DevRelのための経営、経営のためのDevRel

 

 2020年11月14日、アジア最大のDevRelカンファレンス「DevRel/Asia 2020」にさくらインターネット執行役員の横田真俊が登壇しました。この記事ではそのイベントレポートをお届けします。

 

DevRel/Asia 2020とは、アジアおよび太平洋地域を対象としたオンラインカンファレンスです。DevRel、開発者向けマーケティング、開発者体験、コミュニティに関する優れた体験を共有しています。

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経営とDevRel期待値を合わせる

 

さくらインターネットの横田です。さくらインターネット株式会社で、クラウド事業の管掌役員をしていると同時に、エバンジェリストとしても活動しています。最近は少なくなってきましたが、昔は年に50回くらい登壇をしていました。

 

さくらに入社してから10年くらい経ちますが、現場のエバンジェリストからサービスの責任者、経営とキャリアを移動してきました。

こうした経験から、どうすればDevRelと経営がうまくやっていけるのかについて説明をします。

 

具体的に言うと、エバンジェリスト、アドボケイトといったDevRel活動をする方々が、いかにして経営と話をしていくのか、どうやったら良い評価を受けられるのか、ということです。

 

伝えたいことは、ただ1つです。

 

「経営とDevRelの期待値を合わせよう!」

 

これができれば、経営はDevRelを評価しますし、DevRelは経営に貢献できます。しっかりと話し合うことが大切ということです。

 

経営とDevRelのすれ違い

経営とDevRelのすれ違い

まず、経営とDevRelのすれ違いについて説明します。

皆さんは「こんなに頑張っているのに、会社は自分を評価してくれない」と感じた経験はありませんか?

 

反対に「自分のやっていることは、会社に貢献しているのか」と思ったこともないでしょうか?

 

登壇をしていて、自分の名前を売っているかもしれないが、商品は売れない。本当にこれは会社に貢献しているのか? という疑問を持ったことがあるかもしれません。

 

エバンジェリストあるあるだと思うのですが、他部署から「イベントで遊んでお金をもらえていいね」と言われた経験がある人もいるのではないでしょうか。

私の知り合いでDevRel活動をしている方がいます。あるときにその方がノベルティでかき氷を作って配ったんです。

ただ、他部署から見るとかき氷を配って遊んでるんじゃないのか、と思われてしまったそうなんですね。自分は一生懸命仕事をして会社のためにと思っていても、他部署から見ると遊んでいるんじゃないかと思われることが結構あるようです。

 

実際に、私も知り合いにこのようなことを言われました。

 

「お前の仕事はブルシット・ジョブだ」

 

ブルシット・ジョブというのは「本人でさえ正当化できないくらい、完全に無意味・不必要で有害でもある有償の雇用の形態であるが、本人はそうではないと取り繕わなければならないように感じている仕事」のことです。

 

端的に言うと「お前の仕事はどうでも良い仕事だろう」ということです。これを知り合いから言われたわけですね。もし、これを会社の上司から言われたらどう思いますか? 言われないまでも、そう思われていたら、かなりつらいと思います。



なぜこのように会社や他部署と、DevRelの意識がずれるのか。その理由は、お互いの「期待」がずれているからだと思っています。ある程度、話し合いをきちんとしていれば、このような不幸なすれ違いは起きないと思います。なので、経営とDevRelの期待値を合わせる必要があります。

 

経営とDevRelの期待値を合わせる必要があります。

 

そのためには、経営がなにを考えているのかを知る必要があります。

経営はなにを考えているのか?

 

まず、経営とは何かについてですが、ひとことで言うと経営とは「会社を潰さないこと」です。短期的に潰さないことではなくて「会社を継続成長させること」だと私は思っています。いろいろな考えがあると思うので、これはあくまで私の考えです。

 

IT企業というのは進歩のスピードが早くて、むかし天下を取ったけれども、今は潰れそうになってしまっている会社が結構あるじゃないですか。

 

なので、継続して成長をしないと、いずれは潰れてしまうんですよ。今すぐは潰れないかもしれないけれども、数年後・数十年後に潰れてしまう可能性があるわけです。

 

会社を継続成長させるためには「お金を使ってお金を儲けること」が必要です。「投資をし、事業を作り、収益を生み出すこと」が経営の根幹となります。経営者はこういうことを考えています。

 

ということは、経営はDevRelに何を求めているかということですが、経営が期待・投資しているのは、事業を作り、収益を生み出すことです。

 

ただ、これは短期的な金儲けのことではありません。「会社を継続成長させる」「収益を生み出す」といっても、会社によって考えることは全然違います。

 

必要性という観点では、

「テクノロジーをベースにしているので不可欠」

「流行で部署を作ったがいらない」

 

成果という観点では、

「認知とファンを増やす」

「営業のフォロー」

 

と考える経営の方もいると思います。これはゼロかイチかの話ではなくて、この間で結構揺れているものです。なので皆さんには、ここの温度感というのを知ってもらう必要があると思います。

 

このようにDevRelへの期待は経営、上司によってだいぶ違います。そうした経営者や上司がなにを考えているのか、まずは「期待値」を合わせる必要があります。ここさえしっかりやっていれば「お前らは遊んでいる」なんてことは言われないと思います。

 

期待値を合わせるにはどうすれば良いか?

 

期待値を合わせる方法について、具体的に説明していきます。

 

まず最初に合わせるのは「何のために存在しているか」を、はっきりと言うことです。会社や社会において、何のために存在しているのか。これを、できれば20文字以内で簡潔に言えるようにしてもらいたいです。

 

続いて、ターゲットについてです。

DevRelの場合、ターゲットは開発者やエンジニアになることが多いと思いますが、このあたりをしっかりと話して、すり合わせる必要があります。

 

最後に、そのための施策と期間です。

登壇やブログ、コミュニティ活動など、いろいろあると思います。

実際に成果を出す期間はどのくらいなのか、などの認識を合わせる必要があります。

 

皆さんは経営や上司と期待値を合わせているでしょうか? もし、期待値を合わせていなければ、早めに合わせるべきだと思います。

 

期待値設定の具体的事例

期待値設定の具体的事例

ここからは、さくらインターネットの事例を紹介しながら、具体的な期待値について説明します。

 

  • 何のために存在しているか

自社の継続成長のためにファンを作るため

ターゲット=ファン

 

  • なぜターゲットがファンなのか

ファンを作ることで中長期の収益を生み出し、事業継続が可能となるから。

 

  • ファンとは誰か

さくらインターネットの社是として「やりたいことをできるに変える」というものがあります。社是から考えて、ファンというのは当社のサービスを利用して、やりたいことをできるに変えることを実践する人です。こういう人たちを、ファンと呼んでいます。

 

  • 最終的にどのような状態になっていればいいのか

ターゲットとしたファンが、自分たちのサービスを利用して、ユーザー自身の成功を達成することが最終的なゴール

 

さくらインターネットでは、社是の「やりたいことをできるに変える」から、このようにDevRelを位置づけています。

まとめ

 

皆さんの会社はどうでしょうか。期待値について合意しているでしょうか。

自分たちの活動があまり評価されていない、と思う方は上司や経営の方たちと期待値を合わせていただければと思います。

 

期待値が合っていなければ、どんなに頑張っていても評価がされません。期待値が合っていれば、DevRel側としてもなにをすれば良いかがわかります。経営側もDevRelが事業の発展に必要だと理解ができます。

 

期待値を合わせれば、溝は埋められます。DevRel活動は自分たちだけでやるものではありません。経営の理解を得て、他部門と協力体制をとれるようにする必要があります。

 

しつこいようですが、大事なことなのでもう一度言います。

「経営とDevRelの期待値を合わせよう!」

 

 

  • 経営とDevRelの意識がずれるのは「期待」がずれているから
  • 経営が期待しているのは「事業を作り、収益を生み出すこと」(短期的な金儲けのことではない)
  • DevRelへの期待は経営、上司によってだいぶ違う。なので「期待値」を合わせる必要がある。
  • 期待値を合わせるために「何のために存在しているか」「ターゲット」「施策と期間」の認識を合わせる必要がある。
  • 経営とDevRelの期待値を合わせることが重要