パラレルワーカー最強 キングオブコント優勝芸人が連載開始

こんにちは。岩崎う大です。僕はお笑いコンビの「かもめんたる」でコントをしたりしております。2013年の『キングオブコント』で優勝いたしました。それをキッカケに、いわゆる芸事で生活が出来るようになりました。  

ただ、僕はキングオブコントで優勝したからといって、同じようにキングオブコントで優勝した『バイきんぐ』さんのようにお茶の間でブレークはできませんでした。  

 

我が家には子供が三人いるので、生きていくために、いろいろなことを始めていくうちに、いろいろな肩書が増えていき、今は脚本家、演出家、漫画家、役者、構成作家などもやっております。  

こういうスタイルが、パラレルワーカーであると認めていただき今回のコラムを依頼していただく縁に恵まれました。  

今回、第一回目ということで、このパラレルワーカーというスタイルがいかに最強かということを、皆さんにお伝えしたく思います。  

 

まあ、自分はもともとお笑い芸人というかなり特殊な職業なのですが、きっとこれを読んでくれてる皆さまにも共通する部分は多々あると思います。  

キングオブコント優勝後

話は2013年にさかのぼりますが、僕はキングオブコントで優勝していろいろなバラエティ番組に出させてもらい、「ああ、僕はいわゆるお笑い芸人というものに向いてないな」と思いました。

薄々は勘づいていました。お笑い芸人にはいろいろなタイプがいるのは、皆さんもご存じだとは思います。リアクションが上手な人、トークが上手な人、華がある人、大喜利が得意な人、コントや漫才などネタが得意な人。  

 

パラレルワーカーなんていって、いろいろとやっている僕ですが、芸人としての武器はコントしかない超不器用芸人なのです。  

バラエティ番組が総合的な陸上競技だとしたら、やはり100メートル走などの花形種目が得意な人が売れっ子となります。ここ最近ずっとそうですが、バラエティ番組の花形はやはりトークでしょう。コントは……そうですね、やり投げとかそういう種目ですかね?

 

やり投げが陸上の花形であるパラレルワールドでは、僕は多分、芸人一本でやっていけていると思っています。ただ、不幸にもこの世界はそうではなかったです。やり投げは本当に最高に面白い競技なのに…... 

トーク番組での自分

「トーク番組での自分」

「劇団やったらいいんじゃない?」

もちろん、一流芸人の皆さんは『カール・ルイス』のようにあらゆる種目でメダルが取れちゃうようなスーパーマン達なので、そこは冷静に自分の芸人としての力の足りなさを認めています。  

キングオブコントで優勝したことで、皮肉にも自分がスーパーマンではなかったと認めざるを得なくなった僕は、事務所の先輩であるカンニング竹山さんと、友人である小島よしおから同時期に「劇団やったらいいんじゃない?」と言われました。

 

最初に言われた時は「マジかよ…...面倒くせえ…...」と思いました。とはいえ、特に先輩であり、スーパーマンの一人である竹山さんからの言葉には逆らえるわけもなく、「やります」と答えることしかできませんでした。  

しかし、僕の中に「竹山さんから言われたので」という大義名分があれば、事務所に対して「意見が通しやすいぞ!」というネガティブなのかポジティブなのか分からない感情が芽生え、『劇団かもめんたる』という劇団があっけなく誕生したのです。

 

そこで僕は演出家という肩書を手に入れるわけですが、結成から5年たったこの劇団かもめんたるは劇団員7名からなる本格的な劇団になり、今では年に二回の公演をおこなっています。そして、今年5月の公演では、あの超スーパー俳優の『八嶋智人』さんにゲストで出演していただくまでになりました。

(竹山さんも小島よしおも公演の度に花を出してくれたり、お弁当を差し入れしてくれたりと、ずっと頭が上がりません。)

2015年の竹山さんの誕生日会にて

「2015年の竹山さんの誕生日会にて」

パラレルワーカー最強 

この劇団活動の中では、私が「パラレルワーカー最強」と唱える理由ともなる発見がたくさんありました。例えば、劇団で出演者のオーディションをやるにあたって、オーディションといえば受ける立場だったのが、自分が見る側に回ったわけです。  

そうすると、採用する側が求めているものがわかるんですね。疲れた大人(自分)からすると、爪痕残そうとバキバキに尖った人より、誠実に物作りに参加して他の出演者とも仲良くやってくれそうな人を採用したくなるんです。

もちろん、演技力や醸し出す人間力は大事ですが、そういう部分が同レベルだった時に選ばれる人間、幸運を掴むのには理由があるんだということがわかりました。

 

実際、第一回目のオーディションで採用して、現在は正式な劇団員になっている小椋大輔君は、演技力もそんなに高くなく、質疑応答も少し噛み合わない感じで、オーディションの最中に「この子は採用できないかなあ」と思っていました。

けれど、彼が最後に「思い出として握手してください!」と言ってきて、その時の素の彼の表情が本当に素敵で、「これから新しい世界に飛び込もうとしている自分の力になってくれそうだな。ピンチになった時に一緒に頑張ってくれそうだな。」と思い、彼を採用しました。

 

結果、彼は劇団かもめんたるのこれまでの全公演に出てもらっています。僕もいつかハリウッドなどのオーディションを受ける際には、最後にダメ元で握手をねだり、素の表情で相手の情につけこもうと画策しています。  

 

劇団オーディションでの風景

「劇団オーディションでの風景」

パラレルワーカーは飽きない 

他にも、劇団活動を通していろいろな人を演出する経験は、自分が役者として他の現場に行った時、「監督や演出家がどんなことを僕に求めているのか?」ということを考える力にもなりましたし、漫画を描く時には登場人物を役者に見立てて、「あなたは唇をもっとこうやって尖らせてみようか! その方が拗ねてる感じが出る!」などと叫びながら漫画を完成させています。

僕の漫画の画力は著しく低いですが、キャラクターの表情は、すごくわかりやすく生きいきしていると思っています。そして、その自信は自分が演出家として仕事をしているところに根ざしています。  

 

逆に、漫画を描き始めたことにより、演劇で舞台を作る時に今まで以上に空間の使い方というモノに興味が出てくるようにもなりました。漫画というのは一コマ一コマは一枚の絵で、その時の人物の配置によって人間関係が表れたりします。

そういう表現を演劇の中でも意識するようになり、以前は役者の立ち位置というモノにあまり興味がなかったのですが、今はその立ち位置の選び方にも自分の色が出せることが分かり、演出というものが一気に楽しくなりました。そして、それは役者として外部の現場に出る時にも活かされています。  

 

このように、パラレルワークは、それぞれの仕事に好影響を与えるメリットがあるということが、わかっていただけたかと思うのですが、実は僕にとって一番大きなメリットは他にあります。  

 

それは、パラレルワーカーでいると「飽きない」ことです。

 

これは、相当でかいです。例えば、漫画を一つ描くと「もうしばらく描きたくないや」となりますが、次に脚本を一本書いたりすると、「早く漫画描きたいな」ってなるんです。自分が作・演出の演劇公演をしてクタクタになると、「もうしばらくそういうのはいいや」となりますが、他の人がつくった作品に役者として出ると「自分がつくった作品で自由にやりたい!」となってくる訳です。

僕は飽きっぽい性格なので、パラレルワーカーというのは本当に自分のライフスタイルにあっていると思います。

それに、パラレルワーカーというのはライフラインが複数あるということなので、精神衛生上も非常に良いです。 昔は、職人的に一つの職業に打ち込むことがプロフェッショナルでカッコいいと思っていましたが、サバイバルを続けているうちに結局、今のようなライフスタイルになりました。

 

けれど、パラレルワーカーといってもどれも自分ができる仕事、自分に合った仕事をしているので「結局は自分という存在のプロフェッショナルになる過程に過ぎないのかな?」とも思います。

 

sakumaga.sakura.ad.jp

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