インターネットにはすべての「答え」があるが、「疑問」は与えてくれない(異国のパンチングマシーンに寄せて)

インターネットにはすべての「答え」があるが、「疑問」は与えてくれない(異国のパンチングマシーンに寄せて)

 

インターネットは、どんな疑問に対する「答え」も教えてくれます。

あの有名人の誕生日はいつ? 所得税の計算式って? 茄子(なす)って英語で何て言うの? などなど、あなたの疑問は、検索すればだいたい解決してくれます。

 

しかし、インターネットには「疑問」そのものはありません。

「疑問」は、自分のその手その足その目で見つけるしかないのです。

 

インターネットの魅力を伝えるサイト「さくマガ」で、いきなりインターネットをディスってしまい申し訳ありません。

誰が置いたかパンチングマシーン

私は今、ジョージアという国にいます。かれこれ滞在期間は、1年になります。春夏秋冬、ひと通り見てきました。

それなりに、こちらの生活にも慣れてきたのですが、いまだにわからないことがあります。

 

それがこちらです。

 

パンチングマシーン

パンチングマシーンです。

上記の写真は、お金を入れる前なのでサンドバッグ部分がまだ下りてきていませんが、紛れもなくパンチングマシーンです。

パンチングマシーンとは、その名の通り、パンチ力を測定してくれるマシーン。日本でも、ゲームセンターの片隅に置かれ、ちょっとヤンチャな先輩が「勝負しようや!」と誘ってくるあれです。

後輩だから…と忖度して負けると、「罰ゲームは、肩パンな!」と言って、肩をパンチしてきます。

 

「どんだけ頭の中、パンチに支配されてんねん!」と今ならツッコむことができますが、当時はそんなこと言えるはずもなく。野蛮すぎるけど、これこそがThis is 地元の先輩です。 

 

すみません、話がそれてしまったので、元に戻します。

路上のいたるところに設置されているパンチングマシーン

 

そんなパンチングマシーンが、この国では路上のいたるところに設置されています。

日本では、ゲームセンターでしか見かけませんよね。

でも、この国(ジョージア)ではゲームセンターに行かなくても、街中のあちこちでパンチングマシーンを遊ぶことができます。

 

というか、そもそもジョージアにはゲームセンターはありません。もしかしたら、どこかにはあるのかもしれませんが、一般的なものではないです。ショッピングモールにメダルゲームすらありません。

 

その代わり、パンチングマシーンは、あちこちにあります。

 

駅構内や路地裏、交差点など、「こんなところにいるはずもないのに」というところには、必ず彼はいます。

 

いつでも探しているよ、どこかにキミ(パンチングマシーン)の姿を

いつでも探しているよ、どこかにキミ(パンチングマシーン)の姿を

 

「そんなにこの国の人は、パンチングマシーンが好きなの?そんなにしょっちゅう遊ぶの?」と思って、一度、朝からずーっと観察していたことがあります。

 

近くのドーナツ屋さんに居座って、窓からパンチングマシーンを張り込んでいました。

 

でも、誰一人としてマシーンにお金を投入する人はいませんでした。

 

一回だけたまたま、遊ぼうとしている集団を見かけたことはあるのですが、酔っ払ってふざけてお金を入れてゲラゲラ笑っているだけで、一度もパンチすることなく、どこかに行ってしまいました。

 

どう考えても、儲かっているようには思えません。

 

じゃあ、なぜこんなにもパンチングマシーンがあちこちに設置されているのでしょうか?

 

社会福祉の一環ですか?

現地の人に聞いてみた

パンチングマシーンについて現地の人に聞いてみた

 

なぜこんなにも野良パンチングマシーンがあるのか気になったので、現地の人に聞いてみました。

 

結論からいうと、返ってきた答えは「わからない」でした。

 

誰が設置しているのか?いつから置かれているのか?誰が電気代を支払っているのか?という疑問すべてに「わからない」という答えが返ってきました。

唯一、「あれはいつやるものなのですか?(たとえば、お祭りやお祝い事の日とか?)」という質問に対しては、「嫌なことがあった日にやる(ストレス発散のために)」との答えは返ってきました。

 

ですが、「あなた自身はやったことがありますか?」という質問には、「やったことはない」との回答でした。

 

なぜパンチングマシーンがあるのかわからない

結局、その後も、現地の方と仲良くなるごとに「この国はなぜパンチングマシーンがあんなに設置されているのですか?」と質問して回ったのですが、総じて「わからない」という回答です。 

「お問い合わせ先はこちら」といった記載や、「不具合の場合はこちらにご連絡ください」という貼り紙もないし、これ以上、調べようがありません。

ネットで検索しても、ジョージアが「パンチングマシーンの産出国」や「パンチングマシーン発祥の地」であるといった情報も出てきません。

 

謎は深まるばかりです。

見えているのに見えない郵便ポスト

現地の人に聞き込み調査する中で、ひとつ、面白い発見がありました

 

毎回、パンチングマシーンの質問をすると、全員が必ず最初に「…ん? パンチングマシーン…?(しばらく考えて)あ!はいはい!ありますね!」というリアクションをするのです。 

これが何を意味するのかというと「パンチングマシーンのある風景が当たり前になりすぎていて、一瞬わからない」ということを物語っています。

それくらい、現地の人にとっては、パンチングマシーンは「街でよく見る日常風景」であり、そこに疑問が介入しないくらい、生活に馴染んでいるということです。

 

だから、僕がパンチングマシーンの質問をしても、最初、ピンと来ていないのです。

 

パンチングマシーンとポストは同じ

たとえば、あなたが友達の家に初めて遊びに行ったとしましょう。そして、友達に「駅からウチまでの間に、郵便ポストはどこにあったか思い出せる?」と聞かれたら、どうでしょうか?

 

おそらく、すぐには答えられないと思います。

 

「ハガキを郵便ポストに入れる」という用事が無いかぎり、日常生活の中で、郵便ポストに意識が向くことはありません。

郵便ポストは、あんなに目立つ赤い色をしているにもかかわらず、私たちにとっては「よく街中で見かける日常風景」であるので、見えているけど、見えていないものなのです。

 

このように、現地の人にパンチングマシーンについて、いくら尋ねてみても返ってくる答えは「わからない、考えたこともなかった」でした。 

現地の人にとっては、それくらいパンチングマシーンが生活に馴染んでいるという事実が、実に興味深くもあり、なぜかじんわりと恐ろしかったです。

 

パンチングマシーンが、暗闇から嘲笑っています。

 

パンチングマシーンが、暗闇から嘲笑っています。

ググレカスというネットスラングが生まれて久しいですが、それだけインターネットにはいろんな疑問の「答え」があることを意味しています。

 

しかし、疑問自体がネット上にない場合、その答えは見つかりません。

 

今回のケースでいうと、「ジョージアの街中にパンチングマシーンがたくさん置かれている」ということに、そもそも現地の人は誰も疑問を持っていなかったため、当然その答えはネット上では見つかりませんでした。

インターネットは「答え」を見つけるためには、すごく優れた道具ですが、「疑問」を見つけるには、パソコンやスマホの画面の外に視線を向けるしかありません。

 

インターネットの誕生により、「答え」は無料のものになりました。だからこそ、価値ある「疑問」を求めて、冒険に出かけてみてはいかがでしょうか。

でも「疑問(わからないこと)」を探すために、知らない世界に飛び込むのは怖いし、不安ですよね。

 

大丈夫、安心してください。あなたが一歩踏み出す時、インターネットはいつでも私たちの手助けをしてくれます。

航空券の手配、地図の購入、現地の気候、通貨の両替レート…、そのすべてでインターネットは役立ちます。

 

あなたがこの世界で「疑問」を探す時は、ぜひさくらインターネットをご活用ください。 

「インターネットの産出国」は、さくらインターネットですし、「インターネット発祥の地」も、さくらインターネットだから。

 

それでは、私はパンチングマシーンの調査が忙しいので、今日はこの辺で。

 

ナベグラヴィ!(※1)

 

ナベグラヴィ!

【※1】ジョージア語で「さようなら」の意味と思わせておいて、実際はジョージアの炭酸水の名前