この記事では、さくらインターネットで開催された社内勉強会の模様をイベントレポートとしてお届けします。
今回のゲストはDlink Straw代表の 野村 優妃(のむら ゆうひ)さんです。Dlink Strawプロジェクトは社会問題と向き合う人のためのクラウドファンディングGoodMorningで『2020年をあらわすベストプラクティス Youth部門』に選定されました。
世界一ストローに詳しいと豪語する「ストローマニア」の野村さんに誰もやったことがないことを形にするまでのプロセスと、発信方法について教えていただきました。
<主催:さくらインターネット インキュベーション推進部 山田 修司>
2015年のある動画がきっかけで、ストローに関心が集まる
2015年、ウミガメの鼻に刺さったプラスチック製のストローを取り出す痛々しい動画をきっかけに、プラスチックストロー廃止の動きが全世界で進みました。環境問題から環境に優しい紙ストローの導入が加速されたといえます。
一方、私たち消費者はどう思っているか。紙ストローはふにゃふにゃしていて飲みづらい、もはやストローは要らないのではないか、など多くのネガティブな意見もあります。
環境問題も私たち消費者が原因で生み出されているものなのに、ネガティブな印象が多いのは悲しいです。そこでストローを入り口に、私たちの消費行動を見直すきっかけを作りたいなと思いました。
そもそもストローについてどのくらい知っている?
みなさんは、ストローのことをどのくらい知っているでしょうか。私は20素材を超える、約1,000本のストローをコレクションしています。
ほかにも野菜をストローにして吸ってみたりしました。ストローが好きすぎて、周りからは「ストローちゃん」というあだ名を付けられています。
ストローにハマったのは、2年前にフィリピンに住んでいたときに出会った竹ストローがきっかけです。それまでストローを意識したことがなかったのですが、竹という素材に変わることで「あれ? これって、いつも使ってるストローと違うな」となりました。この体験が面白いと思って、いろいろな素材のストローを調べたんです。
私がストローマエストロとして活動をするうえで「選択肢を増やす」ということを意識しています。さまざまな素材のストローを選択肢として提案しています。
実際にいくつか抜粋して紹介します。
ストローの紹介
一つ目が、麦わらストローです。ストローというのは、英語で麦わらという意味になります。
ストローの起源が麦わらストローだと言われているんです。古代メソポタミア文明でシュメール人が、麦わらストローを使ってビールを吸い上げていたそうです。
この麦わらストローは細くて繊細で、麦茶に合います。
二つ目が、竹ストローです。煎った香りがして、ざらっとした手触りです。竹の素材とデンプンを練り込んで作られています。使い捨てのタイプで、土に還る素材です。
三つ目はサトウキビストローです。私の推しストローでもあります。香りを嗅ぐとほんのりと黒糖の香りがするんです。タピオカを飲むときにいつも使っています。
このサトウキビストローを作っている会社では、使用済みストローを回収・堆肥化することで、使い捨てでありながらも堆肥にして再資源化する土に還る仕組みを作っています。環境にも配慮されているんです。
最後に紹介するのが草ストローです。これはベトナムのレピロニアという素材でできています。茎をカットして乾燥させただけの天然ストローです。ほんのりとよもぎの香りがして、緑茶や抹茶との相性がいいです。うさぎやヤギといった動物の餌にもなるのが特徴です。
同じストローでも、はじめに紹介したウミガメの鼻に刺さってしまったようなストローもあれば、動物の餌になるストローもあります。このようにストローをさまざまな視点から捉えることをストローマエストロとして紹介する活動をしています。
実際にさまざまなストローを吸ってみようということで、体験型のワークショップをおこない、ストローの体験キットを参加者の方に販売しています。その結果、現在は全国で100人を超えるストローマエストロの方が誕生しました。
コンセプトメイキングとストーリーテリング
ストローを普及していくため、コンセプトメイキングとストーリーテリングについては突き詰めて考えました。ストロー消費に関する今の減少や課題、これがネガティブでした。たとえば、紙ストローは飲みにくいとか、ストロー自体が環境に悪いとか……。
ストローに関するポジティブな内容を発信していくことで、共感を生んだり、興味を持ってもらおうと考えています。
たとえばネーミング。ストローマエストロという、ちょっとダジャレのような名前にしたり、ワークショップイベントの名前も野球の始球式にかけて「試吸式」にしました。
キャッチーなコピーを作ったり、ストローをオシャレなデザインにすることも考えた結果です。
思わず吸ってみたくなるストローを作りたい
さまざまな個性を持つストローがたくさんあるのに、「エコ」の一言で片付けるのはもったいない……。
将来的に、ストローも食べられたらいいんじゃないか。ドリンクごとにストローを選べる仕組みがあってもいいんじゃないか。そんなことを提案できたらいいなと思いました。
そこで「Dlink Straw(ディーリンクストロー)」というブランドを立ち上げました。これは”ドリンク”と”リンク”する次世代ストローブランドです。
このストローがないドリンクが完成しない。そのようにストローの価値を最大限に追求するブランドにしたいという思いが込められています。
オリジナルストローの第一弾として「食べられるキャンディーストロー」を作っています。エネルギーとして循環する食べられるストローです。体内に栄養素として取り入れられる究極のエシカルストローで、クラウンドファンディングにも挑戦しました。
素材にもこだわっていて、3つのポイントがあります。
- 「パラチニット」という虫歯になりにくい、血糖値の上昇を抑える、低カロリーな素材で作っています。
- 人にも地球にも良いです。食べられるうえにゴミが出ないので、地球にも良いといえます。
- 話題性がある。ストローの価値を最大限に追求して、ドリンクをより楽しめるように、これまでにない新しい体験を提供できます。
私たちのポリシーは「むげに捨てられるストローをゼロへ」です。ストローは環境問題から注目されているところもあり、私たちのブランドも環境問題の視点からお話をいただくことが多いです。だからこそロスが一切出ないように、受注生産をしています。
ターゲットと利用シーン
「Dlink Straw」のターゲットは大きく3つにわけられます。
1.子ども
食べられるストローは食育として保護者の方に好評です。お子さんの誕生日会など、パーティーストローとして使っていただく機会が多いです。またパラチニットは虫歯になりにくいので、安心して使っていただけます。
2.20代の方
環境問題に関心の強い20代の方に支持されています。エコの文脈だけではなく、思いに共感していただき、クラウドファンディングでも8割の方から「吸ってみたいから買った」というコメントをいただきました。
3.大人の方
お酒の苦手な方がBarに行くときに、ノンアルコールドリンクに食べられるストローを付けることで、普通のノンアルコールドリンクではで味わえない体験を提供したいと考えています。
ドリンクごとにストローを選べる時代へ
いままで無料で使ってきたストローに付加価値を加えることで、共感や興味を持ってもらおうと思っています。キャンディーストローは飴でできているので、味や香りなどを付けることも可能です。
たとえば、チャイティーにはスパイスを引き立てる仕掛けをストローにしたり、ハーバルティーには、はちみつの香りをストローにつける。
バタフライティーは酸に反応して色が変化するので、ストロー側に酸を付けることで、吸っている間に色が変化して面白いかもしれません。このように「ストローをドリンクを楽しむアクセサリー」として提案していこうと思っています。
現在、『Dlink Straw公式サイト』にて、キャンディーストロー 2本セットをプレオーダーで販売開始しています。こだわり素材を使用し一本一本、職人が手作りでお作りしているので数量限定の完全受注販売とさせて頂いてますが、ぜひ手にとってお楽しみください。
まだ世の中にないものを作るのはとても難しいけれど、そこに共感して興味を持ってくれる人が1人でもいればその輪は必ず広まっていくと思っています。
ドリンクごとにストローを選べる時代へ向けて、今後も活動していきます。
Dlink Straw公式ツイッター: @dlinkstraw