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東京工業大学でデザイン思考を学び、ユーザー中心のより良い製品を作る

東京工業大学でデザイン思考を学び

はじめに

こんにちは、さくらインターネットUXデザインチームに所属しているイです。

2020年10月から2021年2月まで、さくらインターネットは東京工業大学のエンジニアリングデザインプロジェクト(EDP)にパートナー企業として参加しました。EDPではユーザーの課題を発見するプロセスを体験しました。

今回の記事では、ユーザー中心のより良い製品を作れると感じたステップの一部をご紹介します。

EDPとは

EDP(=東京工業大学エンジニアリングデザインプロジェクト)は、デザイン思考とエンジニアリング思考を用いた課題解決型のプロジェクトです。東工大生・武蔵野美術大生・昭和女子大生・社会人の履修生からなる多様なチームが、イノベーション創出を実践します。

参加動機

社内で「ユーザーのニーズを探る方法を学べる」機会があると聞き、参加することになりました。 私は前職で、新規プロジェクトの製品開発に携わっていたことを思い出しました。当時、膨大なお金をかけて技術の開発したにも関わらず、プロモーションしても反応がなく、せっかく良い技術があったのに売れなかった経験がありました。

製品を作るたびに失敗し、なぜ売れないかがわかりませんでした。最後にユーザーに「必要ない」と言われ、リリース後にユーザーのニーズにマッチしていないことに気付きました。

私ははユーザーのニーズを満たせるプロダクトを作りたいので、デザイン思考はとても良いプロセスだと思います。EDPでデザイン思考のプロセスを4ヶ月間、近くで見ることができ、デザイン思考の本質について学べると思い、メンターとして参加しました。

デザイン思考のプロセスについて

デザイン思考のプロセスでは5つのステップを繰り返します。

  • 共感
  • 課題定義
  • 創造(アイデアを発想)
  • プロトタイプ作成
  • テスト

 

デザイン思考のプロセス

この5つのプロセスを繰り返すことで、質の高いプロダクトを目指します。

メンターとして取り組んだこと

EDPのメンターは、プロジェクトのプロセスに直接参加はしません。役割は学生チームをサポートすることです。悩みを聞いたり、作ったものに対してフィードバックしたり、インタビューのアレンジをしました。

メンター役としてチームの活動に参加、より客観的な立場でチームの状況や進み方などを見てフィードバックします。プロジェクトを俯瞰的により広い視点で見ることで、デザイン思考において気をつけるポイント、大事な行動などがわかってきました。今後のプロジェクトに活かせる貴重な学びになります。

課題制作の中で学んだこと

学生チームが4ヶ月の間デザイン思考のプロセスを使って、課題制作に取り組みます。

  • ユーザーに「共感」するために調査する
  • 調査から得た情報で「課題定義」する
  • 問題解決になるアイディアを「創造」する
  • アイデアの「プロトタイプ」を作る
  • プロトタイプでユーザーに「テスト」してもらい、アイディアを検証する

これら5つのステップを繰り返し、プロダクトを作ることを目指して頑張りました。

このステップの中で学んだこととして、「共感するための調査」と「プロトタイプ」と「ユーザーテスト」をご紹介します。

準備段階:テーマ選び

テーマ選び

取り組むテーマは、各パートナー企業が考えて持ち込みました。 今年のテーマは、さくらインターネットが採用され、「24時間稼働するデータセンターのオペレーターにとっての健やかな『勤務生活』をデザインせよ」になりました。

お客さまのサーバーを止めず正常に動かし続けるため、データセンターの中に置かれるサーバーを管理する「オペレーター」という人たちは、朝夜、または朝昼夜のシフト制で24時間365日お客さまのサーバーを守っています。お客さまの大事なサーバーを守り続けるオペレーターさんの勤務生活をより健やかにデザインできればうれしいな、という想いでこのテーマにしました。

ユーザーのことを理解する

デザイン思考の第一歩は共感です。共感は、ユーザーを理解し、彼らの行動、考え、感情などを知ることです。目的は「誰のためにデザインするのか」、「ユーザーが直面している課題を理解する」ことです。

もしユーザーのことを理解せずにプロダクトを作ると、ユーザーの課題を解決できない商品を作ってしまうかもしれません。なぜなら、私たちの誤解、思い込みのアイデアはユーザーのニーズに当てはまらないかもしれないからです。

ユーザーを理解すればするほど、ユーザーの実際のニーズを満たす可能性が高くなります。ニーズを満たすソリューションを作成するには、ユーザーが見たこと、聞いたこと、考えや体験したことを深く理解することがとても大事です。

共感する方法はたくさんあり、その共通の目標は「ユーザーを理解する」ことです。

共感の方法の例:

  • 観察
  • ユーザーインタビュー
  • ロール・プレイング(イマージョン)

オペレーターに共感するためにチームでやったこと

今回、私がメンターしたチーム「熱いトマト」は、プロダクトのアイデアの発想をする前にユーザーを理解することから始めました。コロナ禍の時代に、それをするのは簡単ではありません。コロナの感染を抑えるため、会社の方針でデータセンターは外部からの見学禁止となり、対面の面会もしないようにしています。なので、相手を理解する方法を変更しなければなりません。

チームはテレビ会議でユーザーにインタビューし、オペレーターさんの生活、仕事の内容や環境などを聞きました。テレビ会議で東京だけでなく、他の拠点に勤めるオペレーターさんと話せました。

オペレーターさんに会ってインタビューができないため、テレビ会議でインタビューをおこないました。

オペレーターさんに会ってインタビューができないため、テレビ会議でインタビューをおこないました。

 

そして、データセンターの見学はコロナで禁止されたので、直接オペレーターさんの仕事環境を見ることができませんでした。その代わり、ネットの動画や記事をみて、わからない箇所があれば、インタビューでオペレーターさんに確認し、説明してもらいました。

よりデータセンターに近い環境を知るため、チームは学校のサーバー室で体験をしてみました。サーバー室でサーバーのファンの音を知れました。

東工大のスーパーコンピューターTSUBAMEのサーバールームを見学するチームメンバー (写真の引用元-2020年度EDP「WINNIN」Team熱いトマト)

東工大のスーパーコンピューターTSUBAMEのサーバールームを見学するチームメンバー
(▲出典:2020年度EDP「WINNIN」Team熱いトマト)

 

調査を何回も繰り返し、自分の認識をアップデートします。聞けば聞くほど、オペレーターさんについての解像度が高くなり、自分の思い込みを排除することができました。より広い視点を得られました。

プロトタイプセクションで検証する

共感、定義の段階でユーザーを理解し、解決案を考えました。その後、仮説を検証するためのプロトタイプを作ります。目的は、「プロトタイプで考えた解決案のアイデアは、ユーザーに気に入られたかどうか」と、「私たちが共感、 定義の2つのステップで発見したユーザーの洞察が正しいかどうか」の確認です。短時間で安い方法でプロトタイプを作り、次のテストの段階でプロトタイプをユーザーに見せたり、試してもらったりします。ユーザーに感想、フィードバックを教えてもらいます。

開発の初期段階で早くプロトタイプを作成すると、素早く学べ、より多くの異なる可能性を探せます。プロトタイプを作成するときは、単一の仮説でテストすると、より正確になります。解決案を考えた後に仮説を検証せず、すぐお金や時間を投資し、プロダクトの開発が進むとユーザーのニーズを満たせないプロダクトを作ってしまう可能性があります。なのでシンプルなプロトタイプでテストして、時間とお金の投資が無駄になるリスクをを防ぎ、より多くの異なるアイデアを素早くテストできるようにします。

プロトタイプの方法の例:

  • 絵を書く
  • ラフなプロトタイプ
  • ロール・プレイング

チームはアイデアを検証するために、さまざまな方法でプロトタイプを作りました。例えば、紙でアイデアの絵を書き、段ボールでプロトタイプを作り、説明のビデオを作成しました。プロジェクトの初期でさまざまなアイデアを発想し、考えた仮説を簡単なプロトタイプにして検証しました。もし間違えても落ち込まずに別のアイデアを考え、新しいプロトタイプを作りました。

さまざまな種類のプロトタイプを作りました。(発表スライドより抜粋)

さまざまな種類のプロトタイプを作りました。(発表スライドより抜粋)

 

ユーザーテストでユーザーにプロトタイプを見てもらう

プロトタイプをユーザーに提示し、ユーザーに実際にプロトタイプを見てもらい、フィードバックを得るためユーザーにインタビューします。目的はテストを通じて仮説を検証し、ユーザーからより多くの洞察をもらうことです。ユーザーテストを通じて解決案を最適化します。

ユーザーテストでユーザーにプロトタイプを見てもらう

チームは自分の仮説を検証するため、考えたアイデアのプロタイプを作り、ユーザーにインタビューしました。コロナ禍で直接オペレーターさんに会えないので、作ったプロタイプを郵便で送る、または、動画を作成し、インタビューで動画を見てもらいました。オペレーターさんにインタビューし、率直な意見を教えてもらうことで、ユーザーの考えを理解できました。そして、仮説が正しいかどうかが早い段階でわかりました。

あるテストでは、インタビューしたユーザーから「アイデアは面白いですが、実際は使わないですね」というコメントをもらいました。解決案がユーザーにとって必要でないことがわかり、より早く別の方向に向くことできました。

最終プロダクト

チームはデザイン思考のプロセスを繰り返し、最終プロダクト「WINNIN」を作成しました。

写真の引用元-2020年度EDP「WINNIN」Team熱いトマト

▲出典:2020年度EDP「WINNIN」Team熱いトマト

 

重たいサーバーをラックへ取り付けるために使う、電動昇降機(リフター)という機器があります。データセンターでは、リフターはサーバールームから離れた場所に保管されており、リフターを取りに行くのは時間がかかるそうです。そのため、オペレーターさんはサーバーを設置する時はあまりリフターを利用せず、直接手でサーバーを持ち上げ、設置することが多いです。ただし、サーバーの重さは10kg〜30kgであり、姿勢を間違えると怪我をする問題があります。

この問題を解決するために、運搬用の台車とリフターを連結させた製品であるWINNINを作りました。リフターを取りに行く手間を省き、狭いサーバールームで操作しやすいデザインにしました。

2020年度EDP「WINNIN」Team熱いトマト

▲出典:2020年度EDP「WINNIN」Team熱いトマト

 

ユーザーテスト後のフィードバックで、オペレーターさんからこの製品に興味を示してもらい「作業をより速く、より簡単にできそうだ」というコメントをいただきました。

ユーザーテスト後のフィードバック

▲出典:2020年度EDP「WINNIN」Team熱いトマト

 

以下の記事でプロダクトの詳細が記載されています。ぜひ、ご覧いただければと思います。
2020年度EDP「WINNIN」Team熱いトマト

結論

デザイン思考の内、3つのステップと、チームが新製品を開発する際にこれらのステップをどのように実践したかについてご紹介しました。 EDPでデザイン思考のプロセスを使ってユーザーに耳を傾けることで、オペレーターさんの勤務生活をより健やかにするプロダクトを作れたと思います。この記事を読んでEDPにご興味がありましたら、ぜひこちらのEDPのサイトを見てみてください。

 

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執筆

イ ユンピ

2018年8月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。企画推進部に所属。UXデザイナーとして勤めています。ユーザーの生活をよりよくするプロダクトを作ることを目指しています。

編集

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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