※こちらの記事は2018年7月4日に ASCII.jpで公開された記事を再編集したものとなります。
文● 谷崎朋子 編集●大谷イビサ 写真●曽根田元
「さくらのレンタルサーバ」は、さくらインターネット創業時からの事業だった「さくらウェブ」が2004年にリニューアルしたものだ。安価でありながらSSLやメール、電話サポートを全6プランで標準提供しており、2018年4月にはWordPressなどPHPアプリケーションのパフォーマンスが最大16倍にまで高速化される機能も提供開始した。つねにユーザーの声に耳を傾けながら進化を続ける同サービスを支える堀本照氏と谷口元紀氏に、ASCII.jpの大谷イビサが同サービスの“リアル”を直撃する。
ぶっちぎりで人気No.1はスタンダードプラン
大谷:まずは、さくらのレンタルサーバについて簡単に教えてください。
堀本:さくらのレンタルサーバは、ITの前提知識がなくても、ホームページの開設や自社ドメインのメールアドレス作成などが手軽かつ安価に実現できるサービスです。プランは、ライト(月額131円)、スタンダード(月額524円)、プレミアム(月額1,571円)、ビジネス(月額2,619円)、ビジネスプロ(月額4,714円)、マネージド(月額1万3,200円~)と6タイプあり、一番人気はスタンダードです。
谷口:対象ユーザーをざっくり分けると、ライトとスタンダード、プレミアムが個人向けで、ビジネス、ビジネスプロ、マネージドが法人向けです。個人の方は独自ドメインでブログを運用したいというニーズが多く、一方の法人はコーポレートサイトの運営やメールサービス利用などが多いですね。個人のホームページ制作から大企業のコーポレートサイトまで幅広く利用していただいています。
ビジネスやビジネスプロは権限をユーザごとに設定することができます。たとえば、ビジネスプロで契約して制作会社に特定ドメインの操作権限を付与したり、再販サービスとしてドメインを貸し出したり、マネージドを借りて数多くの顧客サイトを入れたり、さまざまなビジネスモデルで利用することができます。
大谷:とはいえ、公式サイトを見ると、スタンダードが一番人気のようですが。
谷口:はい。ほとんどの方がスタンダードを借りますね。ぶっちぎりで人気No.1です(笑)。
堀本:2018年2月時点で契約件数が43万件を突破しましたが、スタンダードプランを含む個人向けプランで約8割を占めており、本当にぶっちぎり。
大谷:確かに、税抜きでワンコインですからね。これだけのリソースが使えてこの価格なら、かなりお得ですよね。
時代の流れで変化するレンサバ選びのポイント
大谷:堀本さんと谷口さんはどんな経緯で本サービスに関わるようになったんですか?
堀本:入社当時、大阪の事業部がレンタルサーバをやっていたからですね。谷口が2年くらい、僕が2年半くらいなので、まだ新参です(笑)。あのときは今ほどWordPress対応を押してなかったので、逆に言うとあまり特徴がなかった時期。開発よりも運用面に力を入れていて、サービスが少し弱くて。
大谷:ユーザーがレンタルサーバを選ぶときって、何を重視してるんですかね。なんとなく仕様一覧をばーっと見て、機能や価格で決めているのかなぁとイメージしてるんですけど。
堀本:個人ブログなら、たぶん価格でしょうね。といっても、なんと言うか、安すぎても、高すぎてもあれですし。個人なら月額600円以下のライトやスタンダードあたりのプランを借りていると思いますが、PVの多いサイトだと 月額1,500円以上の上位プランを選んでるのかな。
大谷:それにしても、5~10年前のホスティングを知っている人間からすれば、ライトプランでも隔世の感があるくらい転送量や容量などのスペックが高いですよね。これは、さくらさんの企業努力でしょうか。
谷口:企業努力もありましたが、いわゆる容量戦争みたいなのが一時期ありましたよね。あっちが10GBから20GBにするんだったら、うちも合わせなきゃみたいなの。その果てに、今のスペックに落ち着いたのかもしれないです。もうスペックではどこもほとんど差がつかないし、ユーザーもスペックで選ばなくなっている気がします。どちらかというと、「レンタルサーバ おすすめ」で検索したり比較サイト見て、決めている印象ですね。特にストレージ容量などは、なかなか使い切ることはないと思います。
堀本:ほんの一部ですが、ギリギリまで使っていただいているヘビーユーザーもいらっしゃいますよ。
谷口:動画配信されてる方とかですかね。
大谷:なるほど。インフラは昔から変わらずですか?
堀本:変えている部分と変えていない部分があります。全部変えるのが理想ですが、なかなかそうもいかなくて。ハードウェアは4年前くらいに全部一新していますね。
大谷:この前、ファーストサーバのサーバ移行の記事を書いたんですが、20年くらい塩漬けになってたサーバをクラウドに移したという話があって、創業時からのサービスだと長く使っているサーバもあるのかなと思って。
堀本:うーん、平均的には5年くらいだとは思うけど。創業当時のとかあるのかな。
谷口:元祖のさくらウェブはありそう! 新規受付は停止しているんですが、サービス自体は廃止していないので。
堀本:20年選手もいらっしゃるかもね(笑)。
レンサバ高速化は夏合宿で集中協議、サーバを抜本的に改革して実現
大谷:古い話ばかりじゃ何なので、ここ2年くらいの話を聞こうかな。特長としては大きく、WordPress、常時SSL、高速化が挙げられるかなと思うんですが、WordPress対応に関してはおふたりが担当になってから強くアピールするようになったんでしょうか?
谷口:WordPressはここ数年急激に利用者が増えてので、そこは強化し、アピールしたいと思いましたね。
堀本:個人的な感覚ですが、WordPressを使うサービスとしてレンタルサーバが選ばれるようになってきて、さくらもWordPressでの強みを見いだしたいなと。これは、自分たちが入社して2年くらいの話ですね。
大谷:高速化についてはどうですか?
堀本:まず、今までのサーバのスペックを約3~4倍にスケールアップしました。PHPのApacheモジュールを動かすにはメモリが必要で、今までのスペックではユーザーが増えた場合に耐えられません。そこで、スペック強化から始めて、ユーザーがそれぞれPHPのApacheモジュール使えるように内部構成を抜本的に変革しました。また、WordPressを使いやすくするにはどうすればいいか考えて、新しい環境を整えました。
大谷:実際、いつくらいから作業を始めたんですか?
堀本:去年の夏です。投資や人も必要ですし、現場の一部の改善だけではできないので、関係する役員のみなさんに集まってもらって夏合宿をやりました。プランを出してトータル8カ月のプロジェクトでしたね。既存ユーザーのハードウェア環境は変わってませんが、2018年4月17日から申し込みされた新規ユーザーは新しい環境が使えます。既存ユーザーの環境移行はもう少し先になりますが、計画しています。
大谷:高速化が登場した背景ですが、何かユーザーから要望があったんですか? たとえばアクセス過多でパフォーマンスが必要とか。
堀本:まさにそのニーズが一番多かったんですよ。仮説を立てて調査したところ、価格ではなく速度やレスポンスが解約の理由になり、他社へ移行していることが判明しまして、これは高速化しないといけないと思いましたね。
大谷:なるほど。価格や機能じゃなく、お金を払ってでもパフォーマンスを得たいというニーズに気づいて見直したということですね。ちなみに、先日の高速化についての反応はありましたか?
堀本:そうですね。新環境の利用者数も順調に増えていますし、SNSで反応を見た感じだと新環境利用者から好意的なツイートをしてくださっている方もいます。検索ワードでも「高速」や「WordPress」などのキーワードで当社サービスサイトへ流入してくるケースが増えているように思えます。
大谷:サイト移行は簡単じゃないですしね。
谷口:慣れている人なら10~15分で終わる話ですが、初心者だと1日ずっと格闘している人もいるようです。そういう人向けに、お引越しツール作りたいよねという話はしています。
さくらのレンタルサーバが選ばれる理由は?
大谷:新しいコントロールパネルもリリースされましたね。従来との違いは? 新しいコントロールパネル
谷口:やっぱり使いやすさですね。これも解約アンケートでよく言われることですが、コントロールパネルが使いづらいとか古いとか。確かに見た感じ「レガシー感」があったんですよ。で、レンタルサーバチームで採用面接をやると、大体の人が「コンパネをリニューアルしたい」って言うんです。まあ僕も言いましたけど(笑)。使っていてストレスあるのは分かるので、それをいかに取り除くかが課題でした。
大谷:でも、使い慣れている人にとってはこれがいいということもあるだろうし、新しいのがいいという人もいるし、コントロールパネルやGUIのリニューアルって難しいですよね。
堀本:そうなんですよね。急に変わると困る方も多いとは思います。試してみても らって、ご意見いただきたいなと。
谷口:僕もそうですけど、「この画面のこのあたり」みたいに、勘で動くじゃないですか。そこをダイナミックに変更すると、お客様に混乱が生じてしまう。これは一番避けたいんです。
大谷:おふたりから見て、さくらのレンタルサーバが選ばれる理由って何でしょう?
谷口:うーん、老舗感とか安心感かな。なんとなく聞いて知っているという。ユーザーの口コミで広がっているところもあると思います。
大谷:ユーザーサポートも充実してますよね。
堀本:ライトプランでもメールだけじゃなく電話サポートがついてきますからね。トライアルなど除けば、ライトプランの価格で電話サポートやってるところって他にはないですし、サポートが手厚いのも、選ばれる理由の1つだと思います。
あと、さくらのレンサバではモリサワWebフォントも対応しています、ただ他社も対応し始めたので、横並びになった感はありますね。あとは、WordPressのスナップショットなどが取れる「バックアップ&ステージング powered by Snapup」というサービスなんかは、他社にはない選定ポイントだと思います。
地道なチューニングや機能強化は続くよどこまでも
大谷:最後に、今後の予定について教えてください。
堀本:コンパネ開発は、引き続き取り組んでいきます。あとモジュール版PHPをバンバン使って、ブログかなにかで書いてもらえると超うれしいです!
大谷:ちょっと漠然とした質問ですが、レンタルサーバ業界でホットトピックとかありますか? レンタルサーバはユーザーの裾野がすごく広くて、リテラシーが高くない人たちを開拓している世界なのかなと考えていて、その中で何か新しいトレンドがあるのかなと……。
堀本:やはりWordPressですね。これまでもブログプラットフォームのCMS的なものはたくさんあったんですが、それがWordPressに収斂してきたと感じています。 かつてはMovable TypeやXOOPSといったものがいくつかあったものが、最近ではWordPressに統一され始め、ブログ始めるならWordPressって流れになってるのではないかと。
谷口:CMSのシェアではWordPressが他を圧倒していて、WordPressのニーズは今後も変わらず高いと思います。さくらとしては今回はレンタルサーバの高速化に取り組みましたが、各レンタルサーバー事業者も様々な特色を出しているので、当社としてもお客様のニーズに合わせて機能追加やチューニングをしていきたいと思っています。
レンタルサーバーとは|種類別の特徴・選ぶときに見るポイントを解説
さくらのレンタルサーバ
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