さくマガ公式SNS
お問い合わせ

会社員をしながらいつ書いてるの? 副業作家の働き方

会社員をしながらいつ書いてるの? 副業作家の働き方

≫ 副業にも挑戦可能!あなたの「やりたいこと」をさくらインターネットで一緒にやりませんか?

時間が足りなくて、途方に暮れる

「時間の使い方」に関して、人生でもっとも途方に暮れたのは、たしか高校生のころだった。

田舎の進学校に通っていた高校時代。とにかくいつでも眠い、もっと本を読みたい、でも時間がない、とずっと嘆いていた記憶がある。

部活は忙しく、土日も長期休暇も毎日練習があって、朝練もあったし、昼休みですら練習していた(よっぽど大変だったのか、私はいまだに高校時代の部活で怒られる夢を見る……)。

勉強も大変だった。定期テストや模試はいつだって待ってくれない。都会の高校生みたいに、学校や塾のカリキュラム通りに勉強してたら志望大学に受かるなんてことはない、自分で志望大学用の参考書を見つけて、学校のテストとは別にやっていかなきゃ……。昔の自分はけっこう現実的で、たんたんと勉強に時間を割いた。

加えて好きな本はやっぱり読みたいし、漫画も読みたかった。当時ハマった漫画たち、『風光る』も『イタズラなkiss』も『天は赤い河のほとり』も『鋼の錬金術師』も面白かったな。あと当時、やたら堺雅人が好きで、出演作の大河ドラマや連続ドラマをTSUTAYAで借りて見漁っていた記憶がある。……暇だったのか? いや、暇じゃなかったから大変だったのです。

とりあえず高校時代は忙しかった。やるべきことに対して時間が足りない。みんなどうしてるの。本当に文字通り、途方に暮れていた。

……と、高校時代の自分忙しいアピールをしたところで(うるさかったらすみません)。あの頃の自分と同じくらい、今の自分も、わりと途方に暮れている。

とにかくいつでも眠い、もっと本を読みたい、でも時間がない。

10年経った今も、まったく同じことで悩んでいる。

会社の仕事もしつつ、いつ書くか

会社の仕事もしつつ、いつ書くか

フルタイム会社員をしながら副業作家をやっていると、聞かれること、ナンバーワン。それは、「会社の仕事もあるのに、いつ書いてるの?」という質問である。

私は「まあ週末とか、朝とか、夜とか……」と適当にお茶を濁すことにしている。なんでお茶を濁すかと言えば、ぶっちゃけ、いまだにしっかりとしたルーティンを決められていないからだ。

たとえば「朝7時からは執筆の時間」とか「日曜日は予定を入れずに原稿を書く」とか、しっかりルーティンを決めていれば、人にもそれを答えたらよいだろう。が、私の場合、いまだに、「やってくる〆切に対して間に合うように書く」ことしかできないのだ。本当に(というか、間に合っていない。なんならこの原稿も、〆切に遅れてしまっている……。ご、ごめんなさい)。なので、「〆切があったら書いている」というほかない。

しかし、この連載はなんといっても「書く仕事について」の話! これまでお茶を濁していた問い、「会社の仕事をしつつ、いつ書いているの?」について、はっきりがっつり書いてみようと思う。

(しかしこんな話、みんな興味あるのだろうか、とちょっとどきどきする)

波のあるスケジュール

私の書く原稿の種類はおもに2つ。ひとつは記事の原稿。もうひとつは、本の原稿だ。

記事というのは、だいたい1000~6000字くらいの間で、WEBメディアや雑誌に載せるために依頼をいただいて書く原稿(この連載も「記事」である)。私の場合は、書評という、本の批評や解説が依頼としてはいちばん多いけれど、ほかにも、エッセイやドラマや漫画に関する記事を書くこともある。

対して、本の原稿は、だいたい一冊8万字~10万字くらいで、これも出版社に依頼をもらって書く(人によっては出版社に営業して書くものもあるけれど、話題がずれるので置いておく)。雑誌やメディアにすでに載せた原稿をまとめることもあるのだけど、私の場合は「書き下ろし」というスタイルしかやったことがない。文字通り、単行本書き下ろし。「さあこれから10万字前後の原稿を書くんやで!」と出版社さんにスケジュールだけを渡され、書き終わったら単行本になる……というシンプルなスタイルである。

一か月にどれくらい書くか? は、ほんとうに時期によって異なる。記事の〆切が3つの月はわりと少なめ、6つくらいあればちょっと多いな、と思うレベル。そしてこれに本の〆切が足されると、「つらい……」とTwitterで言い始めるレベルになる。

正直、記事を書くだけなら、もうあんまりつらくない。もちろん苦労する原稿もあるけれど、たいていは1日会社終わりの時間が空いていれば書ける。基本的に文章を書くのは好きだし、私の場合は基本的に「なにかコンテンツがあって、それに対して考えたことを書けばいい」スタイルなので、ネタに困ることもない。4000字くらいまでなら、まあなんか書けるかな、と思っている。

しかし問題は。本の原稿である。

10万字。しかもひとつの話題について。長いよ~怖いよ~終わらないよ~。と、いまだに本の原稿を書き始めるときには震えてしまう。書き終わった後は、ちょっとどうにもならないくらい疲弊した自分に気づく。

しかも、私の書くスケジュールには波がある。今のところ、10万字の文章に対して「毎日コツコツ2000字ずつ書いていって、50日で仕上げる」という理想的な配分をできた試しがない。本当は毎日少しずつ書き溜めていくのがいいのだけど、どうしても自分は書き始めるまでが遅い。「長いよ~怖いよ~終わらないよ~」と震える期間が生まれてしまうのである。

だいたい2~3か月あったら書き終えることができるのだが、理想は「2000字を50日」なのに、現実は「3万字を1か月半かけて書いて、あとの7万字を1か月でバーッと書き上げる」とかいう配分になってしまう。あと、書く前に震えて現実逃避する1、2か月……。(ほんと、どうしようもない期間である。出版社さんごめんなさい)。

副業作家の働き方

なので、本の〆切がやってくる期間は、会社以外の時間をできるだけ本につぎ込むことになる。趣味の本は読めないし、友達とのごはんもできれば減らしたいし、なんなら睡眠時間も削らざるを得ないこともある(その時はハイテンションになっているのでできるのだけど、まあ、しんどいですよね)。しかし朝が来れば会社には行かなければならない。本を書くことは楽しいのだけど、睡眠時間が減るのはしんどい。

余談だが、会社は会社で楽しいのだけど、いまだに「本当に日本のサラリーマンって休まないんだな!?」とびっくりする。会社、1年に2回くらい、2か月の休みがあれば理想的なのに……! そうすれば会社に行きつつ、本を書く期間をちゃんととれるのに……! と思う(そういえば、大学時代って、そのまんま1年に2回、2か月の長期休暇があった。あれって研究に適したサイクルなのかもしれない。まあ、大学の先生は長期休暇中もたくさん仕事があるだろうから休めないんだろうけれど)。

というわけで、「いつ書いてるのか?」という問いに関しては、「修羅場の時期(本を書く時期)はいろいろ削って週末と朝と夜に書いてる、普通の時期はあんまりなにも削らずに週末と朝と夜に書いてる」という答えになるのだった。

私はけっこう「一時期にがーっと頑張って、ほかの時期にサボる」という、波のあるスケジュールが好きなのだが、サラリーマンだとなかなか波を許してもらえないなあと思うことがよくある(まあ毎月給料をもらえるってそういうことなんだけど)。

なので、副業で強制的に波をつくりだし、「今月は! さぼれる!」と思えることが重要なのかもしれない。いや、本音は、1年に2回、2か月くらいの休みがほしいですが……。がんばって働き方改革!

≫ あなたの「やりたいこと」をさくらインターネットで一緒に実現してみませんか?

執筆

三宅 香帆

書評家・文筆家。1994年生まれ。 『人生を狂わす名著50』『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』などの著作がある。

編集

武田 伸子

2014年に中途でさくらインターネットに入社。「さくらのユーザ通信」(メルマガ)やさくマガの編集を担当している。1児の母。おいしいごはんとお酒が好き。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

すべての記事を見る

関連記事

この記事を読んだ人におすすめ

おすすめのタグ

特集