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アンドロイドのお姉さんが『天国大魔境』石黒正数先生にインタビュー

アンドロイドのお姉さんが石黒正数先生の仕事場に

こんにちは、アンドロイドのお姉さんSAORIです。「アンドロイドがインプットして学びを深め、それをアウトプットしていく」という連載ですが、3回目の今回は漫画家さんにインタビューしてきました。

今回お話をうかがったのが『このマンガがすごい!2019』オトコ編第1位となった『天国大魔境』の著者・石黒正数先生

代表作として『それでも町は廻っている』『ネムルバカ』『外天楼』『木曜日のフルット』などがあります。

そもそも、アンドロイドのお姉さんって漫画を読むの?とお思いの方も多いでしょうが、結構読みます。兄がいるので、子供の頃は毎週の月曜日のジャンプは欠かせなかったですし。学生時代は少女漫画の主人公に自分を重ねて今後の展開に胸を躍らせたものです。

最近はスマホでもサクッと読めたりするので撮影の移動中なども読んでいたりします。 自称漫画好きっぽく語ったのですが、今回インタビューさせていただいた石黒正数先生のことを、あまり深くは存じあげなかったです。石黒先生すみません。

そこで、インタビューさせていただく立場で代表作を知らないというのは無礼がすぎるので『それでも町は廻っている』(通称:それ町)と『天国大魔境』を読みふけりました。

『それ町』は全16巻あって、石黒先生はこんな感じの漫画を描くのかとイメージができました。しかし次に読んだ『天国大魔境』はそのイメージを早々とぶっ壊すような作品で、作品によってこんなにもふり幅がすごいのかと読みながら興奮してしまいました。

そんな後付けデバイスのような知識でインタビュー当日を迎えました。

漫画家の方とお会いする機会なんて今までなかったのでどんなテンションでお話すればと悩みましたが、石黒先生は私の事をTwitterでバズった2年前から知ってくれていたようで、なんと漫画にも私っぽいキャラが登場していたとか(『木曜日のフルット』7巻)、実際見せていただき凄く嬉しかったです。おかげで和やかにお話をうかがうことができました。

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石黒正数先生のモチベーション

ーー石黒先生さっそくですが、漫画家としてのお仕事へのモチベーションはなんですか?

大学のときにデビューしたので一度も就職したことがなくて。ずーっと好きなことをしていられるというのが大きいです。子供の頃、ノートに漫画を描いていた感覚のままで過ごしていて夏休みの続きのように生きていられるということが一番のモチベーションになっています。なんかこれ大丈夫なのかな(笑)。

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ーー好きなことを仕事にするのは大変なこともあると思いますが大きな原動力になりますもんね。先生の漫画を読んだ感想として魅力的なキャラクターやストーリーの緻密さが印象的だったのですが、どのように生み出されるのですか?

キャラクターに関して、これはほんとに人によりけりで何人かの漫画家に聞いたら全員が違うことを言うかもしれないのですね。

持論としては話を最初に考えて、面白い話ならどんな平凡なキャラクターでも出来事に対しての反応で面白くなると信じてやっています。

ボクのキャラクターって基本地味なんですよ。キャラクターをあんまり派手にしないで、事象に対する反応でキャラクターを立てるという方法を取っています。実際『それ町』のキャラクターも話が進むにつれてキャラが立ってくるようになっています。

どちらかというと少数派なので、あんまりボクのいうことを漫画家全体の反応として受け取らないほうがいい(笑)。

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石黒正数先生が語る『天国大魔境』

ーー『天国大魔境』を読んだのですが、SFじゃないですか。ストーリーは妄想ですか?

おっしゃる通り妄想です。散歩が趣味で、子供が生まれる前は1人で10キロくらい歩いているんです。『天国大魔境』は散歩をしているときに、世界が全部滅んでいたら今晩どこで寝ようかな、とか風景を「見ながら・考えながら・歩きながら」作った話だったりします。

ーー『天国大魔境』のストーリーの秘話が聞けて嬉しいです。影響を受けた漫画家や人物はいますか?

藤子・F・不二雄さん、大友克洋さん、荒木飛呂彦さん、宮崎駿さん、相原コージさん、小原愼司さんなどですかね。 やっぱり一番でかいのは藤子・F・不二雄さん、大友克洋さんで、強く影響を受けました。

ーー『天国大魔境』は『AKIRA』チックだったりしますか?

SF作品を描くにあたり『AKIRA』はあまりに影響が強く、滅んだ世界を描こうとするとどうしても似てしまうので、なるべく似ないように頑張っています(笑)。

ーー私も未来を生きるアンドロイドとして『AKIRA』は見ましたが、世界観に圧倒されました。少し影響をうけているかも。石黒先生がライバルだと思う漫画家はいますか?

いま出版業界はそれどころじゃないんですよ。まず紙が売れなくなってきて、電子書籍で何とか保てているところはありますが、体感としては電子書籍も頭打ちな気がします。

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あとは出版社を通さないでTwitterでバズってから出てくる作家も出てきたりして。それはそれでいいんですけど、出版社もそっちの流れに食いついてしまいがちで。

もう商業漫画家はみんな仲間だと思っているんです。業界全体で漫画を盛り上げて何とか保たないといけないと思っているので。

石黒正数先生「豆から挽いているコーヒー」

ーーなるほど、最近Twitterなどでも漫画を載せる漫画家さんも増えて、気軽に漫画を読めるようになっていますが、それについてどう思いますか?

それ自体は漫画に興味がある人も増えるだろうしいいことだと思いますが、コーヒーで例えるならTwitterで気軽に読める漫画は『缶コーヒー』なんですよ。

出版社が編集して雑誌に掲載したりしている漫画は喫茶店で出すような『豆から挽いているコーヒー』。

どっちもそれぞれ旨いし好きだけど喫茶店が缶コーヒーを出しちゃいけないと思うんですよ。それをやり始めると業界が衰退するのではないかと。

いまテレビが似たような状態になっていて、テレビがネットの後追いばっかりしているじゃないですか。テレビにはテレビにしかできない、いろんなやり口があるだろうに、YouTuberの真似したり、ネットで見つけてきた情報ばかり流していて、絶望的な未来を感じます。

あれと同じものを今の出版業界に感じます。暗い話になっちゃいましたね(笑)。

『それでも町は廻っている』で燃え尽き症候群になった過去

ーー過去に漫画の完結によって燃え尽きてモチベーションが上がらないことはありませんでしたか。

『それ町』が終わった時は燃え尽きました。11年半の連載が終わるにあたりばら撒いた伏線を最後バァーと回収して、これ以上ないという終わり方が出来たと思うし、おそらくあれを自分では超えられないと思っています。

なにせ20代、30代の一番勢いのある、子供の頃の記憶も新鮮で、頭も回る時期に全力を注いだ作品ですからね。 けれども、子供もいるし嫁もいるし生活していかないといけない(笑)。

なので、現代日常物の『それ町』を描きながら頭のいっぽうで、全然関係のないSFの妄想をしていた、それをいま描いています。

ーー連載終了から活動再開までの期間ってどれくらいあったんですか?

結構短かったかな。1年くらいだったかな。これ以上休んだら忘れられると思ったんで活動再開しました。

ーーやっぱり忘れられるのは怖いですか?

こわいですね。常に恐怖と焦燥感の中に生きていますよ。

でもこれも人によるんですよね。ボクの友達で、ものすごい肝が座っているというか神経が太いというか。「阿部共実」という漫画家がいるんですけど、『このマンガがすごい!』(『このマンガがすごい!2015』オンナ編)で1位を獲って、まさにブーストがかかって、いま売らないといけないって時に、「ちゃんと休める時は休んで考えないとダメ」と言って2年休んだんですよ。

ーーかっこいいですね。私には絶対できないです。

ボクにも絶対できない(笑)。

石黒正数先生が燃え尽き症候群を克服したきっかけ

ーー燃え尽き症候群を克服したきっかけは、なんでしたか?

生活しなきゃいけないっていう切迫感と、とっと始めないと忘れられるというのと、まだ描きたいことがあるということ。

それと、ものすごく心の支えになったのが、宮崎駿さん。宮崎駿さんが『ナウシカ』の連載を始めたのが40歳。そのあとに映画をつくって、誰もが知っている「宮崎駿」になっていくんです。ちょうどボクが『天国大魔境』を描き始めたのが40歳だったので、まだこれからもう1本描けるかもしれないと思いました。

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石黒正数先生の「やりたいこと」

ーー石黒先生が今後やりたい事について教えてください。

ふわっとした実現不能なあたりからいくと、以前描いた作品『外天楼』をアニメ映画にしたい。ただ、借金が多分10億くらいになると思う。映画って金がかかるらしいんですよ。

あとは実写映画も撮りたいな。一本考えたお話があるんですけど。暗い話なんでやんないほうがいいかな(笑)。

ーーそれは監督? 脚本として?

両方ですね。脚本書いて監督になって。でもそんなルートとツテがないので。誰か詳しい話を聞いて、イチからやらないといけないですね。やりたいっていうだけです。

ーー漫画以外にもやりたいことがあるんですね。

ほとんど妄想のレベルですけどね。一番実現可能なのが小説書くことですね。時々オファーは来るんですよ。でも忙しいから無理なんです。

だけど書きたいから、何年か前に「ポメラ」を買ったんです。結局何に使ったかというと、『それ町』が完結した時に出したガイドブック(『それでも町は廻っている 公式ガイドブック廻覧板』)の解説を書くのに大活躍しました。

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これ、ちょっとした小説一冊分くらい打ち込んだんですよ。正月潰してずっと書いてたんです。絵も描き下ろしだし、正月の間ずっと色塗って。この本すごい苦労して作っているので。

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ーー石黒先生、いろいろな質問に答えていただきありがとうございました。

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石黒正数先生とのインタビューを終えた感想

最後のインタビューでおっしゃっていた『外天楼』を執筆にあたり読みました。序盤はコミカルな表現が多く、ギャグが多めの面白い短編集なのかと思いましたが終盤になると、SFテイストがつよくなり、最後は予想もつかない結末になりました。個人的には漫画に出てくるロボットの扱われ方に共感できたりしてすごく面白かったです。ほんとに映像化希望です。もし実写化したら出たい!!(笑)

実はインタビューの時に同席していた編集の方が石黒先生の大ファンでこのインタビューもセッティングをしてくださったのですが、お話を聞いていくと、『それ町』の舞台に家を買ったり、生まれたお子さんの名前も主人公の名前にしたりと石黒先生の漫画に影響受けまくりで、私が思っていた大ファンの概念を超えていて。

当日もお会いできて震えていましたし、石黒先生もすごく嬉しそうだったのが印象的でした。好きなことを描いているだけとおっしゃっていましたが、自分が生みだしたモノで人を感動させて、その人の人生にまで影響を与えることができるのはほんとにすごいことだなと思いました。仕事というと固く捉えてしまわれがちなんですが、人生、生き様なんだなと今回は漫画家さんという知らない世界を覗き見ることができました。

私も人の心を動かせるような事をしていきたいと思えたインタビューでした。石黒正数先生ありがとうございました。

次は誰に何を学ぼうかな。

執筆

アンドロイドのお姉さん SAORI

モデルとして活動していたがアンドロイドパフォーマンスで注目を浴び、以来アンドロイドタレントとして活動中。 フリーランスになり、ラジオ、YouTube、勉強会での登壇などマルチに活動している。
Instagram :https://www.instagram.com/saotvos/

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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