「閉じた」インターネット空間は、まるで秘密基地のようで心地よかった

「閉じた」インターネット空間は、まるで秘密基地のようで心地よかった

 

令和2年。

だれもが、毎日なにかしらのかたちでインターネットを使う日常。

いくらネットとはいえ好き勝手書けば問題になりますし、個人情報をうっかり書こうものなら冷や汗ものです。

「いつ、だれが見て、どう拡散されるかわからない」。

これが現代の、開かれたオンライン世界の常識です。

でもオンラインって、最初から「こう」だったわけじゃないですよね。

思い出してみてください。インターネットが「閉じた」世界だった、あの頃のことを……。

電車男ブームのなか、『ふみコミュ』に入り浸った中学生時代

91年生まれ、現在アラサーのわたしがはじめてネットに触れたのは、中学生の頃でした。

小学5年生で携帯を買ってもらったのですが、もっぱら家族との通話と友だちとのメール用。「ネット」というと、やはり2000年を過ぎてからのイメージです。

当時のネットは、前略プロフィールのような「身近な人とオンラインでつながる場」と、2ちゃんねるのような「どこかの他人とオンラインでつながる場」が明確に別れていました。

わたしの心を捉えたのは、後者の「匿名掲示板」のほうです。

『電車男』が公開されたのは、中学2年生のとき。匿名掲示板が流行っていたまさにそのタイミングで、わたしはインターネットデビューし、同じ趣味の人たちが集うオンライン交流サイトにどっぷりとはまり込んだのです。



毎日何時間も張り付いていたのが、伝説のサイト『ふみコミュニティ』。

最新プリクラ機の評判チェックや恋バナのやりとり、宿題でわからないところの質問、ポエム投稿……。当時の女子小学生・女子中学生からの人気は絶大でした。



恐ろしいことに、ふみコミュユーザーは、自分で加工ブラシやフォントを配布したり、モデルを探してフリー素材を制作したり、オリジナルバナーで自分のホームページの相互リンクをしたりしていたのです。

大人たちが決して踏み込まないその界隈には、「最先端のかわいい」を手に入れるために独学で習得した小・中学生プログラマーが、わんさかいました。すごい話ですよね……。



そしてもうひとつ、わたしが巡回を欠かさなかったサイトがあります。

それが、小説投稿サイト。

……すみません、毎日見ていたはずなのに、名前を忘れちゃいました。



当時はネット検索というものが全然アテにならない時代だったので、どこかで偶然見つけてブックマークし、ブックマークから毎回飛んでいたので、タイトルを覚えていないのです。

結構本格的なサイトで、プロを目指す小説家の卵たちが自信作を投稿し、読者が作品に負けず劣らず長いコメントを残すような場所でした。



拙いながらも、わたしもいくつか作品を投稿していましたね。結構いい評価もらっていたんですが、どんな話かも忘れてしまいました。

そんなこんなで、当時わたしは、「知る人ぞ知る」「同じ趣味を持った人たち」が集まる「匿名掲示板」、要はオタクの秘密基地としてのインターネットを楽しんでいたのです。

 

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mixi登場でオタクの秘密基地が「同じ趣味のコミュニティ」に可視化された

世間から隔絶され、ひっそりと存在していたオタクの秘密基地に革命が起きたのは、自分の記憶ではmixiがきっかけだったと思います。

mixiには、「コミュニティ」という機能がありましてね。

たとえばわたしは、「のぶドラ好き(大山のぶよさん時代のドラえもん好き)」や「BUMPファン」「セブンティーン読者」「空の写真を見たい」「バンドメンバー募集」などのコミュニティに入っていました。

そこで同じ趣味嗜好の人と出会い、つながれるわけです。

mixi コミュニティ 3月12日のコミュニティランキング

(▲出典:mixi コミュニティ 3月12日のコミュニティランキング



これのなにが革命的って、所属コミュニティが可視化されるようになったことなんです。

それまで、オタクはこっそりとその界隈に集まり、匿名でひっそりと盛り上がり、よそ者が入り込まない閉鎖的空間で趣味に浸っていました。

それがmixiの登場で「オタクたちはつながりましょう!」とその存在がオープンになり、「自分はこんなコミュニティに所属しています」と表明できるようになったのです。



それは同時に、他人が「この人はこういうジャンルが好きなんだな」と認識できるようになったともいえます。

匿名で趣味嗜好を楽しむ「インターネットのわたし」がいなくなり、リアルとオンラインがひとつになった瞬間でした。

「秘密基地」が全世界に公開され、「秘密」じゃなくなったのです。



いまでは、SNSのタイムラインを見れば、その人がふだんチェックしているニュースサイトや好きなアーティスト、よく行くお店なんかがわかります。

アーティストや漫画、アイドルなどのファン交流サイトはメディアにチェックされ、「ファンのあいだでは賛否両論」「批判的な意見が目立つ」なんてネットニュースになることも。



「小説家になろう」をはじめする小説投稿サイトからは、毎月数えきれないほどの小説が出版されアニメ化されるまでとなり、多くの出版社がランキング上位の作品をチェックしています。

自分の趣味嗜好がオープンになり、オタクが集まるところを外部の人がチェックする。

いまとなっては、「オタクの秘密基地」としてのインターネットは、なかなかお目にかかれません。

開かれた世界になって巻き起こったインターネットドリーム

「開かれた」世界になったことで、秘密基地はなくなっちゃいましたが、そのぶんいいこともありました。

インターネットを通じて、人生を大きく変えられるようになったのです。



主婦向けの料理ブログから料理研究家になったり、ツイッターにアップした二次イラストが作者の目に留まりお仕事につながったり、SNSで人気のフォトグラファーがプロとして依頼を受けたり……いまや、驚くほどのことではありません。

いままでは「その界隈」でしか注目を浴びなかった人たちが、「みんな」から注目されるようになったのです。



夢がありますよね。

まさに、インターネットドリーム。



かくいうわたしも、その夢を掴んだ……というのは大げさですが、その波に乗れたラッキーパーソンのひとりです。

もともとはただの趣味ブログを書いていただけの学生でしたが、あれよあれよとフリーライターになり、いまではそれで生活しています。



インターネットが「開かれた」世界だったからこそ、多くの人がわたしのブログを見つけて、拡散してくれたんですよね。

が、それでもちょっと思っちゃうときもあって。

「あの頃はよかったなぁ」と。

それでもたまに、オタクの秘密基地に帰りたい

わたしにとってのオンラインの原点は、あくまで「オタクの秘密基地」。

他の人は決して立ち入らない、自分とその界隈の人だけの溜まり場っていうのが、すごく心地よかったんです。

みんな匿名で、その趣味の話だけして、それで終わり。

宗派対立(辻ちゃん派か加護ちゃん派か、など)はあっても、閉鎖的な空間なので、拡散されて炎上することもない。

年齢や社会的地位なんかだれも興味がない。



すごく、心地よかったなぁって。



「開かれた」インターネットとなった現在では、オンラインで「秘密基地」はむずかしいですよね。

友だちだけの溜まり場として使っていたつもりでも、いつのまにか他人が「こんな家を見つけたよ」とシェアするかもしれないし、「それはおかしい!」と土足で入り込む人がいるかもしれません。いまや、「匿名」を「悪」かのように言う人すらいます。



「閉じた」インターネット空間は、絶滅危惧種といえるかもしれません。



まぁ、「開かれた」インターネットだからこそフリーライターとして生活できている以上、それをとやかく言うつもりはありませんがね。

が、それでもやっぱり、あのころのように、秘密基地に帰りたくなることもあるのです。

知らない人はみんな素通りして、たまに同じ趣味をもっただれかが集う、そんな場所。



そう、あの「閉じた」インターネットの世界へ。

 

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