2015年にデジタルハリウッド株式会社が開校した、エンジニア起業家養成スクール「G’s ACADEMY(ジーズアカデミー)」。「セカイを変えるGEEKを養成する」をテーマに、これまでに54社が起業、66億円の資金調達をするなど、多くのエンジニアと起業家を輩出してきました。さくらインターネットも「オープンクリエーションプロジェクト」で学生の支援をしています。
今回はそのG’s ACADEMYの創設者、児玉浩康さんにお話をうかがいました。
児玉 浩康(こだま ひろやす)さん プロフィール
G’s ACADEMY Founder、デジタルハリウッド株式会社 執行役員。25年間で11ブランドの新学校設立を総合プロデュース。デジタルハリウッドスクール総括後の2016年6月にG’s ACADEMY TOKYO BASEを設立。卒業生専用スタートアップ支援機関「DROCKETS」を創立し、創業指導や支援などをおこなう。年間で300本の創業企画メンタリングを実施中。
ある原体験がきっかけで、学校作りをはじめた
ーーはじめにG’s ACADEMYの取り組みについて教えてください。
G’s ACADEMYは、エンジニア起業家養成スクールです。
卒業生による起業数が54社、トータルで66億円くらいの資金調達に至っています。最近では「UNIT_」というライセンス型の小さなG’s ACADEMYを全国に展開しはじめまして、2020年秋に札幌市で開校しました。今年2021年の7月には行政から誘致いただき、山口市でも開校しました。
「社内のDX人材を育成したい」と、企業からのお声がけもあります。三菱商事さんやヤマトグループさんなどの社内教育プログラムの支援もしています。
ーーDX人材の育成は、企業にとって大きなテーマですね。児玉さんはデジタルハリウッド株式会社 執行役員でもありますが、普段の業務はどのようなことをされているのでしょうか?
私は現在G’s ACADEMY専任ですが、起業家たちの支援もしています。「D ROCKETS」というG’s ACADEMY卒業生向けのインキュベート機関を設けてまして、そちらでも活動しています。
デジタルハリウッドに入社する前から、学校作りをしていました。学校作りに関してはプロであると自負しています。
ーー長年、学校作りに携わっていますが、どうして学校を作りたいと思ったのでしょうか?
ある原体験がきっかけです。
私は大学を辞めてから、予備校の先生として数学を教えていました。そのときに自分の生徒から「中学校の先生の授業がめっちゃわかりづらい」と相談を受けて、どのくらいわかりづらいのかと思って、中学校まで見に行ったんですね。そこで授業を見てびっくりしたんですよ。あまりにわかりづらくて。
私は当時、新卒2年目くらいでしたが、自分のほうがよっぽど工夫していると思いました。
公教育には競争がありません。なので、どんなカリキュラムや授業を提供しようが、あまり関係ないわけです。私たちは民間教育なので、競争の中にさらされて質がどんどん上がっていきます。そうでないと生き残れませんから。
日本には、こうした仕組みが大事なんじゃないか、と思ったのが原体験です。そこから学校作りをはじめようと考えました。
自分のチカラでセカイを変えようと行動する人を支援する
ーーどのようなミッションを持ってG’s ACADEMYを運営しているのでしょうか?
私たちは「自分のチカラでセカイを変えようと行動する人を支援する」をミッションとして、6年前から活動しています。
もともと私はデジタルハリウッド大学の社会人スクールを統括してました。社会人スクールをやっていて、課題に感じていたことがあります。社会人の方々は、授業料を払って入学して、最終的に就職する形で回収しようとするわけです。
学校も就職のサポートをします。ITに関しては、その就職先の9割9分が受託業なんですよね。求人がいっぱいあるので、学校としては受託業を紹介すれば、就職率が上がります。
ところが、そういう受託業が何をしているかというと、古い産業の下請けをしているわけです。古い産業自体が大きく右肩下がりの中、古い産業の下請けに人を出していく……。それだけをやっていくことに意味があるだろうか? と思いました。
ちょうどそのころに、UberやAirbnbなどのサービスが生まれていました。それを見て、受託業ではなく、自分たちで事業をやっていく人たちを育てる必要があると考えたんです。
自分たちで雇用する側の人間を育てていく教育ができないか。そう考えて作ったのがG’s ACADEMYです。
ーーそのような想いで作ったG’s ACADEMYですが、通っているのはどのような方が多いのでしょうか?
大きい会社に勤めていて、ビジネスマンとして良いキャリアを積んできている方が多いです。そういう方々が、このまま大きい会社のサラリーマンとして会社にぶら下がっていていいのかな? と考えて通われているケースが多いです。
内訳としては、だいたい半分くらいが起業志望ですね。20-30%が就職・転職希望です。もう20-30%が社内のDXをするため、社内で新規事業を提案するために来たという方です。
こうした社内で何かするために通う方が増えたのは、ここ2、3年の大きな変化だと思います。
卒業生には注目のスタートアップ企業も
ーー卒業後の進路に起業を目指す方が半分くらいいるそうですが、成功されている会社をご紹介ください。
建設現場と職人をつなぐアプリを運営している「助太刀」や、宇宙用作業ロボットを開発している「GITAI」、オンラインデータを活用した企業調査サービスをおこなう「アラームボックス」などがあります。
このほかにも紹介しきれないくらい、たくさんの企業が生まれています。
ーー多くの起業家が生まれているということですが、G’s ACADEMY独自の強みはなんでしょうか?
私たちは、プロダクトを作って事業化を目的としているスクールです。これが一番の強みです。プログラミングを覚えるためだけのスクールではありません。
フロントエンド、サーバーサイドをしっかり学んで、自身の作りたいプロダクトの特性に合わせてプログラミング言語を選んでもらいます。
そして実際にプログラミングを駆使して、自分の手でプロダクトを創り、世界中に公開するところまでやりきって卒業する。それがG’s ACADEMYの大きな特徴です。
さくらインターネットとの取り組みについて
ーーさくらインターネットと一緒に「オープンクリエーションプロジェクト」をされていますが、このプロジェクトについて教えてください。
「オープンクリエーションプロジェクト」は、さくらインターネットさんより、ドメインとサーバー環境を1年間無償で提供いただき、学生たちのオンラインセルフブランディングをサポートするとともに、クリエイターの成長を支援していくプロジェクトです。
このプロジェクトがスタートしたのは2015年です。当時は校舎もない状況でした。
実際にプロダクトを作り、公開するには当然サーバーが必要になります。それが学生の負担なくできるのは非常に画期的ですし、そのおかげで世に出れたプロダクトやスタートアップが多かったと思います。
G’s ACADEMY初期のころにサポートしてくれたのは、さくらインターネットさんだけでした。おかげでプロダクトを作って世に出して他人に使ってもらうプロセスを学生が体験できますし、エンジニアとしてサーバーの本来持っている意味合いを理解する上でもとてもよいカリキュラムができました。
サーバーはデジタルハリウッド大学にもご提供いただいておりますが、さくらインターネットさんのエンジニアフレンドリーな世界観のおかげで、学生に継続的な学びとプロダクトをどんどん出して発展させる機会を提供できていることにとても感謝しています。
児玉 浩康さんの「やりたいこと」
ーーさくマガのコンセプトが「やりたいことをできるに変える」なのですが、今後やりたいと思っていることを教えてください。
スタートアップの多様性に貢献したいと思っています。私たちは、すでに起業している人たちやスケールしたい人たちを支援しているのではありません。自分がいいと思うことを世に出したいと思ってる方へ支援をしています。現在中心となっているVC(ベンチャーキャピタル)から資金調達をして将来IPOに向けてスケールしていく、という形に限らず、日本に合った独立の方法を確立したいです。
それはもしかすると、シリコンバレーのスタートアップや中国のスタートアップなどとは違う絵面なのかもしれません。形にはこだわらず、一人ひとりが輝いて自分の力でたくましく生きていく働き方や道筋を、G’s ACADEMYから生み出し発信していきたいと思っています。
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執筆
鎌田 真依
2015年6月にさくらインターネットに中途入社。 ES(人事)部所属。 これまで、スタートアップ支援や学生支援などのブランディング活動に従事し、現在は新卒採用を担う。
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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