個人事業主がふるさと納税をする際の上限額は? 計算方法を解説

ふるさと納税は都道府県、市区町村への「寄附」をおこなうことで、原則として自己負担額の2,000円を除いた全額が控除の対象となる制度です。

 

ただし、ふるさと納税で全額控除を受けられる上限額が、収入や家族構成などによって異なります。上限額を超えた分は控除を受けられないため、ふるさと納税をおこなう際は、上限額の計算が必要です。

 

本記事では、個人事業主の方向けに、株式会社SoLabo 代表取締役 田原 広一が税理士有資格者の立場から、節税対策になる「ふるさと納税」で受けられる控除の上限額の計算方法を解説します。

 

 

田原 広一さんプロフィール写真

田原広一(たはら こういち)プロフィール

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者。お客さまの融資支援実績は、累計4,500件以上(2021年7月末現在)。自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。問い合わせゼロのオウンドメディアをWebマーケティングを駆使し、毎月1,000件以上の問い合わせが取れるまで成長させる。

 

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ふるさと納税には控除される上限がある

ふるさと納税は、収入や家族構成などに応じて控除される寄附金額の上限があり、自分の上限額を把握し、その範囲内でふるさと納税をおこなうことで節税できます。

 

簡単にたとえると、ふるさと納税で受けられる控除の上限額が3万円の方が5万円のふるさと納税をした場合は、上限を超えた分の2万円は、控除を受けられずに自己負担になります。

 

いくらまでがふるさと納税の控除上限額になるか知りたい場合、ふるさと納税をする年(1月1日~12月31日)の所得額などを用いて計算する必要があります。

 

なお、ふるさと納税は、寄付した自己負担額から2,000円を差し引いた額が、翌年の所得税(復興特別所得税を含む)および個人住民税から控除される仕組みです。

 

本記事ではふるさと納税の控除上限額の計算方法を中心に説明するため、ふるさと納税の基本については次のコンテンツを確認してください。

ふるさと納税の仕組みは? 図解と流れでわかりやすく解説

個人事業主のふるさと納税の上限額を計算する方法

ふるさと納税についての公式情報は、総務省「ふるさと納税ポータルサイト」にありますが、企業にお勤めで給与をもらう立場の方を中心に情報発信されている傾向があります。

 

給与所得のみの方であれば、控除されるふるさと納税の上限額の目安を確認できます。

参考:全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安 - ふるさと納税ポータルサイト|総務省

 

ただし、目安の一覧表に「年金収入のみの方や事業者の方、住宅ローン控除や医療費控除等、他の控除を受けている給与所得者の方の控除額上限は表とは異なりますのでご注意ください。」とあるように、個人事業主がふるさと納税の控除上限額を計算する方法は、公開されていません。

 

そのため、本記事では、上限額の計算方法を具体的に掲載している自治体「和光市」のケースを例に計算方法を紹介します。

 

【計算式】

所得税の課税所得額

上限額を求める計算式

~195万円以下

個人住民税所得割額×23.558%+ 2千円

195万円超~330万円以下

個人住民税所得割額×25.065%+ 2千円

330万円超~695万円以下

個人住民税所得割額×28.743%+ 2千円

695万円超~900万円以下

個人住民税所得割額×30.067%+ 2千円

900万円超~1800万円以下

個人住民税所得割額×35.519%+ 2千円

1800万円超~4000万円以下

個人住民税所得割額×40.683%+ 2千円

4000万円超~

個人住民税所得割額×45.397%+ 2千円

引用:ふるさと納税の上限額の計算方法 | 和光市

 

ふるさと納税の上限額を求める計算に必要な個人住民税所得割額は次の式で計算します。

 

個人住民税所得割額 = 課税所得金額 × 10%(税率)  - 税額控除

 

税額控除は、配当控除や外国税額控除など課税所得金額に税率を乗じて算出した所得税額から、一定の金額を控除するものです。税額控除のおもな種類は参考サイトから確認してください。

参照:NO.1200 税額控除|国税庁

ふるさと納税の上限額計算例

和光市の計算方法を参考に、事業収入500万円、必要経費が154万円の個人事業主の方の計算例を作成しました。

 

【計算例】

事業収入: 500万円

経費: 154万円

 

所得控除額:合計136万円(内訳:社会保険料控除45万円、生命保険料控除5万円、配偶者控除38万円、基礎控除48万円)

 

所得税の課税所得額=500万円 - 154万円 - 136万円=210万円

 

  • 住民税所得割額=336万円-126万円(内訳:社会保険料控除45万円、生命保険料控除5万円、配偶者控除33万円、基礎控除43万円)

=2,100,000×10%(市民税6%・県民税4%)

=210,000円-2,500円(調整控除)

=207,500円

 

上限額の計算式

207,500×25.065%+2,000 = 約54,000円

上記の条件の場合、自己負担2千円で寄附できる上限額は約54,000円になります。

 

ご紹介した計算方法はあくまで目安であり、具体的な計算はお住まい(ふるさと納税翌年1月1日時点)の自治体・市区町村にお問い合わせください。

また、民間サイトのふるさと納税の上限額計算シミュレーターを活用するのも1つの手段です。必要な情報を入力すると上限額の目安を計算できます。

上限額を計算するには売上や経費の予測が必要になる

ふるさと納税の上限額を計算する場合、申請時点で確定していない月は、売上や経費の予測が必要です。

 

ふるさと納税の上限額は、申請する年(1月1日~12月31日)の事業所得をもとに計算するためです。

 

たとえば、12月1日にふるさと納税をおこなう場合は、12月31日までの売上や経費が確定していないため、おおよその見込みで1月1日から12月31日までの所得を予測します。

 

ふるさと納税で寄付金額を決める際は、予測した収入の変動を考慮して、計算した上限額から余裕を持ってふるさと納税の寄付金額を検討してください。

 

なお、予測を立てる際は、「確定申告書等作成コーナー(国税庁)」を利用して、簡易的に確定申告書を作成してみるのも1つの手段です。

 

ただし、予測情報を加えた書類になるため、確定申告をする際に再度書類を作り直す必要が発生することに注意が必要です。

ふるさと納税をした場合は控除額の計算を2種類おこなう

ふるさと納税をした方は、ふるさと納税をした年の「所得税」と翌年度の「住民税」2種類の控除を受けられます。

 

所得税と住民税の控除額を計算する方法は異なるため、ふるさと納税によって控除を受けられる額を把握したい場合は2種類の控除額を計算する必要があります。

画像引用: 控除額の計算 - ふるさと納税ポータルサイト | 総務省

 

なお、控除を受けられる金額の計算についても、具体的な計算はお住まいの自治体・市区町村に問い合わせてください。

所得税の控除額の計算方法

ふるさと納税によって受けられる所得税の控除額の計算方法は次の通りです。

 

【計算式】

(ふるさと納税額-2,000円)×「所得税の税率」 = 所得税からの控除額

 

計算に使用する「所得税の税率」は、課税所得の増加に応じて高くなるように設定されているため、ふるさと納税をする方の課税所得額によって適用される税率が異なります。

課税される所得金額

税率

1,000円 から 1,949,000円まで

5%

1,950,000円 から 3,299,000円まで

10%

3,300,000円 から 6,949,000円まで

20%

6,950,000円 から 8,999,000円まで

23%

9,000,000円 から 17,999,000円まで

33%

18,000,000円 から 39,999,000円まで

40%

40,000,000円 以上

45%

一部引用:No.2260 所得税の税率| 国税庁HP

 

例えば、課税される所得金額が400万円の方の場合、ふるさと納税で3万円の寄付をおこなうと所得税からの控除額は次のように計算されます。

 

【計算例】

30,000円 – 2,000円 × 20%(所得税の税率の税率) = 5,600円(控除額)

 

なお、所得税の控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の40%が上限です。総所得金額等についてくわしく知りたい方は、国税庁公式サイトをご確認ください。

参照:総所得金額等 | 国税庁

住民税の控除額の計算方法

住民税から控除される金額は「基本分」と「特例分」の2種類を合算した金額です。そのため、住民税から控除される金額の計算はそれぞれおこなう必要があります。

2種類の計算式は次の通りです。

 

【計算式】

基本分

(ふるさと納税額-2,000円)×10%

特例分

1      (ふるさと納税額 - 2,000円)×(100% - 10%(基本分) - 所得税の税率)

2      (住民税所得割額)×20%

※①または②の金額が低い方を控除額とする。

参照:控除額の計算 - ふるさと納税ポータルサイト| 総務省

 

なお、特例分の計算式①が②を超える場合は、ふるさと納税した金額の一部が控除されず、自己負担額は2,000円に加えて超過した分のふるさと納税額になります。

 

特例分の計算で使用する「住民税所得割額」とは、個人住民税の1つで、所得金額や所得控除額を用いて求められる税額です。住民税所得割額については、総務省公式サイトをご確認ください。

参照:個人住民税 | 総務省

 

【計算例】

基本分

(3,000円-2,000円)×10% =2,800円

特例分

1      (3,000円 - 2,000円)×(100% - 10% - 20% ) =19,600円

2      400,000円 × 20% = 80,000円

※①または②の金額が低い方を控除額とする。

控除額

3      2,800円(基本分) + 19,600円(特例分) = 22,400円

 

上記の計算例では、課税所得額が400万円の方がふるさと納税で3万円の寄付をおこなった場合、住民税の控除額は22,400円になります。