきたいと思っています。
ーー石崎さん、ありがとうございました!
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