小笠原治さん「起業を目的化すると意味がない」大学教授としてもパラレルに活動中

さくらインターネット フェローの小笠原さんにインタビュー

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小笠原 治(おがさはら おさむ)さん

1971年生まれ、京都府出身。株式会社ABBALab、株式会社 nomad代表取締役 / さくらインターネット フェロー / DMM.make エヴェンジェリスト / awabarオーナー / 京都造形芸術大学 クロステックデザイン教授 / 株式会社メルカリ mercari R4D シニアフェロー。Twitter(@ogasahara

各業界の著名人にインタビューをしていく、この企画。今回は多くの会社や事業に関わり、さくらインターネット共同ファウンダーでもある小笠原さんにお話をうかがいました。起業したいと思っている方へのアドバイスもいただきました。

小笠原治さん「最初は田中さんから出資を受けた」

ーー共同ファウンダーである、さくらインターネット代表の田中さんとの出会いをあらためて教えてください。

田中さんとは1996年くらいに初めて会って、きっかけはメーリングリストなんですよ。DNS(Domain Name System インターネットを使った階層的な分散型データベースシステム)の構築とかを丁寧に教えてくれる人がいて、年上の人だと思っていたんですよね。

 

それで会いましょうってなって、その時に働いていた設計事務所に田中さんが来てくれた。田中さんは当時19歳だったと思うけど、いくつか仕事を一緒にやりました。不動産賃貸の検索サイトや、コールセンター用のシステムを一緒に作りましたね。

その後、何か一緒にやりましょうかという話になって、僕はやりたいことがあったので、田中さんが僕に出資してくれたんですよ。逆のイメージがあると思うんですが、当時20歳の田中さんが26歳の僕に300万円出資してくれた。

 

その1年後くらいに会社も一緒にしようかという話になって、今度はその新しい会社に僕の方からも出資させてもらった。田中さんってエンジニア出身の経営者というイメージが強いと思うんですけど、僕にとっては投資家というイメージなんですよね。

僕にとって当たり前のことすぎてあまり言ってなかったけど、最近は田中さんのそういった面も知ってほしくて言っていこうかなと思ってます。

フリーランス研究者に注目している 

ーー多くの会社、事業に関わっていますが、これは面白かった(面白い)という会社・事業を教えてください。

難しい質問ですね。僕はいま、月曜日は「mercari R4D」という研究組織、火曜日は「さくらインターネット」でTellus事業(衛星データプラットフォーム)、水曜日は「tsumug(ハードウェアのスタートアップ)」という会社、木曜日は「京都造形芸術大学」で教えて、金曜日は福岡にいたり「ABBALabファンド」の仕事をして、土日がイベントという感じ。

 

いま関わっている事業や会社はすべて面白いと思ってやっています。 あと、会社や事業ではないんですけど、「片野 晃輔(カタノ コウスケ)」くんというバイオのフリーランス研究者。高校生くらいから研究者として大学行かずに自分なりの研究をしようとしている人が出てきて、面白いなと思っています。

 

事業や会社と言うのも大事なんですが個人にもフォーカスしたくて、そういう人が出てきたのは楽しいですね。

 

難しい質問にも答えてくれる小笠原さん

大学で教えていること

ーー京都造形芸術大学で教授もされていますが、どういったことを学生に教えているのでしょうか。

京都造形芸術大学の中に「クロステックデザインコース」というものがあり、そこで教えています。よく、なんちゃって教授でしょって言われるんですけど、ちゃんと自分のコースとして自分の教えるべき授業があります。

僕の授業は「スタートアップ概論」とか「スタートアップ演習」というもので、1年生の間にグループワークをして「ディスカッションを不得意じゃなくす」ということをどんどんやっていて、毎週「こういうテーマで事業を作るとしたら、どんなサービスを立ち上げるか」といったことを考えてもらいます。

 

例えば、自分たちのチームが「LINEの新規事業開発チームだったら何をしますか?」みたいなことを何週間かにわたって議論していく。そういうのが当たり前になった2年生になると、チーム分けをします。

まず、なりたい人、みんなが推薦する人、僕が指名する人、みたいな形で、今回は2年生で4人選ばれました。この4人にそれぞれ自分のサポーターを探してもらいます。

 

この人にサポートして欲しいっていう人を2人選んでもらって、その3人に対して誰とこれからやることを決めたいかって言って、分かれてもらう。「何をやるか」っていうより「誰とやるか」でまずチーム分けをします。

そのために1年間いろいろディスカッションとかをして仲良くなってもらっています。最終的に事業化する時に面白かったら僕が出資すると言ってあります。

自分なりの働き方をしている 

ーー事業もされて、教授もされて、常にお忙しいイメージですが、ワーク・ライフ・バランスはどうなっていますか?

大前提として、僕が自分なりの働き方をするために、ほとんどを業務委託+権限委任でやっています。労働基準法の中でやろうとするとまだ良くないなと思うことがあるので、その範囲外のところで動けるようにしています。

なので、僕は自分の個人会社で業務委託として受けて、その中で期待されていること、例えばさくらインターネットでいうとTellusに関しては執行役員権限を委任してもらって、責任をもってやると決めている部分があって、僕にとってのワーク・ライフ・バランスというのはとれる前提で動いています。

 

僕は何かをやりきれないことの方が気持ち悪いんです。集中してガッと働き、ちょっと休む、というのが好きなので、そういうやり方をしています。最近は会社員の人でもそういう働き方がしやすくなっているとは思いますが、まだやりづらいですよね。

 

さくらインターネットはやりやすい方だと思いますけど。 あまり縛られないことが僕のバランスなんです。働く場所だったり、時間帯だったり、時間の長さや短さだったりっていうのを人に縛られると能力がすごく低下するんですね。

でも、野放図(のほうず)にしていいということではないと思うんで、期待と責任と権限ははっきりとしてやっています。

 

ワーク・ライフ・バランスについてもお聞きしました。

小笠原治さんの「パラレルキャリア」

ーー小笠原さん自身、パラレルキャリアを実践されていますが、パラレルキャリアを成功させるにはどのようなことが大事か教えてください。

最初からパラレルに働くというのは成功確率を下げると思うんです。やっぱり、小さくていいので何かをやりきった経験とか体験なりが、外部の人から見てわかる状態というのを持っておくことが、パラレルに働く時にすごく大事だと思いますね。

 

パラレルに働くようになったら、その人に合ったやり方でやるしかないと思います。誰にでも共通するのは、いざという時の優先順位を決めておくことくらい。例えば、パラレルキャリアって今すぐにやらないといけないことがあるって状況になりやすいんですよね。

 

その時に優先順位を事前に決めておいたり、「こういう場合にはこうする」っていう悪い時のシミュレーションがちゃんとできているかは大事かなと。オロオロしなくていい状態にしておくことが大事なのかな。

パラレルで働くためには誰かに何かしら必要とされる部分、もしくは自分がどうしてもやりたいという熱量のどちらかが必要かなと思います。

成功する人、失敗する人の違い

ーースタートアップ企業の支援を多くされていますが、成功する人と失敗する人の違いを教えてください。

「わたわたしない人」の方が成功するんじゃないかな。悪いことって絶対起こるので、その時にわたわたする人って他人の責任にしているように感じちゃうんですよ。わたわたしていても、すぐに戻れる人はいいと思うんですけどね。

 

あと、自分の知識範囲で何かにこだわりすぎてる人の成功確率って低いと感じています。自分で思いついて始めた事業そのままで、一発目からうまくいく可能性ってそんなに高くないんですよね。そのまま、うまくいったのって最近だとBASEぐらいかな。CAMPFIREもそうか。あの辺はわりと最初の想い含めて貫いてきた感じはあるんですけど、まれなケースで、やっぱりみんなどこかで方針を変えてる。

 

僕は変えられる幅が広そうな人は好きで、そういう人に成功して欲しいなあと思います。失敗した時にちゃんと次のことができる、気持ちを切り替えることができる。そういう人の方が成功する可能性が高いと言い切れるかは分からないですけど、応援したくなりますよね。

 

わたわたしないことが大事

これから起業する人に伝えたいこと

ーーこれから起業をしようと思っている人に、アドバイスをお願いします。

起業が目的化しちゃうと意味がないので、本当にそれってやりたいことか、今までの自分の経験に沿ったものかを考えてほしいですね。スタートアップって英語から日本語に訳すと起業ですけど、日本やシリコンバレーの一部でいわれるスタートアップってちょっと特殊感あるじゃないですか。

 

フリーランスっていう生き方、中小零細みたいな継続型モデル、大企業のようにコモディティ化した大きな存在、日本だとベンチャーって言われるようなイノベーションを伴った創業。

このベンチャーの中でも、超ド短期に急成長することを目指す人たちをスタートアップと位置づけているので、やっぱりスタートアップっていう意味でいうと「それ本当にやりたいですか」って最後に聞くなあという感じですね。

 

それはね、「うまくいくからやりたい」「自分ならできる」を含めてやりたいでいいと思うんですけど、「本当にやりたいか」を自問自答しながら手を動かして、違うなと思ったらちゃんと違うことに手をつける。これもバランスで難しいですけどね。

 

執着心がなくていいのかっていうと執着心は必要。しつこいぐらいがいいです。ってなるんですけど、そこの見切りが大切で。この見切りは失敗しないと分からないので、失敗できる状況を作りましょうねということですね。失敗前提でものを考えることは大事です。 

小笠原治さんの「やりたいこと」 

ーーメディアのコンセプトが「やりたいことをできるに変える」なのですが、今後やりたいことについて語ってください。

みんな、こう取り組んだら少々失敗してもここにたどり着けるよっていう「時間軸での管理」をしないといけないと思っていて、この時間軸の管理っていうのがマネジャーの役割だと思っているんですね。

 

どこの組織でもうまくいっているチームといっていないチームがはっきり分かれてくる。あと、僕が関わっている会社では、ちゃんとその人が成長することにコミットするマネジャーがいる組織になって欲しいなあと思っていますね。 個別に何かをやりたいというよりは、みんなが取り組みやすい状況を作っていくことが、今やりたいことですね。

 

あと、悪感情を極力減らしたいと思っています。悪感情ってなんなんだろうなと思っていて、どんなに人がいようが、どんなに時間があろうが、どんなにお金があろうが、悪感情が全部を割っていくんですね。悪感情って強大な敵なのでなんとかしていきたいと思っています。

 

さくらインターネットのロゴ前で写真を取りました。

 

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