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松永成立が指導者として意識していること。ドーハの悲劇を経験したGKのターニングポイント

日本サッカーがアマチュアからプロに移行するとき、日本代表のゴールを守り続けていたのは松永成立だった。激動の時代を過ごし、ドーハの悲劇にも直面した経験豊かなGKは、今、後進の指導に当たっている。

サッカーの中で特別なポジションであるGKをどうやって育てるのか。自分の考えを変えたターニングポイントは何だったのか。じっくりと話を聞いた。

人によって評価方法は違う

松永成立が指導者として意識していること。ドーハの悲劇を経験したGKのターニングポイント
(写真提供:横浜F・マリノス)

今、僕は横浜F・マリノスのGKコーチとしてGKを指導しています。このGKを育てるというのは、コーチがどういう観点からGKに対して接しているかというのが一番大事なんですよ。

たとえばGKコーチが「こういうプレーをさせたい」という意図を持っていたとしても、チームには当然監督がいるわけで、その監督の戦術に沿うことが当然なんです。GKコーチの考えをすべて当てはめることができないのはチームとして行動するための1つのルールです。そのギャップをどうやって埋めていくかというのは、GKコーチ同士で話をするとよく出てきますね。

それに、人によってGKの評価の方法って当然違うんです。昔ながらの、ゴールさえ守ればいい、ただシュートさえ止めればいいという評価をする人もいるし、クロスボールの判断も重視する人もいるし。今のうちのチームみたいに、ゴール前のクロスやシュートを防ぐだけじゃなくて、足下のボール処理や守備ラインの裏のケアを大切にするところもあるし。

もちろん、たとえばFWだったらシュートを決めるという勝負どころで評価されるし、GKの場合はシュートを防ぐところが勝負なんで、そこはしっかり止めなきゃいけない。そこではポジショニングから始まって、ステップワーク、ダイビング、キャッチングなどの基本的な技術や動作なんかが正確にできてるかってことを考えなきゃいけないんです。

同じシュートを打たれるときでも、もちろんそのGKの能力によって多少のポジショニングに違いはあるけど、本当に正しいポジションに立てているGKは少ないと思います。技術にしても、本当はつかめるのに簡単に弾いてセカンドボールになって、そこを詰められてもしょうがないという人もいるでしょう。でも僕からすると、つかめなかったらGKの責任だという思いもあるし。

だけど、そうやってシュートを止める部分だけだったら、GKの役割としては昔のままで止まってるじゃないですか。

考えが変わったアンジェ・ポステコグルー監督との出会い

それだけでいいのかと僕が考えを変えたきっかけは、2018年に就任したアンジェ・ポステコグルー監督との出会いですね。監督の攻撃的なチーム作りが自分にとって1つ転機になったと間違いなく思います。

攻撃的なチームとして攻めに人数を割きたいし、相手のボールになったら常に多くの選手で奪い返したいから、どうしても選手は前に行く。そうなるとディフェンスラインが上がって背後が大きく空くわけです。

その範囲はGKが守らなきゃいけないし、そこでパスをつながなきゃいけない。GKはゴールを守るだけじゃダメなんです。そうすると試合の90分間、アディショナルタイム入れたら90分プラスアルファの時間がありますけど、ずっとGKはゲームに関与しなくちゃいけないんです。

昔はサッカーのプレーヤーは「10人プラス1人」と言われてて、この1人がGKだったんです。けれど、今は11分の1人としてプレーすることが必要だから、僕は今のGKにとってトータル的にすべてのレベルを上げていくこと、そういうGK像を求めていくほうが正当なものかな、と思うようになってきました。

僕なんか昔のGKの典型だから、「GKなんてシュート防げばいいだろう」って考えていたんですけど、その概念を覆されました。もちろんアンジェ監督も「シュートを防ぐことは必要だ」って当然言ってきます。でもそれだけじゃないよっていう話が続くんです。90分間どういう状況でもGKがゲームに関わることが必要だって。

多分、Jリーグの中でうちのGKが一番役割が多いと思うんですよ。GKなんで当然シュートを防げなければいけないし、クロスにも飛び出さなきゃいけない。加えてビルドアップも担う。

相手がプレッシャーをかけてきたら単純に大きく蹴るんじゃなくて、繋ぐ選択肢があれば繋がなきゃいけないし。非常に広大なスペースがディフェンスラインの裏にあるんで、昔で言うスイーパー的な役割もしなきゃいけない。

それに伴って走行距離も伸びます。GKの走行距離ってだいたい1試合4キロ前後なんですけど、それを7キロもしくはそれ以上走らないけないし、瞬発系の筋肉も使わなきゃいけない。長距離的な要素も必要になってくる。当然頭も使うし。このどれも、そこそこのレベルを求めてるわけじゃないんですよ。常にいいプレーをすることが必要なんで、要求レベルは当然高くなります。

今までとは違う戦術を求められる

今までとは違う戦術を求められる
(撮影:Shin-ichiro KANEKO)

そりゃあ、はっきり言って最初は「(ハイラインをとる戦い方について)これリスクあるよ」と思いましたよ。自分が現役のとき、加茂周監督が日産自動車でハイラインを敷いたんで、どれくらいリスクがあるか自分でもわかっていましたから。それに今までとは違う戦術だったし、ここまでGKにフットボーラーとしての役割を求める監督はいなかったので。

こういう新しいことをやれと言われたときに反発すれば簡単ですけどね。でもリスクがイコール失点だったら嫌じゃないですか。GKからのビルドアップをかっさらわれて失点とか、実際アンジェ監督の1年目であって「ほらそうでしょ?」って言われることがすごいあったから。

一番前と一番後ろって目立つんです。学校の朝礼でも壇上で先生が喋ってるときに、目立つので一番前と後ろなんですよ。味方のミスでチャンスを作られてもシュートを打たれてGKがミスしたときに「GKのせいだろう」って言われるのは、これはしょうがないんですよ。

「リスクあるから失点したよね」って言われたくないから、何とかしようっていう反骨心も湧いてきたし。GKへの非難を全然気にする必要もないし、逆に次のピンチをどうやって防ぐかっていうことを考えなくちゃいけないんです。

GKコーチの役割と哲学

GKを育てる際には、監督の戦術を頭に入れて、自分の考えと並行してやらなきゃいけないのは当然です。監督が求めるGKにどういう要素が必要か、たとえば失点を減らすのだったらゴールを守ることの要素として何が必要かというものを把握しなきゃいけない。

だけどGKコーチが「いや、ゴールを守るよりも攻撃的なGKのほうが好きだ」「ビルドアップやハイラインの裏に出て行くGKがいい」というのであれば、そういうものに必要な要素をミックスして、実際にGKにちゃんと説明できるだけの理論を提供しなければいけないんです。

GKコーチとして現役のGKに何を求めるか明確にしないと、結局、これも教えなきゃいけない、あれも教えなきゃいけないってなって、コーチングがものすごくアバウトになるんですよ。そういう現象は、社会人教育であっても、プロのGKコーチであっても、あまり変わらないんじゃないかと思いますね。

僕はGKに伝えるときにアバウトになるんだったら、はっきり「今ちょっとわからない」って言います。その代わり、家に帰ってからそのことに関していろんな映像見たり書物を読んだりして、GKに対して少しでも説得できるような言葉を頭の中に残せるようにしてます。

2018年ロシアワールドカップ、コロンビア戦で相手FKが壁の下を通って失点したという場面がありましたよね。あれはGKを擁護しなきゃいけないと思います。

GKは基本的に壁の上を越えてきたボールをセーブするものだから、壁の下を通ったら、まず予測の部分から違ってくるし、そこから反応し直すと、かなりの確率でボールがもうゴール近くまで来てるから。もしあの場面で壁が飛ばないことになっていたのであれば、壁の選手と、それからスタッフに失点の要因があります。

指導には理論が必要

でももし、あれをGKのせいにするのであれば、ちゃんと理論的に、たとえば構えるタイミングや始動のステップはどうだったか、ステップワークのスピードや動作の正確性はどうだったかとか、ちゃんとそういう過程を踏まえた上で、「壁の下を通ってきたのは予想外だけど、ただ、ここの部分が遅かったからボールへの到達時間が遅くなった」とか、そういう理論的なものが必要だと思います。

そうすればGKも「その理論は納得できたから受け入れます」ということになるんだけど、闇雲に「何で取れないんだ」と言われたら、誰でもやっぱり反発したくなる。だから、ちゃんとどこを見るか伝えるというのはものすごく大事です。

それから、たとえばパンチングミスをして点を取られたにしても、どういう状況で、どういうメンタリティでプレーを選択したかって考えなきゃいけないんですよ。「弾いたボールが味方に当たっちゃってゴールに入った」なんて、そんな単純な言葉で済まそうとされたら、GKとしても気分は良くないですよ。

自分の部下が何かやったときに、ただ単にやったことだけじゃなくてそこにどう繋がったかっていうところをちゃんと解釈してあげないと、結局部下も反発して終わりますよね。

そしてそれぞれのGKに対して指導方法を変えていきますけど、でも実際にピッチでプレーするのは僕じゃなくて選手なんで、「これをやんなきゃ使わない」とか「絶対これだけがいい」というんじゃなくて、選択肢をいくつか与えて微調整します。

僕の場合は、たとえば構えにしても、高いほうから徐々に下げていく、低いところから徐々に上げてくっていう微調整の世界ですけど、そういう選択肢を与えながら実際プレーさせて、GKが「この構え方だったらフィットする」っていうところをディスカッションしてすり合わせていくというやり方なんです。

一方通行を避ける

片側一方通行ってのは、必ずどちらかにストレスが溜まって、ストレスが大きくなると全くコミュニケーション取れなくなってくるんで。

そうなるとプレーヤーが練習中や試合中に悪い態度になったときに、僕が何を言っても聞かなくなるし。そういう状態になったら選手が伸びなくなってしまうから。プレーヤーとして少しでも長く、少しでもうまくなるように考えるのが僕たちの役割なんで。

それに失敗を恐れて守備範囲を広げない選手を作っちゃいけないし。守備範囲が狭い選手はあえて守備範囲を広げようとしている選手に比べるとミスが少なく見えるかもしれないですけど、そういう選手は長くレギュラーを張れないですよ。

そこの考え方に積極的な要素が一切入ってないから、そういうGKは絶対レギュラーが取れないか、取れても短期で終わります。

逆に、試合でパスミスが1本でもあったら、それは考えなきゃいけない。「あれぐらい良いでしょう」って言ったら、次の試合でそれが失点に繋がるんです。パフォーマンスを向上させることも必要だけど、人間としての質を高めるというのも本当に大切なことで。

たとえば試合終了直前にPKを止めて勝った、なんてことになると、大体そこだけがフォーカスされるんですけど、それ以外の内容はどうだったかを考えなきゃいけないんです。「止めたからヒーロー」っていう捉え方をする人たちがいるんですけど、それでよしとしたら、結局そこから進化しようがないんですよ。

ちょっといいプレーすると天狗になる、そういうGKはこの世界から徐々にいなくなっていくし、うまくできた点とできなかった点の両面を常に見ていくのもGKコーチの役割としては必要なんです。

日々の新しい発見と面白さ

僕がGKのすべてを指導できるかっていうとそうではなくて、僕たちもやっぱりまだ勉強過程のGKコーチだと思ってるんです。ずっとGKを見ていて発見があるから面白いし、常に何か見つけるということにすごく飢えてるんで、そういう気持ちを持ってる間はまだ指導者として生きていけるだろうとは思ってます。

「アンジェ監督はGKに求めるものが多いから大変だよね」ってときどき言われますけど、大変とは思っていません。求められてるものは確かに多いけど、その分だけいろんな発見があるし、逆に発見したときにこれをどう活用しようか考えるし、見つけたものをGKに還元したときに、パフォーマンスが上がるわけです。

そういうのってすごく嬉しいし、楽しみでもあるんです。しかもそういうことがまだごまんとあるわけだから、ずっと勉強して追求していけるし。

現役からコーチへ
(撮影:Shin-ichiro KANEKO)

僕は現役のGKからそのままGKコーチになって、自分がやってきたことを引き続きできてたわけだから、アンジェ監督みたいな人が来たおかげで、GKに対していろんなことを違う方面からより一層考えられるようになったんで。常に新たな何かがあるっていうことを想定すれば、そんな苦じゃないし、必ずコーチとしての資質は上がると思います。

うちのGKはすべての面で力を発揮しなきゃいけない。ビルドアップや守備ラインの裏のそういう状況での判断はなかなか難しいんだけど、そういうイメージを湧かせながらチェックをさせると徐々にできるようになりますよ。

全部ショートパスを選択するんじゃなくて、ロングパスのほうが確率がいいんであれば、一番いい選択をしてくれっていうことなんです。もちろん守備ラインの裏へボールが出てきたときも、すべてペナルティエリアから出ろということじゃなくて、そういう選択もあるということです。

そういう判断は慣れてないと難しいし、練習からちゃんとGKコーチや監督が伝えてないと、GKは1人以外なかなか試合に出られないわけだから経験を積めないんで。たまに出場停止やケガで控え選手の出番が来たときに、いきなりうちの戦術をやりなさいと言われたら結構きついでしょうね。でも、それで「久々の試合だからしょうがないよね」っていうのは、はっきりと「ナシ」なんで。控え選手も正GKがやってることを遜色なくこなさなきゃいけないんです。

練習で補うしかない

だから練習で補うしかないですね。これはGKコーチが努力する以外にありません。できる限り試合の中で生きるものをチョイスしながら、練習メニューで還元するしかない。実戦から逆算してすべて導き出さないと、いざ試合に出したときに全く何もできないっていう状況になってしまうんで。そして常に実戦をイメージしたいろんなことを考えなきゃいけない。

「いろんなこと」っていうのは試合の状況のこともそうなんですけど、たとえばシュート止めるにしても、ただ単純にシュートを受けさせるだけじゃなくて、ダイビングの幅を出すためにどうしたらいいか、素早く反応するにはどうしたらいいかとか考えなきゃいけない。実際試合でシュートが飛んできたら見送るだけとか、反応が遅れたら、話になんないんです。

反応が遅れないために、姿勢であったり、動作であったり、技術であったり、そういうものをトレーニングの要素として織り込まなきゃいけないから、考えることはきりがないんです。でもそのきりがないのが面白くて。次から次へといろんな事象が出てくるのもGKコーチをして飽きない理由の1つだし。

それから自チームのGKの映像もたまに見せます。でも、だいたいGKは他のGKの映像って見たくないんです。だから状況によっては見せるくらいですね。ただそれでも実戦を想定しながら練習を進めなきゃいけない部分があるので、映像を見る回数は極端に増えました。

映像を見ながら、そこでGKに不足するものを見つけて練習メニュー考えたり、コーチングしたり。だけど一番いいのは、目の前で生で動いてる選手の姿や動きを見ながら、そこで何が足りないかっていうのを把握して、その場でいいやり方を構築するのがベストですね。

ビデオの活用とかも、4、5年前なんてパソコンを片手でポンポンやって、分からなかったらすぐ誰かに聞いてる類だったんですけど、もうそれだと追いつかないから、自分でパソコン買って、映像なんかもいろいろ編集してGKに見せたり。それにアンジェ監督には言葉よりも目の前の現象で見ながら喋ったほうが伝わりやすいんで。

新しい発見があるとものすごく嬉しい

すごくたくさんの作業があるんですけど、やせ我慢でも何でもなくて、これが面白いんですよ。メニューの中にいろんなものが出てくるんで。そういうのは全然苦でも何でもないし、逆にそうやってみて、新しい発見があるとものすごく嬉しいんで、だからこの年になってまで若い連中とボール蹴ってるって理由の一つですね。

それに、うちのGKがラインの背後突かれたり、ビルドアップでミスが出てたりして失点すると、何か周りで「ほらほら」って声がしてるんですよ。闇雲にGKのせいだろうって言われるときもあるから反論したりもします。

失点しちゃいけないと思うけど、でも「ほら失点したよね」「そういうサッカーしてるから失点するよね」っていうことじゃなくて、それまでの何試合かをトータルに見て、前回の失点を食らったときより、ポジショニングや判断がよくなってるかって、そういう見方も必要だし。だけどいつも反論していると、文句言ってるだけということになって、決して今の現役のGKに対しては良い面が一つもない。

そうじゃなくて、どういうふうにそういう声をなくすか。なくすだけじゃつまんないんで、どういうふうに上達して進化させるっていうことが、これもまた一つ面白いとこなんで。じゃあ次の試合では今度ノーミスでいけるようにまた練習でやろうって言うんですよ。

だからミスしたGKも真剣に映像を見るし、そのGKをうまくするためにはどんな練習をやったらいいかってのをずっと考えて練習メニューを出して、パソコン中で整理していけるんです。そうすると練習メニューも200個とか300個とか溜まってるし。

そうなってきたからGKの練習時間は、時間があればあるだけありがたいですよ。一日中GKトレーニングできればいいけど、そうもできないし。週末に試合があれば、徐々に練習時間を短くしていかなきゃいけないから、与えられた時間の中で何が一番有効かというものをチョイスしてGKに与える、還元していくというやり方も当然していかなければいけないんです。

全体練習が終わったときも居残りでもできるし、時間がないわけじゃないけど、ただ、ウォーミングアップをGKグループでトレーニングして、また終わったときもグループトレーニングするっていうのはモチベーションの問題もあるんで。

だから常にGKの表情や態度を見ながら、「今どういうものが必要か」を読み取ることもコーチとしては必要で。難しくないですよ。GK同士なんで。それに面白くなかったときはどういう態度をするかってのは自分を振り返れば分かるんで。

そして何かプレーがうまくいかなくなったとか、悩んでるとかっていうときには、コーチだから上司だからっていう態度は一切見せずに、とにかく同じGKとして、同じポジションをやった仲間だっていう意識を出せると、本人たちもいろんなこと喋ってくれます。だからそういうもので、GKの不満は解消するようにしています。

松永成立の「やりたいこと」

松永成立のやりたいこと
(写真提供:横浜F・マリノス)

「今、何をやりたいか」っていうことですか? うーん、去年のシーズンは12月19日に最終戦が終わってオフが5週間あったんですけど、まずタイトル取れなかったっていうのと、外へ出られなかったのもあって、オフがこんなにつまらないもんかと(笑)。

やっぱりグラウンドに出てGKを指導してるのが一番おもしろいと思いましたね。だから今何をしたいかは、とにかく目の前にいるGKたちをいかにうまくさせるかということをやりたいです。

シュートを打たれて最初は届かなかったけど、徐々にボールに近づいてくるっていう過程を経験させられると、本人にも自分の成長を実感しやすいんです。そうすると、今度は本人たちがゴールを守ることの楽しさ知るじゃないですか。

そういうことが毎日できるわけだから。現状指導していることに満足してる訳じゃないけど、こうやってGKの育成に関われることを、1分でも継続して、長く続くことがやっぱり自分に対して一番いいというか、自分の希望ですね。

そのための自分の努力ってよりも、相手に努力をさせるために何が必要かということを考えた場合に、反骨心かなって。負けるとGKにも僕にも批判は来るんですけど、その批判をどう黙らすか。

黙らせるためには、やっぱ自分たちのGKのレベルを上げる必要が絶対にあるので、そこを追求するためには、映像であったり、いろんな本とか、いろんな他の人の話とか、とにかく聞いて、「次は外野を黙らせよう」って。そういう決意のもとであれば、多分自然に努力すると思いますね。

結局、年末のオフシリーズでも毎日、10数時間は映像をずっと見てましたね。目薬なんか今もう1日6、7回垂らしてて。それに今後のGKトレーニングのプランニングもやってたんです。でも飽きないんですよ。GKがうまくなるんだったら飽きないです。

インターネットの恩恵

最近インターネットのおかげで素材は手に入るし、もちろんYouTubeっていう便利なものがあって、海外の試合の映像や、あとGKトレーニングも出てきます。いいと思うんですよ。目で見て、こういうトレーニングがあるんだ、こういうレベルのGKってこういうものなんだって分かるから。

でもやっぱ一番大事なのは、自分の目で生の選手を見て、何が悪いのか何がいいのかっていうのをちゃんとそこで判断して、何が必要になるかっていうものも判断しながらやっていかないといけないと思います。そういう目を養うことは、いい指導者になるために一番必要なものだと思いますね。

だからYouTubeの映像は、たとえば、このGKはやたら飛ぶけど、でも足が動かない原因は何だろう、構えが悪いのかな、という目で見なきゃいけないんです。

そういうふうに、GKのどこがよくてどこが悪いかとか、そんな観点を持ちながらだとインターネットにある映像をたくさん見るときにメリットが大きくなります。

デメリットは見て、単に「いいな」ってだけの感想を持つことですね。それからYouTubeって、現役のGKもよく見てるから、そこに載ってるメニューを練習でやっちゃうと「あ、YouTube見たな」とか、そういうことになっちゃって、僕の信用はなくなりますからね。インターネットがあってよかった部分と困った部分ですね(笑)。

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執筆

森雅史

多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本蹴球合同会社代表。

編集

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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