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インターネットVS専門家 ネットで拾えるもの、拾えないもの

インターネットVS専門家 ネットで拾えるもの、拾えないもの

インターネットが便利であることは、いまさらあらためて言う必要もありません。そして便利になりすぎたあまり「なくてはならない存在」となり、行きつく先は「インターネット依存症」という、本末転倒な現象すら起きています。

私たち人間はリアルな世界を生きています。しかし、ネット上の世界との住み分けができないと、使う側の私たちが使われる側のインターネットに喰われてしまう場合も考えられます。

そんな日常に警鐘を鳴らすべく生まれた取り組みが「デジタルデトックス」です。デジタルデバイスから強制的に切り離すことで、脳や目の疲労回復、SNS疲れからの解放、睡眠不足の解消などを目的としておこないます。

とはいえ、

「デジタルデトックスってどうやるんだろう?」

といいながらスマホで検索するわけで、デジタルを完全放棄するのは私にとって難しいことかもしれません。

先日、この「デジタルデトックス」に挑戦しようと、都心から埼玉県・秩父市へ向かう西武電鉄に乗り込みました。ちょうどその日は晴天で、車窓を流れる美しい桜並木に、目も心もそして脳までもがほっこりと癒されました。

その途中、突如現れた自衛隊の施設に目が留まり、ふとした疑問が湧き起こりました。眼前に広がるのは、埼玉県狭山市にある航空自衛隊入間基地。

――そういえば、航空自衛隊の施設のことを「基地」と呼ぶが、陸上自衛隊の場合は「駐屯地」と呼んでいる。なぜだろう。

こうなったら調べずにはいられません。せめて電車に乗っている間はデジタルデトックスに専念しよう、と強い気持ちで池袋駅を出発したのは30分前。インターネット依存症ではないはずの私ですが、ものの30分でこのチャレンジは失敗に終わりました。

ちなみにネット検索したところ、陸上自衛隊の施設を「駐屯地」といい、海上自衛隊と航空自衛隊の施設を「基地」というのだそう。そして駐屯地には部隊(軍隊)が駐屯しており、いわば移設可能な施設という意味。逆に、基地には指揮機能があるほか滑走路や港など基点となる場所のため、移設不可能な施設だそうです。ネットって便利。

こうなると、

「入間基地から目と鼻の先にある飯能駅は、なぜスイッチバック構造でできているのだろう?」

など、電車に揺られてぼーっとしているだけでも、次から次へと疑問が浮かんできます。

つまり私が電車移動でデジタルデトックスを実践するには、「寝る」以外に方法はないのかもしれません。

インターネットVS専門家

便利で使い勝手が良く、世界中どこでも接続できて当たり前――。

そんな「空気のような存在」となりつつあるインターネット環境に、日々お世話になっていることは否定しません。

しかし、時には「空気のような存在」だからこそ惑わされることもあるのです。

私の主たる職業は社労士です。労働保険・社会保険諸法令に基づいて仕事をしていますが、法律に沿った判断や解釈が原則であり、

「●●さんがこう言っていた」

「××会社はこうだった」

というような「噂レベル」の内容は、業務を進めるうえで必要ありません。

さらに字面で判断するだけではなく、根拠となる法律や通達、判例などもあわせてインプットします。

知識を養い育てることは士業にとって当然の義務。目まぐるしく変化する社会情勢や改正法にアンテナを張り、クライアントに対して誠実に職務を遂行できるよう励んでいるのです。

クライアントからの連絡

――先日のこと。

「先生、ネットでこんな記事を見たんですけど、どうしたらいいですかね」

クライアントから一本の電話がありました。その内容とは「在職老齢年金」という年金制度についての質問です。

会社員は、働くことの対価として給与をもらいます。なかでも60歳以上65歳未満の人で厚生年金をもらいながら働く場合、給与と年金の合計金額が28万円/月を超えると年金の一部が支給停止となる制度があり、それが「在職老齢年金」と呼ばれるものです。

そして、昨年成立した「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」により、在職老齢年金の支給停止基準額である「28万円」が、来年度から「47万円」に引き上げられることが決定しました。

クライアントの相談は、

「支給停止基準額が47万円に上がるのならば、株や不動産収入を増やしたいと思う。しかしネットでは、それをすると年金が支給停止になると書かれている」

という内容。

社労士の立場からすると、話があまりにとんちんかんで、何をどう説明すればいいのか迷いました。いくつもの誤解や勘違いが重なり、クライアントが考えている不安は杞憂であるにもかかわらず、ネットの不確かな情報に煽られているからです。

結論からすると、

「株や不動産収入を増やしても、年金の支給停止にはまったく関係ありません」

というのが答えです。

しかしこの内容について、表面上の話では終わらせたくありません。なぜなら、年金制度を理解していなければ、今後も同じような情報に惑わされる可能性があるからです。

まずクライアントには、在職老齢年金の仕組みについて正確に理解してもらう必要があります。正しい知識を備えたうえでネットの情報に触れると、正しい・正しくないの判断が自ずとできるからです。

とくに専門用語が多い場合、パッと見ただけでは勘違いをすることがあります。その勘違いを抱えたまま、未確認情報をたどった末、お門違いの不安を覚えることになるのです。

「でも先生、ネットではこう書いてあるんですよ」

まだ食い下がるか――。

私は年金の専門家として、見ず知らずの顔も見えないネット情報に負けるのでしょうか。そして、人はなぜネットの情報を信じようとするのでしょう。

今回の質問は「Yes、No」で正解を教える類のものではありません。なぜそうなのか、理由や根拠まで理解する必要がある、と私は考えます。

くり返しになりますが、これは今後も同じような疑問や不安にぶつかるであろう「年金の問題」だからです。

私はクライアントに対して、年金制度、在職老齢年金、給与についてそれぞれ要点を説明しました。そのうえで、株や不動産収入と年金受給について関連性がないことを伝えたところ、

「なるほど、それは全然関係ないですね」

30分の時間を費やし、ようやく正確な知識と情報の提供に成功しました。

私の経験からすると、質問者の知りたい情報が難しい内容であればあるほど、結論が示される記事を鵜呑みにする傾向にあります。そして難しいからこそ、情報をはしょったり、略したりするのです。

ではここでクイズです。

「パートやアルバイトは厚生年金に入らなくてもいい」

この内容についてYesかNoか答えられますか?

正解は、

「YesでもNoでもなく、パートやアルバイトの属性や労働条件によって異なる」

となります。

パートやアルバイトだから厚生年金に入れない、ということはありません。フルタイムで働くアルバイトは強制加入ですし、職種や業種によって左右されるものではないからです。

しかし多くの場合、パートやアルバイトは労働時間が短く、社会保険の加入要件を満たしていないのも事実です。また企業規模によっては、原則の加入要件をさらに拡大適用させる場合もあります。

このようにケースバイケースの判断をネットで拾いきることは困難です。つまり、自分がこのケースに該当するのかどうかの判断を、ネットがしてくれることはありません。

だからこそ専門家が存在し、適切なアドバイスやフォローをするのです。

インターネットを上手に使って迅速な判断を

かくいう私自身、ネットの情報なしでは今の生活はありえませんでした。

10年前、スポーツ紙の記者から社労士へとジョブチェンジをした当初、私はネットサーフィンだけで一日を過ごしていました。それが私の「社労士」としてのスタートでした。

なぜネットサーフィンで時間をつぶしていたかというと、友人知人に「社労士」という職業の人はおらず、誰に何を聞けばいいのか分からなかったからです。

誰かに質問をする際、「聞きたいこと」が分からなければ話になりません。しかしネットであれば、「何を質問すればいいのかわからない」ということを発信すれば、ヒントとなる手がかりを掴めます。

つまり、ネットで答えを手に入れるのではなく、ネットでヒントを手に入れるのです。

そこで拾ったヒントを元に現実社会で行動に移し、その結果手に入れたものこそが「答え」であり「事実」なのだと。

こうして私は、社労士としてなにをすべきかをネットから学びました。そしてある程度の武装ができた時点で役所へ行き、実務上の質問をしたり、本格的に仕事を受任するようになりました。

ネットの情報が真実とは限りませんが、少なくともヒントとしての価値はあります。さらにこの基準さえ誤らなければ、スピーディーな判断と圧倒的な成功までもが期待できます。

いつの間にかインターネットに飲まれてしまわぬよう、また、聡明な眼識を持ち続けられるよう、ネット世界とリアル社会の住み分け=デジタルとリアルの嗅覚を磨かなければ、とあらためて思う今日この頃です。

 

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執筆

URABE(ウラベ)

早稲田卒。学生時代は雀荘のアルバイトに精を出しすぎて留年。生業はライターと社労士。ブラジリアン柔術茶帯、クレー射撃元日本代表。
URABEを覗く時、URABEもまた、こちらを覗いている。
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編集

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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